収監者(Bさん)との往復文通

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<B⇒大石CL鈴木>
前略
お手紙ありがとうございます。
この度は、ご報告が有り手紙を書きます。4月から当所で溶接科の訓練を受ける事が決まりました。先日、兄が面会に来てくれた際に、社会復帰後に一緒に働くのであれば溶接の資格があれば助かると言われ、受ける事を決めました。又、電気工事士の資格とどちらか悩んだのですが、こちらは出所直前に勉強して、社会に出てから取ろうと考えています。
訓練を受けるに当たり工場が変わるので、人間関係を一から作らなければならない事など不安が多々有りますが、前向きに考え頑張ろうと思っています。
今回の訓練は一年間で、先日当所で定期面接をした際に、訓練が終わったら、ちょうど7ヶ月~10ヶ月の教育プログラムが始まると言われましたので、それまでは訓練を一生懸命頑張ります。

前回の手紙で、出所後の環境変化について書かせて頂きましたが、今は気持ちがポジテイブになっているのか、前向きに考える事が出来ています。

もう少しで桜も咲き始めると思いますが、私が今いる部屋から桜の木が見えるので楽しみです。気温の変化が激しい日が続いていますのでお体にはくれぐれもお気を付け下さい。
草々
平成26年3月14日  B

<大石CL鈴木⇒B>
B 様
前略
お手紙18日に届ききました。ありがとうございます。出所後の社会復帰に向けての明るい希望が見えて来ましたね。お手紙を嬉しく拝読しました。

私もアルコール依存症が原因で失業してから、実家でのニート生活、依存症治療と2年半のブランクを経験して再就職・経済自立へと到達した経験を持っていますので、今人生への新たな希望を手にしているBさんの気持ちはよく分かります。私も実家での居候暮らしをせざるを得なかった頃は、自分への情けなさ、親への申し訳なさが入り混じったような思いでした。それだけに仕事と経済的自立への憧れが強かったように思います。ですから断酒後1年半で仕事に就き、実家からの経済的自立を果たした時は本当に天にも昇る思いがしたものでした。
そんな過去の思い出があるだけに、Bさんにも溶接や電気工事士の資格を取り、技術をしっかり身につけてお兄様と一緒に仕事ができる日が早く来るようにと願わずにいられない思いがしています。
溶接科の訓練修了後に、再犯防止教育を受けられるそうですが、再犯防止は今後の仕事や生活の全ての土台となりますので、これもしっかり受けて頂きたいと思います。仕事や生活にとって再犯とは何かと言えば、それはあの東北の海岸の町や港を襲った大津波のようなものだと思っていれば、分かり易いし、心にも刻み込み易いでしょう。せっかく苦労して取った溶接や電気工事士の仕事も再犯によって一瞬にして瓦礫と化してしまうでしょう。そして、再犯防止教育や依存症治療は何かと言えば、それは大津波への万全の備えとしての強固な防潮堤を築く事だと言えるでしょう。
その意味でこれからの溶接科訓練の1年と引き続く再犯防止教育の7~10ヶ月という2年近い月日はBさんの社会復帰後に大きな・大きな意味を持つ期間となることでしょう。この事をしっかり心に刻んで、一日一日の一歩一歩を大切に踏み固めて歩み続けて頂ければと思います。

3月も半ばを過ぎ、春はもう間近か、桜の花が部屋の窓から見えるそうで楽しみですね。あの寒くて大雪にも見舞われた冬から解放されて暖かい日々を迎えますが、今度は花粉も舞い始めますので、お体には重々気をつけてお過ごし下さい。それでは、次のお便りを楽しみにして今日はこれにて失礼します。
草々
平成26年3月19日
大石クリニック相談員 鈴木達也
追伸
大石クリニックではこの度ホームページを全面的にリニューアルしました。それに伴い、この文通を公開しておりました従来のBBS掲示板「あおいくまの部屋」も、「回復の軌跡」ページ内にて「はばたき文通」と名称を変更して新たなスタートをすることとなりました。より読み易く、親しみ易いページとして参る所存ですので今後とも宜しくお願い致します。