Eさんからの手紙
Eさんからの手紙
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及び 当掲示板No.555 以降Eさんとの文通参照
大石クリニック相談員 鈴木達也様
前略
お元気ですか。返信ありがとうございます。
私が率直に思い、書いた事が依存症治療の原理とは思っていませんでした。大層な事を書いてしまい恥ずかしいです。でも、私の思いは変わっていません。私と同じ人は居るとしても、同じ罪を犯して刑務所に入ってほしくありません。そう願っています。
文通ミーテイングという事ですが、ミーテイングと言われると打ち合わせとか、指導としか思い浮かびません。一体、どういうものなのでしょうか? 話し合いというものであるなら、どのような事をお話しすれば良いのでしょうか? 教えて下さい。
手紙のやり取りは個人情報だから止めた方が良いのではないか、止めないまでも控えた方が良いのではないかと言ってくれた職員さんも居ました。しかし文通を止めてしまうと自己改善につながらないと思います。私は止めるつもりはありません。ここで止めてしまうと以前と何も変わらない自分になってしまうと思っているからです。
お手紙の最後の方に「主観的に完治したと思って油断すると再発の落とし穴が待っている病気でもあります」と書いてありましたが、私の場合正にそれだったと思います。自分では、もう大丈夫だろうと思って過信し油断した結果だと思います。だから今回を機に治療しようと決意しました。
「前回もそうだったから、またやって入るよ」、「これ以上被害者を出さないために死んだ方が世の中のためだ」、「死ななくても手くらいは落とすんだろう」などと心ない事を言う人もいましたが、前回は精神治療をしていませんでしたし、私自身も迷惑をかけている親や周囲の人の事を思うと、絶対に治療してその人達を安心させたいと強く思っています。
一つ質問です。この手紙のやり取りでお金はかかりますか? また社会に戻って受診するとなると、一回いくら位かかり、総額でいくら位かかりますか?
2~3ヶ月でこれくらい、1年で約これ位と教えて下さい。また私は保険証が無く全額となると支払いが困難となってしまい治療が中断してしまうのではないかと心配しています。治療費を安く抑える制度等あるのでしょうか? あるとすれば私も利用できるのでしょうか? これもお答え頂けると嬉しいです。
そろそろ梅雨に入ると思いますが、お身体に気をつけてお過ごし下さい。返信お待ちしています。
草々
平成24年6月6日 E
↓返書
Date: 2012/06/18/14:30:11 No.764
Re:収監者との文通
Eさんへの返書
E様
6月6日付のお便り、16日に頂きました。有り難うございます。
Eさんが前回の手紙で率直に述べられた、同じ依存症に苦しむ多くの人々への思いは、正に依存症治療の核心と言って良いでしょう。自分の体験談の公開が同病の仲間を励まし、逆に自分も仲間から力を貰えます。この相互関係の継続の中で、仲間への共感や仲間意識が生まれ、それが治療の薬になりますので、Eさんの今の率直な思いを大事にし続けて下さい。
<ミーテイングについて>
当院の性依存症治療では2種類のミーテイングを行っております。
1)初診後5ヶ月間の教育ミーテイング;
ここでは、講師の話とワークブックを基に、性的問 題行動に近ずかない為の日常生活について学び、そ れを実践し。その状況を仲間の前で話します。その 仲間の交流の中で学びあうこともできます。
2)テーマミーテイング;
1)を修了後、テーマミーテイングのグループに入ります。ここでは、参加者自身の性依存症体験談の交流が行われます。当院スタッフが司会を務めますが、参加者全員が横一線の平等な立場で体験談を語ります。
そこには、議論や意見、批判といった要素は含まれず、仲間の体験談から学べるものを学ぶ場所です。ただ話すだけ、聞くだけです。もう一つのルールとして、仲間の話を外部に漏らさないという決まりがあります。仲間から批判されず、秘密が守られるルールの下で、他の場所では話せない自分の過去を安心して話せる場所です。
テーマミーテイングでは、参加者それぞれが自分の依存症体験を語るのですが、話し易くする為にテーマが設定されます。参考までに、その例をいくつか列記しますと、
・「過去の自分と今の自分」 ・「問題行動の引き金」
・「償い」・「後悔と反省の違い」 ・「仲間の絆」
・「気分転換」 ・「落とし穴」 ・「自信と油断」
・「一番大事な人・物・事」 ・「自信と油断」
・「治療の切っ掛け」
・「誘惑・病的欲求との闘い」・「迷惑をかけた人達」・・・その他無数
等々ですが、別にテーマにこだわらず、その時・その時の思い、悩み、喜び、等々自由に語ることができます。
<Eさんの勇気に敬意を表します>
文通のネット公開においては、固有名詞その他の本人の特定に繋がる文言は一切避け個人情報の保護に努めておりますが、Eさんの周囲の事件の経過を知る人には手紙の文面から筆者が誰かを知られる可能性は僅かながらも確かにあるでしょう。しかし、それでも文通公開で治療と自己改善をしたいというEさんの勇気に敬意を表します。又、Eさんは再犯への反省から、自分が性依存症である事を認め、そして治療への決意をされました。この病気には恥辱感が付き物で患者はどうしても自分の病気を否認しがちで、治療にも繋がり難いという側面があります。問題に気づいても反省や誓約、強い意志といった個人的な力だけで克服しようとして結局は同じ失敗を繰り返す結果となります。ですから自分の病気を心の深奥で認めて専門治療に繋がった時点で治療は半分終わったと言っても良いのでは?と私は思っています。その意味でEさんは既に治療の半分を終わっていると言っても良いと思うのです。その意味でもEさんに敬意を表します。そして、Eさんの公開文を読んだ未治療の患者さんの一人でも多くが自分の病気に気づいて治療に繋がる事を、私もEさん同様に心から願っています。
<医療費について>
◎文通:当院との文通は無料です。
Eさん側の〒料金のみご負担下さい。
◎通院治療費:保険無し、全額自己負担の場合
初診時 :6700円+薬が必要な場合・薬代
次回以降:診察のみ=3990円+薬が必要な場合・薬代
診察+ミーテイング=4190+薬が必要な場合・薬代
全額自己負担ですと、このような金額になります。
性依存症治療の通院は原則週1回となりますので、2~3ヶ月、1年の治療費は上記の金額(1回分)に治療期間を乗じて算出して下さい。通院期間は患者様によって異なりますが、概ね2年ぐらいです。
◎医療費軽減制度について:
・ご存知のように、出所してから国民健康保険に加入すれば、支払い額は上記金額の3割となります。
・国保に加入して、「自立支援医療制度」を活用しますと、患者様の負担は上記金額の1割となります。この制度については案内文を同封しますのでご覧下さい。
・最後のセーフテイーネットは生活保護の受給で、この場合は医療費は全額免除となります。
以上ですが、分らない事がありましたら、また手紙でご質問下さい。
梅雨の季節を迎え、うっとうしい日々が続くと思いますが、お身体には重々気をつけてお過ごし下さい。またのお便りを楽しみにお待ちしております。
草々
平成24年6月18日
大石クリニック相談員 鈴木達也
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