「一年生」デイ大石 / 佐々木幸道

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=この投稿文は横浜断酒新生会結成35周年記念誌(「かたらい」No38)より、
                    筆者および同会のご了解を得て掲載するものです=
『一年生』 横浜断酒新生会戸塚支部 / 佐々木幸道
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 お神酒・お屠蘇/盃ごと・祝杯・乾杯・お清め・・・等々、馴染みの深い言葉です。
  家庭内で飲酒習慣が問題となったのは退職して数年が過ぎてからでした。娘は夕飯が済むと飲み物を持って自分の部屋に引き篭もるようになりました。酒を口にした親父に耐えられなかったのでしょう。「外に部屋を借りて独りで暮らしたい」と、そう言って引っ越して行きました。とは言っても行き来無くなったわけではなく、二親の健康を気遣って、異変に気がつくと診察や検査に同行してくれるという程度の絆がありました。
  平成13年の手帳の4月8日、「禁酒93日目」のメモを見ると、1月の2日から晩酌は止めたことになっています。止めたとは言っても、外では稀に仲間と楽しみ、家では連続飲酒にならないように時折り隠れ飲みをしていました。
  戸塚区の広報に載っていたのでしょうか、妻の勧めで禁酒の相談に行くことになりました。平成14年の半ばでした。「ご夫妻でおいで下さい」との吏員さんの指示に従いました。相談にのって下さったのは酒害相談員のN様でした。
  病院を紹介され、2週間ほどして久里浜病院へ。黒川先生から入院の話もありましたが、辞退が叶い、抗酒剤の処方もなく定期的に通院することになりました。暫くして地域の断酒会に入るよう勧められました。会の存在を知ったのはこの日が始めてでした。12月、N様の断酒会に入れて戴きたい旨の連絡をしました。
  「ようこそ、お電話を下さいました」と、丁寧なお言葉、12月17日、72歳で断酒会に入れて戴きました。仲間の盛大な拍手で迎えて下さいました。例会では、司会者に指名され次々に体験談が語られ始めました。
◎:休みの日に飲みすぎて、翌日勤め先にその取り繕いをする。
◎:飲む事以外に思考が及ばない事。
◎:離脱症状に入ると、幻聴、幻覚に襲われる(暴れ、喚きちらし)
◎:アルコール性癲癇(てんかん)の襲われる。
◎:出勤途中でも「一杯」を我慢できない。
◎:交通事故、免許停止。
◎:手が震える、ペンが持てない。
◎:仕事が手につかない。
◎:信用も職も失う。
◎:家庭崩壊、親・兄弟からも見放される。
◎:酒のため借金も厭わない。
◎:アルコール関連症にかかる。
◎:自殺を図る。
等々、(こんな話を曝け出して良いのだろうか?)後になって、プライバシーの厳守はもちろん、質疑応答も禁じられている会である事を知りました。あー、これも皆さんの為なんだ。
  例会、機関誌等で苦しい体験を知り、感動しました。そして酒害体験は本人だけのものではなく、家族や知人ののものでもあるのだと実感しました。自分の恥部を敢えて口に、そして、文字にする、できる。素晴らしい組織だと思います。今日があるのは、暖かい「家族」と寛大な「断酒会」の賜です。