「今日一日断酒してくれてありがとう」 大石CL外来通院 吉田三枝子

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<この寄稿文は横浜断酒新生会機関誌「かたらい」創刊50号記念号より、同会および筆者の同意を得て転載しました>
「今日一日断酒してくれて有難う」
吉田 三枝子
横浜断酒新生会 都筑支部・(家族) 
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 東日本大震災の日、私は地下鉄のホームで電車を待っていました。怖い。私は階段を駆け上がり地上へ出ました。大勢の人。ガラス張りの高層ビル。続く揺れ。とにかく家に向かって一歩一歩前進し、方向音痴の私が四時間半後に帰宅出来たのは、大勢の方々の親切と励ましの言葉があったからだと感謝しています。
 途中で、連絡がつかなかった家族と公衆電話で安否確認が出来た時に、初めて涙がポロポロと滴りました。その後、何ヶ月も地下鉄に乗る事はもちろん、人混み、エレベーターは避けてしまいました。今でも原発への不安、恐怖、怒り。自分ではどうする事も出来ないけれど、心の隅にいつも引っ掛かって離れず不安定な自分がいます。
 私達は、震災から二日後余震が続く中、本部合同例会で、断酒一年の表彰をして頂いた若葉マークの一家です。
   「今日一日、断酒してくれて有難う」
 主人にも負けないくらい頑固者の私は、中々言葉に出して言えません。
 
 夜中に目覚めて朝まで眠れない。はきはき寝言を言う主人の身体を心配し始めた五年前。その後病院に相談。やっとの思いで通院。大石クリニックでアルコール依存症と診断され、主人はもちろん、私もこの病名を受け入れるまで、家族ミーテイングに通ったりしながら時間がかかりましたし、こんなにお酒好きな主人に断酒は無理だろうと正直思いました。色々な辛い思い出、子供には見せたくなかった修羅場もありました。でも今、主人は断酒してくれている。夢の様です。断酒例会に参加されている先輩方は、同じ病で苦しんでいた方々とは思えません。素直に体験を語り、優しく頼もしく、いつも励まされ、時には叱られ、私にとって例会は精神安定剤、主人にとっては飲酒欲求に対する予防注射?となっているのではないでしょうか。
 私達家族だけでは、依存症からの回復は出来ません。先生方、先輩方の御力を借り、まだまだ山も谷も有るでしょう。行きつ戻りつ、それでも一歩ずつ、今日一日断酒してくれた主人に感謝しながら、私自身も例会、ミーテイングで回復に努め、穏やかに語らい、笑い合える生活を取り戻したいと強く願っています。
 注) 筆者・吉田三枝子さんのご主人は、平成24年3月11日に保土ヶ谷三師会館にて開かれた本部合同例会にて2年の表彰を受けられました。  =編集部=