Eさんからの手紙

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Eさんからの手紙

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及び 当掲示板No.555~Kさんとの文通 参照

大石クリニック相談員 鈴木達也様
 連日暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
 頂いたお手紙の中で「引き金」について書かれていましたが、単純な興味本位的な事が事件の切っ掛けになる事もあるのだなと思いました。まして性に対しては誰でも興味を持つ分野であるのではないのかなと思います。問題は自分の欲求を抑えられるか、抑えられないかが大事な事なんだなと思いました。
 今回の手紙を書くのに、何を書けば良いのか悩みました。私の経緯は前回書いてしまいました。そこで今回は思いついた疑問を書いてみます。
 一つ目は:なぜ本人が気づかない内に依存症になってしまうのでしょうか。 他に気のまぎれそうな物はたくさんあるのに、一つの物にハマッてしまうのか不思議です。
 二つ目は:性嗜好障害にも禁断症状はあるのでしょうか?最近夜になると妄想が頭に次々と浮かび、興奮して寝つきが悪くなる時があります。これは禁断症状なのでしょうか? それともただの性的欲求なのでしょうか?この症状は過去に何回もあり、ある程度の期間を過ぎると出てきて、次第に生で見たい、触りたいと思いイライラしたり、悶々として落ち着かなくなってしまい、この状態が長く続くと虚無感に襲われ趣味に対して全くやる気がわいて来なくなり、出かけるのも億劫になってしまいます。そんな時は決まって持っていた児童ポルノを見ていました。見ていると少し落ち着くのでほぼ毎日のように見ていました。外出しても、盗撮できないか、触れそうな子はいないか等と考えてしまい、私一人だと不安なので必ず友人と出かけるようにしていました。でも、やれそうな女の子を見つけると一人で行動し撮影したり、触ったりしていました。結局友人がいてもいなくても一緒だった気がします。友人は最初のうちは、「止めた方が良い」と言ってくれましたが、私は忘れっぽいので言っても無駄と思ったのか、段々言わなくなりました。でも私が捕まるまで一緒に遊んでいたし、私の良き理解者でもありました。今では会う事も、手紙のやり取りも一切していません。
 今回、このような事になり、被害者やその御家族のp方には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。ここでしっかり反省し、同じ過ちを繰り返さず、このような場所に戻って来ない人間になりたいです。

 残暑厳しい毎日ですが、体調に気をつけて下さい。お便りお待ちしています。

          8月14日   E
↓返書 

Date: 2012/08/29/09:02:24 No.807

Re:収監者との文通

Eさんへの返書

E様
 ご無沙汰しています。8月14日付のお手紙、27日にいただきました。有り難うございます。

<「引き金」・「いかりの綱」>
 お手紙の冒頭で、「引き金」について、「単純で興味本位な事」と書かれていますが、本当に些細な事が「引き金」となり病的欲求に火がついてしまうのが依存症というか、嗜好障害の特徴と言って良いでしょう。私の場合も、ほんのちょっとした喜怒哀楽で即飲酒に走り、そしてアルコール依存症へとひた走りました。ですから、依存症治療の中で「引き金」から身を守る術(すべ)を身につける事が不可欠だと思います。
 お手紙では「自分の欲求を抑えられるか、抑えられないかが大事な事だと思いました」と書かれていますが、それを意志や我慢の問題と考えると遅かれ早かれ限界の壁にぶつかります。大石の教育ミーテイングでは、「引き金」による欲求の暴発から身を守る方法として 「いかりの綱」と名付けた方法が提起されています。「いかり」とは船が海底に降ろす「錨」のことです。つまり、船が浅瀬や危険な水域に漂流しないように錨を降ろして一定の場所に係留するわけです。それに学んで、問題行動や犯罪に繋がる危険な方向に心を漂流させない為の方法を 「いかりの綱」として提起しているわけです。つまり、心を危険な「引き金」の方向に漂流させないための「いかりの綱」が提起されているわけです。ミーテイング参加者達は、「盗撮」や「露出」などを行う危険な場所に身と心を漂流させないための「いかりの綱」として、例えば、「家でCDを聴く」、「散歩」(危険な場所は避ける)、「妻への償いの意味も込めて家事を分担している」、「資格試験への勉強をしている」、「妻に、○時に帰るとメールを入れて心の漂流を防ぐ」・・・etcと答えています。Eさんも出所後に備えて自分なりの「いかりの綱」を考えてみたらいかがでしょうか。

<何を書けば?>
 お手紙で「今回の手紙を書くのに何を書けば良いのか悩みました」と書かれています。そこで、参考までに手紙のテーマを幾つか書き並べてみましょう。以前の手紙にも書いた内容ですが、念の為書きます。

・「過去の自分と今の自分」 ・「問題行動の引き金」 ・「償い」・「後悔と反省の違い」 ・「仲間の絆」 ・「気分転換」 ・「落とし穴」
 ・「自信と油断」・「一番大事な人・物・事」 ・「自信と油断」 ・「治療の切っ掛け」 ・「誘惑・病的欲求との闘い」・「迷惑をかけた人達」・・・

<質問への答え>

Q:なぜ本人が気づかないうちに依存症になってしまう  のか?
A:依存症は、一般には病気というより意志や倫理観等  の人格上の問題と見られがちです。そして依存症本  人もそう思っているので自分が依存症とは認めたが  らず、種々の理由をつけて自分の病気を否認しま す。だから、気づかない内に進行してしまうのです。

Q:他に気のまぎれそうなものが沢山あるのに、ひとつ  の物にハマってしまうのが不思議。
A:それが依存症という病気の症状の一つです。依存物への欲求が病的に強いため、他の楽しみへの欲求がかすんでしまうのです。

Q:性嗜好障害にも禁断症状があるのか?
A:私の個人的な回答ですが;禁断症状とは依存対象から遮断された時に発生する症状です。現在の拘束状態で、つまり性的問題行動から遮断されている中で過去になかった症状がでているなら禁断症状でしょう。性嗜好障害(性依存症)の禁断症状については私ももう少し調べてみたいと思います。

 以上です。残暑はもう暫くつづくようです。くれぐれもお体をお大事にお過ごし下さい。
草々

          平成24年8月29日
          大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/08/29/10:45:02 No.808