Bさんへの手紙

NO IMAGE

Bさんへの手紙

B 様
前略
 こんにちは、大石クリニック相談員の鈴木です。
3月に入り、どことなく春の兆しも感じる昨今ですが、その後いかがお過ごしでしょうか? 

 さて、先般頂いたお手紙で、「今は未だ刑務所での更生教育は受けていません。なので、鈴木さんとの文通、Dさんとの文通で考え、学び、更生し依存症を治す事が出来ると思っています。・・・」と書かれています。
 そのDさんですが、先日刑務所を出所して、大石クリニックに来院され初診を受けられました。今後は大石に通院されて本格的に性嗜好障害(性依存症)の治療を続けようとの思いを強くし、更生と社会復帰への希望に胸を膨らませています。そのDさんに上記に引用したBさんのお手紙の全文(=ネット掲示板に公開した「Bさん」名の手紙)をお渡しして読んで頂いたところ、DさんよりBさん宛の返書を託されましたので以下にその全文をご紹介します。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前略
 Bさんこんにちは、
情けない話なのですが、私は、痴漢や盗撮による迷惑行為防止条例違反の犯罪を繰り返し、今回で3回目の懲役生活を送りました。9ヶ月の刑で、先日出所しました。今回逮捕された時、正直すべてが終わったと思いました。そして2度と刑務所での生活と縁が切れないと思いました。でも、何度も裏切ってしまった父親が助けてくれて大石クリニックの事を知り、自分が性嗜好障害という依存症の病気である事を今回の懲役生活で初めて知りました。今まで気づかなかった事に父親のお蔭で気づく事が出来ました。私は今まで気分や思いだけで懲役生活を過ごし、出所後の生活設計を真剣に考えた事はありませんでした。また、自分の思い通りに行かなかったりすると、イライラして同囚と揉めて懲罰を受けた事もありました。今思えば、この様な懲役生活をしていた事が再び懲役生活をする事に繋がっていたのではないかと思います。今回の懲役生活では出所後の生活設計をしっかり考え、何事にも堪え、そして大石クリニックとの文通を続け、毎日本を読み、一日一日を大切に生活して参りました。
 他の同囚から嫌がらせを受け、事件の内容によって冷やかされ、本当に今までの中で一番辛い懲役生活でした。過去の私なら間違いなく堪える事が出来ず喧嘩をしていたと思います。でも、ここで負けたらここよりもっと厳しい娑婆での生活に負けてしまうし、そして力を貸して下さっている人達を裏切ることになると思い、堪えて生活しました。今回の懲役生活は辛かったですが、本当に沢山の事が勉強になり、沢山の事に気づく事が出来たと思います。その気づいた事の中で、堪えて生活をすれば必ずいつかは、あの時堪えたからこの日を迎える事が出来たんだと思った事がありました。
 Bさん、毎日同じ事の繰り返しの懲役生活、他の同囚との関係、嫌な事もあると思いますが、そこで負けずに堪えれば必ず夢が叶う日が来ると思います。楽しい日が来ると思います。私も懲役生活中、依存症の内容は違いますが、Aさんという方から励ましのお言葉を頂き、本当に勇気と希望を貰いました。Bさんも大石クリニックとの文通を続ければ必ず勇気と希望をもつ事が出来ると思います。そして必ず道が開けると思います。
 偉そうな事を書いてしまったかも知れませんが、Bさん、自分を信じて頑張って下さい。必ず勇気と希望を持つ事が出来ると思います。
 お身体を御自愛下さい。では失礼します。
                                                草々
             平成24年3月3日  D
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 以上です。いかがでしたでしょうか?
手紙の中で紹介されているAさんという方は、やはり刑務所内から当院と文通をされていた方です。ギャンブル(バカラ)依存症を原因とする犯罪で過去に5回の受刑生活をされた方ですが、最後の5度目の収監を前にした時、刑務所で何度「もうやらない」と堅く決意しても出所すると、やはり同じ過ち・犯罪を犯してしまう自分は「ギャンブル(バカラ)依存症」なのではないか?と気づかれて、弁護士を通して大石クリニックを知り、受刑期間中当院との文通を続けられました。
 文通と並行して刑務所内で簿記の勉強を続け、受刑期間中に簿記2級の資格を取得されました。昨年の秋に出所され、以後は新生活に向けての新たな勉強や仕事を続けてながら、出所後は再犯に走ることなく今日まで無事に過ごしています。以前は出所から次の逮捕までの期間が、週・月単位だったので、こんなに長く塀の外にいるのは初めてだと本人も喜んでいます。
 文通による手紙の読み・書きは、過去の自分を直視しつつ、将来の生活設計をする上で大きな力になるのではとの思いを、出所したAさんやDさんの姿を見て深めています。
 私も微力ながらも、更生・社会復帰へのお手伝いをさせて頂ければと思っておりますので、今後ともお手紙を頂ければ嬉しく思います。

 春の訪れを前に、寒暖の差が激しい時期を迎えております。体調管理に気をつけて、お身体をご自愛下さい。
 
                     草々 
        平成24年3月9日
         大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/03/08/15:25:37 No.733