Cさんからの手紙
Cさんからの手紙
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及び 当掲示板No.555~Cさんとの文通 参照
大石クリニック相談員 鈴木達也様
前略
9月18日付のお手紙、28日に届き嬉しく拝読させて頂きました。どの文面の内容もほぼ理解したつもりです。鈴木さんも自分自身の断酒治療と相談員としての仕事の両面性を持ち、6人から同時に手紙が届き、それらを読んで、返事を書くことは並大抵のことではありません。でも、それも鈴木さんにとっての「錨の綱」になるのかも知れませんね。!?
もし、仮に自分自身に暇な時間ばかりで、何もする事が無い状況ですと、兎角人は悪い方向へ走る傾向があるのでしょうか? 正しい事を行って、時間に追われながら、忙しい人は危険区域に漂流されずに済むという事が、自分自身で犯罪に至らない秘訣なのかな?と思いました。
また、鈴木さんの仰る通り、どんなに精密なプランを立てたとしても、これで完璧、100%大丈夫、絶対だということではなく、時として起こり得るストレスや、うつ状態、依存症の例外的行動で、知らずのうちに犯罪に走っていた自分を、自分で知っています。これを「リラプス」と言うとは知りませんでした。
≪今月の問答≫に答えて
①再犯を繰り返した場合
イ)どんな良い事がありますか?
ロ)どんな悪い事がありますか?
②再犯を防止した場合
イ)どんな良い事がありますか?
ロ)どんな悪い事がありますか?
①ーイ)について: 自分の悪事、性的欲望の達成感
①ーロ)について: つまらぬ事で自由を拘束され、刑務所に行く事。自分の趣味や好きな物事が出来ない事。被害者感情。
②-イ)について: 自分で立てたプランで仏教や天文学への楽しみや学習が自由に出来て、科学館や図書館へ行く事が出来る。又、母校での講話や資格試験への挑戦が出来る事などです。
②-ロ)について:再犯防止を続けて悪い事は殆ど無いと思いますが、ただ一点、気になる事があります。それは、寝てる時も起きている時も、無意識のうちに性的な夢や想像が込み上がるのです。そのような状況の時に、仕事などで感情的に苛立ち、ストレスが溜まるのを防止しようとすると余計に性的な思いが出て来るようで自分ではたまらなく思うのです。つまり、自分でストレス解消を出来ないということでしょうか。以上で、私なりの答えとします。それと、質問量が多いとは思いませんが、③と④の答えは次回で良いのでしょうか。
≪仏教話≫
鈴木さんのお手紙には『治療によって依存症から回復できるか否かの最終的な鍵は患者さんその人(自分自身)が握っている」とありました。即ち、他力本願というより、自力本願に近いということでしょうか? しかし信仰するには、どちらかに偏るというのではなく、両面性があり、共に必要であるということです。宗教には、どの宗派にも信仰の対象となる曼荼羅・本尊・仏像などがあり、それと信心強情の自力的なものが表裏一体となって信者の体内に 内在しているものです。そうでなければ、どちらか一方に偏り、自力に強く偏ると、『私は自力で依存症を治す。だから医者には頼らない ! 』となり、又、他力ばかりに力を入れると、『大石院長が治すのだ ! だから私は自分がやらねばならぬ事をせず、他人任せにする』ということになりかねません。
≪天文講話≫
今月は、『地球から一番近い天体、月について』と題して。
地球から月までの距離は、常に一定ではなく、最遠と最近があるのをご存知ですか? 今月は10月なので、天文年鑑38頁の「10月の空」を見て下さい。10月5日(金)9時43分に、月が最遠(29分29秒)、月齢19,4となっています。そじて10月17日(水) 10時0分に最近(33分07秒)、月齢2,0となっているのが分かると思います。最遠の時は、約40万キロ離れ、最近の時は、約36万キロ離れて、その差は4万キロぐらいです。平均値が約38万キロです。差の4万キロは、地球の円周分です。そのくらい地球に近づいたり、遠ざかったりしています。それは月の自転と公転周期がほぼ同じで、地球に同じ面を向け、首降り運動をしているからです。 この事は、天文年鑑120頁に書いてあります。10月の空の5日は9時43分が最も遠く、29分29秒と、見かけの大きさです。
月齢は、新月を零として月の満ち欠けの程度を数える日数であり、10月5日は19.4なので、新月から19日と4時間です。よく満月の十五夜と言いますが、新月から数えて15日目ですから19,4は満月を過ぎたことになります。新月を零、その後1週間(7日後)で上弦、更に1週間後(14日)で満月、更に1週間後(21日)で下弦、それから更に1週間後(28日)で元の新月へ戻るのです。満月は15日目でなりますから、10月の空では15日(月)が新月で、それから15日目は30日ですから、その前後1日が満月です。30日(火)が満月です。又、10月8日(月)が下弦になっていますから、その7日前、即ち9月30日が満月だと計算しなくても分かります。満月を知るのも、上弦や下弦を知るのも、1日前後の違いはでますが、おおよその目安になります。1ヶ月のカレンダーのうちどれか1日の月齢が分かれば、大体全部知ることが出来ます。話が長くなりましたが、もう少しです。
天文年鑑の333頁から339ページの月面図を見て下さい。333頁の図では東西南北の方位が一般と違うのは、月面を望遠鏡でみた時の像だからです。東西と南北が一般と反対になっています。又、つきのクレーターや海と呼ばれている場所、そして山脈などがⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分けて、334~337に名称が記載されています。
それと、最後になりますが、月には「うさぎ」が住んでいるとか、「うさぎ」が餅をつくなどといわれますが、つきの模様の見え方は、国々によって多少異なります。ある国では、お婆さんが本を読んでいるとか、生き物であるカエルの姿に見えるという国もあるそうです。鈴木さんは、どんな物に見えるでしょうか?想像(イメージ)を膨らませて見てはいかがですか?意外と楽しいものですよ。 次回の天文講話は、『地球から一番近い星(恒星)と題してお話します。
それではこの辺で失礼します。台風、災害等に気をつけてお過ごし下さい。
草々
平成24年10月3日 C
↓返書
Date: 2012/10/14/19:32:39 No.830
Re:収監者との文通
Cさんへの返書
C様
前略
10月3日付のお手紙、12日に届きました。
毎月・毎月のお手紙に着実な一歩一歩を感じながら拝読しました。アルコール依存症者の自助グループであるAAの標語に「ゆっくりやろう、でもやろう」というのがありますが、私の大好きな言葉です。ゆっくり・ゆっくりで良い、兎に角、前に進んでさえいれば、いつかは大きな前進へと繋がります。
お手紙の冒頭で、6人の方への返事書きについて、「それも鈴木さんにとっての『錨の綱』になるのかも知れませんね」と書かれていますが、正にその通りで、「錨の綱」の意味をよく理解されているなと嬉しく思いました。同時に、「錨の綱」を6本も同時に海底に降ろさせて貰って、Cさんも含めた6人の方に感謝しています。(実は、Cさんへの手紙の後、更に続けて2通届いたので、「錨の綱」は計8本になりました)
≪今月の問答≫へのお答えも頂きました。全体として大石の教育ミーテイング参加者の答えと基本的に共通しているなと思いました。ですから、Cさんもこの教育ミーテイングに参加すれば、仲間の答えから自分自身の「錨の綱」に確信を持てることでしょう。
今回の問答は、治療継続へのモチベ-ション(動機)を忘れない為のものですが、①~イ)=再犯を繰り返した場合の良い事 及び②~ロ=再犯を防止した場合の悪い事は、それぞれ、依存症という病気がささやく、いわば治療の動悸をくつがえす「悪魔の声」です。それを悪魔より先に自分で先取りして、イザという時に備えて対応策を考えておく為の設問ですので、いわば「転ばぬ先の杖」としての対応策を今から考えておいて頂ければ良いなと思います。例えば②~ロ=昼・夜を選ばず襲ってくる性的妄想には例の「輪ゴム・パチン作戦」も有効かも知れませんね。それから、①~ロ)=再犯を繰り返した場合の悪い事、及び②~イ=再犯を防止した場合の良い事は、それぞれ治療の動機の堅持につながりますので、頭と心にしっかり刻み込んで頂ければと思います。
③、④の10年~20年後についての答えは、もちろん来月で結構です。来月・11月のお手紙を楽しみにお待ちしています。
次に、≪仏教話≫冒頭で書かれている、「鈴木さんのお手紙には『治療によって依存症から回復できるか否かの最終的な鍵は患者さんその人(自分自身)が握っているとありました。即ち、他力本願というより、自力本願に近いということでしょうか?」について書きます。
この手紙の冒頭でご紹介したAAの基本文献で、こう書かれています~『君は自分自身で断酒をしなければならない。しかし、君は自分一人だけでは断酒することが出来ない』と。つまり、どういう事かと言うと、先ずは患者自身による治療への意志と継続が必要だという意味です。逆に言えば、治療する意志が全く無い患者にそれを強制してもそれは不可能だということです。強制されてイヤイヤ治療しても長続きはしないわけです。「治療・回復への最終的な鍵は患者自身が握っている」とはそういう意味です。では、患者一人で治療できるかと言えば、決してそうではありません。一人で何とかできるなら、元々が依存症ではないわけです。一人ではどうにも止められない酒、薬物、ギャンブル、性的問題行動/犯罪・・・等々を止めるには、相手が病気ですから、やはり専門治療や仲間との連帯が不可欠なわけです。従って、治療/回復の為には、Cさん自身が仰っているように自力と他力の両面が必要と言うか、不可欠と言って良いでしょう。
≪天文講話≫も大変興味深く読ませて頂きました。天文学素人の私には、改めて月に目を向ける機会はあまり無かったのですが、これからは、天文年鑑・「今月の月」を片手に夜空の月を見上げてみたいと思います。「今日は上弦の筈だ !・・今夜は満月だぞ!!」と心で呟きながら。何だか月の満ちかけへの興味が湧いてきたような気がします。
月面への私のイメージですか? そうですね・・・ジッと月面写真を見つめていたら、ランドセルを背負って通学する小学生の画像が見えて来ました。下の月面写真の右側ですが、そんな画像に見えませんか? そんな子供達に星空の話が出来る日を夢見ながら、一歩一歩の道を歩みを続けて下さい。
といったところで、今回はこの辺で失礼します。10月も半ばを迎え、気温も段々下がってきますので、風邪などひかないよう、体調には十分気をつけてくださいね。
平成24年10月14日
大石クリニック相談員 鈴木達也
Date: 2012/10/14/20:00:33 No.831
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