収監者との文通 Bさんからの手紙

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収監者との文通

Bさんからの手紙

大石クリニックHPトップページ
及び 当掲示板No.555 以降Bさんとの文通参照

鈴木達也様
 
手紙、遅くなってしまい申し訳ありません。
 ○○少年刑務所に確定し、これから務める工場も決りました。受刑中に特別改善指導(性犯罪再犯防止)も受ける事が決り、積極的にしっかり受けようと思っています。同じ工場の先輩や同収者との人間関係はやはり難しいところもありますが、誠実に、謙虚にやって行こうと思っています。

 この刑務所に来て、受刑中の目標を三つ頂きました。
① 自分なりの罪の償い方を考え、できる事から実践。
② 先行きを考えて、行動を自制できるようになる。
③ 周囲の状況をよく見て、人の気持ちを思いやれるようになる。

 もちろん、他にも見つめ直さなければいけない事も有りますが、この三つを今はしっかり考え、実践しようと思っています。この目標を設定され、目にして思った事があります。

① については、正直、直接被害者の方にできる事はないと思っています。今ここでしっかり自分がした事を見つめ直し、更生し、同じ過ちを犯さないという事が償いになるのではと考え、一日一日生活しています。
③ は、生きている中で、自分は一人で生きている訳ではありません。人の気持ちを思いやるという事は当り前の事ですが、私は思いやりを持つ事ができなかったので、それをしっかり考えなければいけないと思いました。
そして、②なのですが、昔から親によく言われながら、自分が全然出来なかった事だと思いました。この②をよく考えてみたのですが、先行きを考え行動するという事は、自分がこういう事をしたらどうなるか(相手がどう思うか、感じるか。それをしてしまう事によって、その後どうなってしまうか)を考え行動するという事で、これをしっかり考え行動する事が出来れば、同じ過ちは犯さないし、自制できます。
 この②の目標をしっかり考え出来るようになれば、この三つの目標がしっかり出来るのではと思いました。他にも多くの事を考え、自分を見つめ直さなければいけませんが、この三つ、特に②は今しっかり考え、自制できる自分をつくろうと思います。

 9月6日から工場に務め始めたので、今は覚える事が多く、慣れない事ばっかりなので大変ですが、頑張ろうと思っています。

 お返事お待ちしています。 失礼します。

                                        9月20日 B

Date: 2011/10/05/20:30:03 No.708

Re:収監者との文通

Bさんへの返書

B 様
前略、
 9月20日付のお手紙、有難うございます。返事が遅れて申し訳ありません。
実は、私、9月23日(秋分の日)の朝から身体の具合が悪くなり、どうにも我慢できずに自分で救急車をお願いして病院に行きました。診察の結果、診断名は「腸閉塞」で「手術をしましょう」との事でした。その時の心境は 「それならそれで、早く切ってくれ」と思う程の痛みと苦しさでした。でも、とりあえずは鼻から腸に至る管を入れ、機械で腸内の物を吸い出す治療で様子を見たところ、閉塞部が開通し症状が緩和したので、そのまま4日間、点滴で栄養をとりながら絶食のままでの同じ治療を続けました。4日目に管が外されて、お粥を食べられるようになり、7日目に念の為の大腸検査(内視鏡)を行った結果、異常無しとの事で、結局、手術はせずに退院の運びとなりました。
 結果的には僅か一週間のの入院生活だったのですが、普段とは全く異なる生活環境の中で色々と考えさせられる事も多かったように思います。特に、事情は犯罪とは異なりますが、結果的にはベッド、院内に拘束された生活を余儀なくされて、何年、何ヶ月と司法施設に収監されている方々の気持ちの百分の一ぐらいは分かったような気もしています。同時に又、日常の自分の生活、行動パターンを客観的に見つめ、そして見つめ直す機会にもなったように思います。

 さて、お手紙を拝読して、更生と社会復帰に向けて着実な一歩一歩を踏み出されているようで、大変嬉しく感じています。一口に更生の道といっても、それだけでは何をどうすれば?と道程がボヤけてしまいますが、教育と更生を主眼とする少年刑務所から示された三つの具体的な目標は更生に向けてのレールのようなものであり、是非、このレールから脱線しないように歩み続けて頂きたいと思います。
 
 提起されている三つの課題は、別に犯罪を犯してはいない一般の人々にとっても大事な問題だと思います。例えば、
①について言えば、一般の人でも、犯罪にまで至らないまでも自分でそれと気づかぬ内に他人に迷惑をかけているケースも多いし、従って反省も必要です。
②についても、自制が効かず、つい他人と口論してしまう場合もあれば、商店で衝動買いをしてしまい後で後悔する事もあります。
③の、周囲の状況をよく見て、人の気持ちを思いやるという課題も、意識して注意していないと、つい人の気持ちを傷つけてしまうケースが日常的に無数にあるように思うので、私も含めて一般の人々も取り組むべき課題だと思います。

 そして、いずれも犯罪にまでは至らず裁判にもならないが故に、本人もあまり問題意識を持たないままに月日、年月が過ぎ去り、その中で自分自身も傷ついているというケースは世の中にそれこそ無数に存在しているように思うのです。その中で、Bさんの場合、更生、社会復帰を目指して意識的に①・②・③の課題を実践する立場にあります。それにより、一般の人以上に人間的な成長を図る機会を手にしているように思います。

 又、お手紙の中で、性犯罪再犯防止の為の特別改善指導を受けられると書かれていますが、これは、うつ病や各種依存症に非常に効果があるとされて、今世界的な広がりを見せている『認知行動療法』という治療法に基づく治療プログラムですので、是非、希望を胸に受け続けて下さい。この治療を受けての感想などありましたら又お手紙でお知らせ下さい。楽しみにお待ちしています。
 長くなりそうなので、今日はこの辺で失礼します。季節の変わり目を迎えていますので、お身体にはくれぐれもご注意下さい。
                                              草々

         平成23年10月5日
          大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2011/10/05/21:23:43 No.709