収監者との文通  Dさんからの手紙

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収監者との文通

Dさんからの手紙

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及び 当掲示板 No.555 N0.654 655 656 657 662 663 670 675 676 688,689  参照

前略
 大石先生、鈴木様、スタッフの皆様こんにちは。社会復帰に向けて頑張って生活しております。
 
 8月15日の日ですが、夕方急に寒気がして、頭痛と関節の痛みが強くなり、立ち上がろうとした際に眩暈がして、その場に倒れてしまいました。熱を測ったら39度4分あって病舎に行くことになってしまいました。平熱が35度台ですので、大袈裟かも知れませんが死ぬかも知れないと思いました。今は風邪は完全に治りましたが、病舎で安静休養してしまいました。期間を取り戻す為に今まで以上に刑務作業に励み、頑張って生活しておりますので御安心下さい。
 
 8月6日付の手紙にて、拘置所から刑務所に移送された事をお知らせしましたが、お伝えするのが遅れてしまい、鈴木さんが8月10日に書いて下さったお手紙が拘置所に届いてしまった為、拘置所から刑務所に回送する手続きや手紙の検閲などにより、お手紙を拝受させて頂くのが遅くなってしまいました。又、現在父親と文通しておりますが、月に4通しか発信する事ができず、鈴木さんのお手紙を拝受した時に既に4通発信してしまっておりましたので、ご返事が遅れてしまいました。申し訳ございませんでした。
 
 8月10日付のお手紙、早速拝読させて頂きました。凄く感動しました。嬉しかったです。今回の事件で力を貸して下さったB先生を紹介して下さったN先生という弁護士の方がおられるのですが、『出所したら直ぐに事務所に来なさい、力になるから』と仰って下さいました。N先生、B先生、父親、母親、大石クリニックの皆様、そして、また一人心の支えになって下さったAさん・・・。鈴木さんとの文通で何度か書かせて頂きましたが、私は今本当に、人は人に支えられ、助けられて生きている事を強く感じています。私も今、Aさんと同じように実際に外に出て生活していないので不安もありますが、3度目の懲役生活で大石クリニックと知り合う事が出来、今まで気付かなかった事に気付く事が出来、今後の自分の歩む目標が見えました。依存症で苦しんでいる人達の手紙を拝読させて頂いて、本当に社会復帰に向けて希望を持つ事が出来ます。自分だけではないんだと、今も何処かで依存症の病気を克服する為に頑張っている人がいるんだと思い私自身も負けてたまるかと、絶対にこの病気を克服して社会復帰するんだと、こんな自分でも絶対に変わる事が出来るんだと強い気持ちを持つ事が出来ました。
 
 8月25日に8月10日付のお手紙を拝受させて頂き、次の日の8月26日に8月22日付のお手紙を拝受させて頂きました。有難うございます。早速拝読させて頂きました。お手紙の中で、タイタニック号の船内に例えられてクロスアデイクションの事が書かれておりましたが、その文面を拝読させて頂いてクロスアデイクションの恐さをもっと強く感じました。以前の手紙で刺激や興奮を求める方法が痴漢や盗撮ではなくギャンブルや仕事、買い物、ネット、携帯メールなどだったらと書いてしまいましたが、鈴木さんと文通させて頂いて依存症の恐さを知り、依存症について甘く考えていたと思います。この事を忘れず、病気を必ず克服できるよう頑張って行きたいと思います。
 お手紙の中でAさんの事が書かれていましたが、その中での『Dさんも今、依存症受刑者からの再出発という意味ではAさんが歩んだのと同じ道、治療、回復、社会復帰への道を歩み始めています。この道から外れたり、逃げたりしない限り、道は必ず明るく、広く開けて行きますので、その意味では安心して一日一日の一歩一歩を歩み続けて頂きたく思います』との文面を拝読させて頂いて、強い意志を持ってこの道から外れたり、逃げたりしないで挑んで行けば自分もと思える事が出来ました。
 逮捕された時、正直、全てが終わったと思いました。そして、何故、何度も何度も同じ過ちを犯してしまうのか、その原因が分からず、不安でどうしたら良いのか分からなかったのですが、大石クリニックを知る事が出来、本当に良かったと思っています。残刑半年となりましたが、この受刑生活で私がやるべき事、やらなくてはいけない事をよく考え、Aさんに負けないように目標を忘れずに社会復帰に向けて頑張って行きたいと思います。
 鈴木さん、認知行動療法に使われているテキストをお贈り下さいまして有難うございました。また手紙を書かせて頂きます。本当に有難うございました。
 お身体を御自愛ください。では失礼致します。
                       草々
            平成23年9月6日
                      D

Date: 2011/09/09/23:25:10 No.693

社会復帰

Aさん E-Mail

さて、先週の9月1日に受刑生活を終えて現在、宇都宮の更正保護施設に入所して、新しい生活を始めています。 私は、ギャンブル依存症ですが、ここ宇都宮では、バカラもなく、犯罪と関わり無く生活出来そうです。さらに、明日からは、休日だけの仕事ですが始まります。平日は、ハローワークの基金訓練のパソコン教室に、通う予定で、夕方からは、簿記1級の勉強をしようと思っています。
受刑生活中に、考えていたことを、出来ることからコツコツとやって行こうと思います。
Dさんも、焦らずコツコツとやって行くのが大事だと思います。
本当は直ぐ大石クリニックに通いたいのですが、保護会の規則が厳しく、栃木県から出ることが、できません。なので、満期が来たら、直ぐ大石クリニックに通いたいと思います。

Date: 2011/09/10/15:30:46 No.694

Re:収監者との文通

Dさんへの返書

D 様

前略
 9月6日付のお便り拝読しました。有難うございました。ご返事が遅れて申し訳ございません。
 悪い風邪をひいて病舎に入られたとかで、ちょっと驚きましたが、もう完全に治られたそうで安心しました。何をするにも、先ずは身体というか、健康が第一ですので今後とも重々お気をつけ下さい。

 さて今日は、Aさんの話から始めます。Aさんは去る9月1日、満期まで3ヶ月を残して、仮釈で出所しました。事情があって未だ大石には来れないのですが、先日、大石のBBS掲示板「あおいくまの部屋」にDさん宛のコメントが入りましたので同封します。
その中で、「受刑生活中に考えていたことを、出来る事からコツコツやって行こうと思います」と書かれています。これは、刑務所内で既に出所後の生活への準備をしていたし、出来ていたからこそ、出来る事だと思います。それ又、今のDさんが受刑生活の中で既に始めている事だと思います。依存の対象にギャンブル(バカラ)と性(痴漢)の違いはあっても、治療・回復・更生・社会復帰に向けての道の基本は共通しています。Dさんの以前の手紙で、「嘗ての受刑生活では出所の事しか考えていなかった」と書かれていましたが、今のDさんは以前とは違い、出所に至るまでの受刑期間中こそが大事だと考えられております。この思いを忘れずに、Aさんに負けないように、残りの半年近い月日の、その一日一日を大切にして送って頂ければと思います。

 今回のお手紙の中で、「今回、逮捕された時、正直、全てが終わったと思いました。そして、何故、何度も何度も同じ過ちを犯してしまうのか、その原因が分からずどうしたら良いのか分からなかった」と書かれていますが、その逮捕の時から今日までの間にDさんの心の中に大きな変化、大きな前進が生まれているように思います。何故同じ過ちを繰り返してしまうのかの、その原因が性嗜好障害(性依存症)という病気にある事を理解し、そして理解だけでなく文通という形での治療を始めています。ここに以前との大きな、大きな違いがあります。そして、その違いが将来に向けての分岐点となり、以前には無かった希望への道を拓くものと成るでしょう。どうか、この事に確信を持って日々の生活を送りつつ、この文通も続けて頂ければと思います。
 
 そんな中で、クロスアデイクションへの御理解をも頂けたようで、嬉しく思います。人間、楽しみを持つ事は決して悪い事ではありません。否それどころか、生きて行く上で身体に食物が必要なように、心には楽しみが必要だと言って過言ではないでしょう。しかし同時に、生きて行く上で身体に害になる食物があるように、心に害となり、ひいては身体・生活の害になる楽しみもあるわけです。従って、それが必要な楽しみなのか、害になる楽しみなのかをしっかりと見定めて行き(生き)たいものですね。

 又、お手紙の中で「人は人に支えられ、助けられ生きている」と書かれていますが、私もその通りだと思います。ただ、つけ加えて言えば、「支えられて生きている人が、それによって他人をも支えている」というのも、もう一方の真実だと思います。例えば、今、Dさんのお手紙を全国ネットで公開していますが、同じ病気で苦しんでいる全国の多くの性依存症患者や家族の方がDさんの手紙を読んで励まされ、勇気づけられていると思うのです。「性犯罪で逮捕され絶望的気分に陥っていた人が、今、出所後に向けての希望を胸に日々の受刑生活に励んでいる。何度も過ちを繰り返し絶望していた人でもそういう変化が可能なのだ!!」との思いが心に差し込む一条の光となっていることと思います。そして、今後のDさんの更生への道の一歩一歩が、その一条の光をもっともっと太くして行くものとなるでしょう。その意味で、Dさんも今、多くの人々の心の支えとなっていることでしょう。

 最後になりましたが、このところ公私ともに多忙につき、御返事が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。早く書かなければと心では焦りながらも、中々時間をとれませんでした。今、やっと書けてホッとしています。今後も、御返事が多少遅れる事があるかも知れませんが、遅くなっても、必ず書くように努めますのでご容赦下さい。
 残暑が続いていますが、暑さももう一息だと思います。ただ、季節の変わり目を迎えますので、くれぐれもお身体を御自愛下さい。
                      草々
       平成23年9月16日
         大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2011/09/16/13:21:15 No.702