収監者からの手紙 Aさんからの手紙

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収監者からの手紙

Aさんからの手紙

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及び 当掲示板No.555~Aさんとの文通 参照 
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A様
前略
 鈴木さん、お手紙届きました。手紙自体は2/15日に私の手元に来たのですが、集団認知行動療法パンフの方は2/19日に手元に来ました。まだ軽く目を通しただけですが、一人で勉強するには難しそうです。ですが、こちらでは一人部屋ですし、考える時間もたくさん有りますし、それに鈴木さんも居るので何とかなるのでは?と考えています。
 今回は、バカラに行きたくなる理由についてもう少し前回より考えたので書いてみます。前回は 「お金を増やしたい」と書きましたが、何でお金を増やしたかったのだろう?と過去の事を振り返ってみました。
  バカラに嵌っていた当時は、考え方もおかしく、例えば30万円を持っていたとして、洋服を買うのに3万円必要だなと思うと ,「じゃあ、バカラで少し増やしてから買おう」 とかそんな風に考えていたと思います。この作戦に成功する時もありますが、お金が無くなった時は 「あぁ、買っておけばよかった」 と思います。
  又、当時は彼女と一緒に住んでいたのですが、その彼女に 「何か買ってあげたいな」 とか、「どこかに遊びにいきたいな」などと思っていたと思うのです。お金を増やしたい理由というのは、つまり物欲だったり、遊びたいという欲求だったのかなと思います。しかし、物が欲しいからお金を増やしたいと思ってバカラに行き、勝っても洋服など何も買わず、軍資金が増えたと言って喜ぶ事も少なかったです。負けた時だけ、「買っておけば良かった」 と後悔するのです。
  あとのお金を増やしたい理由として 「お金が足りるかどうか不安」 というのもありますが、当時としては非常に稀でした。こんな感じがお金を増やしたい理由でした。本当はバカラを楽しみたい時をもっと細かく、どう楽しみたかったのかも書きたかったのですが、うまくまとまらないので、もう少し整理してから書こうと思います。 
 集団認知行動療法に載っているプログラム⑤のアンガーコントルールというものがイマ一つピンと来ません。怒りの良い所というのもハテナ?です。ここだけ少しだけ教えて頂けると助かります。
 前に頂いたパンフと今回のパンフでもっと自分の想いを深めて行き、バカラと離れられるよう頑張ります。他の人がどう思っているかなどに少し興味があります。

  筋トレ、柔軟ですが、これが自信に繋がると教えてくれたのは○○刑務所の職員でした。 筋トレ、柔軟は継続が大事ですが、両方とも苦しく辛いです。苦しくて辛い事を続ける事で精神力もつくとその職員は言っていました。
 また、筋トレ・柔軟は、その成果が自分自身でも分かるので、楽しくなって来たりします。筋トレは目標を定めて、それがクリア出来ると自分に自信がついて来るのです。でもこの目標が大き過ぎると、それを達成出来ず意気消沈してしまうので、まずは10回、3ヶ月後には20回と軽目に設定すると良いと思います。ですが、軽過ぎてもダメなので、自分が腕立てだったら何回できるで考えた方が良いと思います。
 柔軟は、成果が直ぐに表れますので自分でも実感できます。まず、反動をつけても良いので実践することです。立ったまま手を床に近づける時も反動をつけて何度も行うことが大事です。朝・晩の最低2回は行って欲しいです。特に風呂上りは絶対にした方が良いです。最初の頃は5~10分は続けた方が効果的です。2~3ヶ月で効果が表れます。
  筋トレも柔軟も、始める年齢に関係が無く効果があるので、自身の健康のためにやった方が良いです。鈴木さんも手のひらが地面から20cmくらい離れているそうですが、大丈夫です。継続すれば必ず成果が上がります。まずは立ったまま手のひらを地面に近づけます。この際、反動をつけて何度も近づけるのがコツです。大体2~3分繰り返し続けます。次に座って足を前に伸ばし、手をつま先に近づけます。つま先に手が届かない場合は足首付近を手で持って体を倒します。足の筋が少し痛いくらいの状態を10秒ほどキープします。その際、息を吐きながら倒して行きます。これを3~4回繰り返します。少し辛いですが、ぜひやってみて下さい。体が柔らかいと健康にも良いです。
 さて、今回も色々と書きました。これからも送ってもらったパンフの内容もじっくりと考えて行きたいと思います。もうすぐ春で、花粉もそろそろだと思います。お身体をこわさぬようくれぐれもお身体をご自愛ください。では失礼します。
                      草々
           平成25年2月20日  A
                                                                   

Date: 2013/03/07/22:30:44 No.875

Re:収監者からの手紙

Aさんへの返書

A様
前略 
 Aさん、こんにちは。お手紙、2月27日に届きました。あれやこれやの仕事で、商売繁盛 !!(笑)は良いのですが、返事を書き始めるまでに1週間かかってしまいました。遅くなって申し訳ありません。
 今回は「バカラに行きたくなる理由」としての「お金を増やしたかったから」について、それは何故?と更に掘り下げ、深めておられます。その気になって考えれば、鎖を手繰るように色々な気づきが得られるものですね.集団認知行動療法の冊子も最初は難しそうに思えても、その気になって学習を始めれば思ったほどには難しくはないのではと思います。
 お手紙で、集団認知行動療法パンフに書かれている「怒りの良い所」というのがよく分からないと書かれています。「怒り」と言うと、例えば喧嘩や暴力などによる感情の暴発をイメージし易く、そこから「怒り」にマイナスイメージを持ち易いので、その「良い所は?」との問いかけにハテナ?と感じるのだと思います。 しかし、「怒り」の中には当然の「怒り」、怒るべき「怒り」と言うのもあります。例えば、癌患者が自分の体内に勝手に巣くった癌細胞に「怒り」の感情を抱いても、その「怒り」に異を唱える者はいないでしょう。放っておけば死に至るまで自分の体を蝕み続ける癌細胞という不倶戴天の天敵を退治する為に「怒り」は治療への心のエネルギーになります。だからこそ、患者は医師に身を委ねて癌細胞をメスで切って捨てるなり、放射線で焼き殺すなり、はて又、抗癌剤で毒殺するなり、必要でかつ可能な治療を行う分けですね。 同様に、Aさんの脳内には、Aさんを何度も刑務所に送り込んだ「ギャンブル依存症」という病気が巣くっています。つまり、脳内の神経やホルモン代謝の障害という自分の力だけではどうにもならない病気が巣くっています。そういう自分を操り人形のように勝手に動かし、犯罪を犯させる依存症という病気にAさんが怒りを感じたとしても、それは当然の「怒り」と言えるし、その「怒り」を理性と犯罪への反省でコントロールして行う依存症治療(現在は、この文通やパンフの学習)が更生と社会復帰への力となるでしょう。こう考えれば「怒りの良い所の意味が理解できると思います。もちろん、理性のコントロールを失って暴走、暴発する「怒り」もあり、それは自分を傷つけ、周囲にも迷惑をかける「怒り」なので、厳に戒めるべき「怒り」と言うべきでしょう。 
 柔軟、筋トレについての詳しい説明も有り難うございます。三日坊主で終わらないよう、私も無理のない適度の目標で初めてみたいと思います。特に、柔軟は直ぐに成果が表われるそうなので、朝の出勤前、昼休み、それに夜の風呂あがりと時間を定めて始めてみたいと思います。 
 ところで、文通をしている他の受刑者の方からの手紙で、簿記の資格を取りたいと思って参考書で勉強を始めたと書かれていましたので、その返事でAさんの話をしました。そして、「勉強の進め方等について何か質問があったら私からAさんに取り次ぎ、その返事を手紙で送ります」と書きました。事後承諾で申し訳ないのですが、質問が来た節にはよろしくお願いします。 
 3月に入り、早春の風を感じるようになりましたが、季節の変わり目ですので体調を崩さぬようお体をご自愛ください。次のお便りを楽しみに今日はこの辺で失礼します。
草々          
平成25年3月7日                大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2013/03/07/22:43:15 No.876