Yさんとの文通~②

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Yさんとの文通~②

大石クリニック

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Yさんとの文通~②
(初めてお読みの方;投稿No.555 / 556からお読み下い

Yさんからの』手紙

鈴木達也様
前略
 お便り頂いてから、ずいぶん時間がたってしまい申し訳ございません。母を通して「依存症のすべてがわかる本」を頂きました。クリニックからとのことでありがとうございます。
 全部読ませて頂きました。私の行動に照らし合わせてみると「人への依存」と「プロセスへの依存」の二つが当てはまるようです。「プロセスへの依存」の説明には「ある行為をする過程で得られる興奮や刺激を求めてその行為にのめりこみます。行為そのものは目的ではなく、終わったあとたいてい後悔します」とありました。正しく私の常態に当てはまっていると思います。私が同じ犯罪を繰り返してしまうのは、犯罪を犯して何かを手にしたいとか、何かを成し遂げたいと思っているわけではなく、うまく犯罪を行う過程に興奮を覚えるという事を感じました。やってしまった後には強い後悔を感じます。その点も本のままだと思いました。こうして捕まっていることにすら安心感を覚えてしまいます。「人への依存」を感じたのは、本の「子供の頃のように依存に安心を得たいという気持ちが起こります」という部分です。自分では気づきませんでしたが、誰かに全てをゆだねてしまいたいと思うことがあったように思います。ですが、そういう事を許してくれる人もおらず、自分の中に・・・と思います。
 今回、本を読ませて頂いたことで自分を外から見ることができたように思います。自分の気づかない自分がけっこう居るものだと思いました。今日は本の引用ばかりになってしまいましたが、これにて失礼します。
                      草々

              2010年9月25日  Y
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Yさんへの返信

Y様
前略 
 9月25日付のお手紙届きました。拝読し、大変嬉しく思いました。何が嬉しかったかと言えば、Yさんが「依存症のすべてがわかる本」を全部読み、治療に向けて大きく一歩を踏み出されていることです。
 前回頂いたお手紙でこう書かれていました;
 「正直なところ、今の自分の病気がどの様な物なのかという話になると、よく分からないのが現状です。自分が何故この様な事件を起したのか? 自分でも分からないのに治療できるのか心配ではありますが・・・」と。そして、でも「確実に治療したい・・・」と書かれていました。
 そんな思いを胸に本を読み、知りたかった事をズバリ知る事が出来たようにお見受けします。例えば、
 
◎知りたかった事⇒「自分の病気がどの様なものなのか?」
答え⇒「ある行為をする過程で得られる興奮や刺激を求めてのめり込ンでしまい終わった後たいてい後悔する」病気

◎知りたかった事⇒「自分が何故この様な事件を起したのか?」
答え⇒「うまく犯罪を行う過程に興奮を覚える」から。
 
本を読み、自分を外側から客観的に見つめられた事で、治療・回復に向けての最初の大きな一歩を踏み出されたように思います。同じ本の79ページ以降で「回復へのルート」について述べられていますが、その冒頭は「本人が依存症を自覚することから」とのテーマですが、Yさんは今そのハードルをクリアされようとしているように思います。
 前回差し上げた手紙で、「治療・回復の一歩一歩が進む中でしか先の事は見えて来ない・・・」と書きましたが、Yさんは本を読みその一歩を進めた事で、自分の病気の何たるかが少しずつ見えて来ていると思います。これで良いと思います。更に一歩を進めれば、今はまだ分からない次の事が見えて来ます。そういう道を歩み続けられるよう心から期待しています。私も微力ながら、Yさんと一緒に悩み、喜びながら、お手伝いの道を歩いて行きたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
 今日は、この辺で失礼します。またのお便りを楽しみにお待ちしております。
                  
      平成22年10月2日
         大石クリニック相談員 鈴木達也

追伸
 この間のYさんとの文通を匿名(Yさん)にて、当院HP掲示板「あおいくまの部屋」に公開させて頂きました。プリントアウトして同封致しますのでどうぞご覧下さい。

Date: 2010/10/02/12:17:03 No.565