収監者との文通 Aさんへの返書

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収監者との文通

Aさんへの返書

前略
 3月11日の巨大地震に季節も驚いたのか、春がちょっと足踏みしていたようですが、それでも桜が満開となり漸く春到来を実感しています。M9の巨大地震も四季の移り変わりまでは止められないようです。同じく被災地の復興も止められません。月日の進行を味方とする人間の力の前には巨大地震も無力です。日本国民は、戦争や大震災などの数々の惨禍を見事に克服して来た民族ですから、今回の大災害も国民的大団結で克服することでしょう。まだまだ余震が止まらず短期的には見通しが立たず、人々の不安も続いてはいますが、こんな時だからこそ思考のスタンスを広く取り、希望の光を見失わないようにしたいと思いながら手紙を書き始めました。

≪写真は、大石クリニックの前の大通り公園の桜です。
来年の今頃はAさんも、地震に負けないこの満開の桜を
目にしながら、社会復帰への道を歩まれていることでしょう≫

 さて、4月3日付のお手紙ありがとうございます。出所後の社会復帰への夢を大きく膨らませている様子が瞼に浮かぶようです。出所後は、①:依存症治療、②:仕事、③:各種の資格取得を目指す勉強の3本柱の生活になるのでしょうか。3本の柱が共倒れにならないよう、両足でしっかり大地を踏みしめ、慌てず、急がず、着実に一歩一歩と歩んで頂きたいと思います。
 依存症者の治療と回復の過程には幾多の落とし穴が待ち構えています。その代表例に頑張り過ぎと言うのがあります。依存症者は意志が弱いと一般には思われがちなのですが、それは世間的な誤解で、実は意志の強い頑張り屋さんが多いんです。仕事を頑張り過ぎて、そのストレスから酒やギャンブルに走り依存症に陥るというケースが実に多いんですね。そんな依存症の頑張り屋さんが、治療開始後に過去を反省するあまりに事を急ぎ過ぎると、その無理から来るストレスがスリップに繋がり、その延長線上で治療や仲間から離れ、そして元の木阿弥という最悪のパターンを辿るハメとなります。
 その意味で言えば、3本柱に優先順位をつけて、時間はかかっても順番に着実に前に進むのが最も賢明な道かと思います。その具体的な方法は、出所後の治療 ≪診察やカウンセリング、GAの仲間との触れ合い≫ の中での模索で道が見えて来るでしょう。特に、回復の道を歩んでいるGAの仲間達が生きた形でその道を示してくれるでしょう。その時を楽しみに、今は簿記の勉強をしながらの残りの刑期をしっかり全うして頂ければと思います。
 出所後は、将来の経営コンサルタントの仕事を長期的な展望として見据えながら、その前提としての資格取得を目指し、そして、それを土台の所で保障する依存症治療が当面の課題として最も大事かと思います。この道の歩みと両立できる仕事が見つかれば良いですね。
 ご所望のタウンワークを伊勢佐木町のコンビニで探して来ましたので同封します。それと、大石HP内の仕事と両立可能なギャンブル依存症治療プログラムについてのページを添付しますので御検討頂ければと思います。

 最後になりましたが、季節の変わり目ですので体調には十分お気をつけてお過ごし下さい。今日はこの辺で失礼します。またのお便りを楽しみにお待ちしています。
草々
       平成23年4月14日
         大石クリニック相談員 鈴木達也
 

Date: 2011/04/13/20:23:35 No.639