収監者との文通:Aさんとの往復書簡 H27/7/29
- 2016.03.05
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<A⇒鈴木>
前略
鈴木さん、お手紙いつもありがとうございます。
今回は公認会計士の勉強法についての資料を頂き、楽しく読め、なるほどと思いました。私も幾つか公認会計士の合格法のノウハウが書いてある本を読みましたが、共通しているのは、過去の試験から出題のポイントを探し、必要最低限の学習で合格を目指すというものでした。この勉強方法は公認会計士だけでなく、大学受験や他の資格試験にも共通していることです。
ですが、基本的な事柄をマスターしておかないと必要最低限の勉強もできないので、そういう意味でも公認会計士の合格には簿記1級の知識が必要なのですね。私は今会計学を中心に勉強していますので、鈴木さんの手紙にあったように公認会計士の試験にも役立つと思います。
私の場合3年間は資格を取得できないので、その間にしっかりと勉強して、全て一発で合格したいと思います。一発は言い過ぎかな・・・(笑)
それと、条件反射制御法についても御手紙頂き、ありがとうございます。メカニズムについては正直、難解?でしたが、(笑)今までにない治療法で、これで依存症が治るなら、こんなに嬉しい事はありません。キーワードアクションも、今は思い立った時にやっています。
それと、宗教の話になるのですが、邪念が起きた時は頭の中で「空・クウー、空・クウー」、「無・ムー、無ムー」と唱えなさいと般若心経の本に書いてありました。そうすると心が落ち着いて来るそうです。これも多少の訓練が必要みたいですが。なので、日常生活で少し嫌な事があると、頭の中で、クウー、クウー、 ムー、ムーと言っています。それを繰り返すうちに心も落ち着いて来るから不思議です。これ以外にも、念彼観音力(ねんぴかんのんりき)と唱えるのもあります。こちらは観音様に邪念を取り払って下さいという想いを込めると良いそうです。例えば腹が立った時などでも有効ですので様々な場面で実践して行こうと思います。
この間、新聞に「条件反射制御法入門」という本が紹介されていたので8月の本の申し込み時に購入してみようと思っています。多分、手元に来るのは10月の中頃でしょうか。どんな事が書かれているのか非常に楽しみです。様々な事を試してみて自分に一番合うのを見つけて刑務所とは無縁の生活を送って行きます。
外に出てしまうと、刑務所での生活を忘れてしまいがちです。出所する時は覚えていても、日にちが経過していくと忘れていってしまいます。それで何度も失敗しています。この失敗もこれで最後にして、合他r志位?人生を歩んで行きます。その為にも各種オゾン証の自助グループに参加したり専門的な治療も受けて行こうと思います。そして日々の生活で Just for today を忘れず、一日一日を大切に生きて行き。より良い生活をして行きます。
こちらも暑さで体がダルイです負けずに乗り切ろうと思います。横浜も暑いと思いますが、お体を御自愛下さい。また手紙を書きます。では失礼します。
草々
平成27年7月24日 A
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<鈴木⇒A>
前略
Aさん、こんにちは。連日の猛暑が続く中、7/24付の御手紙、30日に届きました。暑い部屋で汗を拭いながら書かれたのだと思います。本当にいつも有り難うございます。
公認会計士一発合格の資料多少なりともお役に立ちそうでしょうか?
ところで冒頭からで申し訳ないのですが、自宅のPCの件でAさんにお聞きしたい事があるのですが宜しいでしょうか?今回の公認会計士資料はWEBの動画サイトからのものなのですが、そのサイトに突然アクセスできなくなってしまいました。他の動画を開いてみたらなんと全て「Internet Explorer ではこのページは表示できません」と表示されてしまい、Youtubeもニコニコ動画も全て全滅です。他の静止サイトはアクセスできますが、とにかく動画は全て突然の全滅です。それとWikipediaも全滅みたいです。一体全体何が起きたのでしょうか?原因、修理法など、お心当たりがありましたら教えて頂ければ嬉しいです。宜しくお願いします。
さて、前回の手紙に書いた「条件反射し制御」法のメカニズム二ついては少々難解に感じたそうですが、私も投函後に読み直してみて、自分自身でもちょっと難しいなと思いました。そこで、同じ内容ながらもう少し分かりやすくー自分でもよく分かるように書き直してみたいと思います。
人間には「理性」と「本能」という二つの精神機能がありますよね。「本能」というのは、何万年にもわたる気が遠くなるくらいの永~~い世代の連鎖の中で脳の中央部の奥深くに深く根を張って来たものなのだそうです。ですから本能にはその根深さによる頑強さ=コントロールが困難な頑強さがあるわけです。そして各種依存症の病的欲求はこの本能の中に深く潜り込んでいるのでやはり脳の奥深くに根を張ってしまうわけです。
その一方で理性はと言うと、人間が「オギャー!」と生まれて後の生活環境や教育、学習、反省、(時には刑罰などによる反省)・・・などを通して後天的に獲得するもので、それは脳の一番外側の大脳皮質という所に存在し、その根の張り方は本能に比して非常に浅いそうです。従って、脳の奥深くに根を張った本能(依存欲求)と脳の外側の根の浅い理性(依存を断とうとの思い)の力関係を不等号で示せば、
≪本能(依存欲求)>>>>>>理性(依存を断とうとの思い)≫
となるわけです。相撲に例えると、本能(依存欲求)が「横綱」だとすれば、理性(依存を断とうという想い)は「序の口」みたいなものなんですね。これは個人の責任ではなく、神様というか自然によって人間に与えられた不可抗力的な性(さが)とも言うべきものでしょう。だからこそ、Aさんが過去の刑務所で深く反省し「もう2度とバカラ・窃盗はしない」と誓っても、それは根の浅い理性による反省であった為(Aさんの反省が足りなかったという意味ではありませんよ。あくまでも生物学的な不可抗力によるものです)出所後、脳の奥深くに根を張る本能(依存欲求)の反撃に太刀打ち出来なかった分けで、それはある意味で当然だったと言えるわけです。それは他人事ではなく、大石到着前の5年間毎日の一升酒を止められなかったアル中の私自身の体験でもあるので私自身もよく理解できる事なんです。
ですから、専門治療に繋がっていない依存症者の場合には、「本能>>>>>>理性」の力関係による依存を断つ絶望的なほどの困難さを身を持っての体験で知っているからこそ諦めの境地に立ってしまうわけです。では、この諦めの境地から脱する道はどこに見出せるのでしょうか?ここに新しい依存症治療法である「条件反射制御法」が果たす一つの役割があるように思います。
今度の「条件反射制御法」は依存症の根源である本能そのものにメスを入れる本質を持っており、それによって病的依存欲求そのものを抑制するという効果が期待されています。ですから例えば薬物依存症者が注射器を目にしても薬を打ちたいという欲求が起きず、ギャンブル依存症者がパチスロ店の前を平常心のままスーっと通り過ぎる事ができ、そして、クレプトマニアの人がスーパーやコンビニの人目につかない場所に立っても万引き欲求が起きなくなるという効果が期待されています。
従来の精神療法では強力な本能を刺激して暴れさせないように、「危険な場所に近ずかない」方式が取られていましたが、今度の「条件反射制御」法では「危険な場所に近ずいても本脳を暴れさせない」方式となりますので。断○○がより容易となり、その分だけ今まで治療を諦めていた人達に治療意欲を提供する道が開けるのではないかと思うのです。
以上ですが、前回よりは多少は分かり易かったでしょうか? いずれにせよ、「条件反射制御法入門」という書籍を注文されたそうですので、そちらの方にもっと分かり易く解説されていると思うので、是非期待して欲しいと思います。
「クウークウー、ムームー」で嫌な事を忘れ、気持ちが落ち着くとの事、うーん、それを信じて実行すれば確かに暗示的効果があるかも知れませんね。私もやってみます。
横浜も連日、暑~~い日が続いています。猛暑、猛暑で「もうしょうがない」と駄洒落でなくても、本当にそんな感じの暑さで、そちらも同じような暑さなんだろうなと思います。お互い熱中症にはしっかり注意したいですね。先ずは朝食をしっかり摂ることが大事だそうです。ミソ汁だけでも水分、塩分を補給でき熱中症予防に役立つそうです。それでは今日はこれにて失礼します。
草々
平成27年8月1日
大石クリニック相談員鈴木達也
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