収監者との文通 Cさんからの手紙

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収監者との文通

Cさんからの手紙

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大石クルニック相談員 鈴木達也様
前略
 鈴木さん、こんにちは。春の訪れを感じさせる三寒四温で、ようやあく春はすぐそこまで来ているようですが、いかがお過ごしですか?平成25年2月26日付のお手紙、28日に届きまして、ありがたく読ませて頂きました。又お手紙の内容はよく分かりました。
 
 「ノンアルコールビール是か非か?」の件、この例え話で私も思い出した事があります。私はタバコを吸うのですが、例えば禁煙しようとする人が「禁煙パイポ」を口にくわえて、タバコを止められるでしょうか?これも引き金リスクが高いと思いますね。この様な事を頭に入れて自分を危険に近づけないことでしょうね。

 出所を間近にして、今月で23通目ですか !! 今考えてみますと、1年10ヶ月の懲役も早く感じています。それも、毎月の文通があったから早く感じるのかな?と思います。刑務所内での依存症教育治療も最後までトラブルなしで卒業できれば「ベストだった !! 」と思います。過ぎてしまった事は仕方がないとは思いますが、後悔が残るのは当然です。ですが、鈴木さんの手紙にも有りました様に、あまり自分を自己嫌悪的に責めず、前向きに良い方向に向かって、もう一度、一からやり直す気持ちが大切であるとよく分かりました。
 ですから、この事もまじえて、出所日の4月3日には、自宅に帰る前に、大石クリニック・大石院長の所に必ず行きますとお伝え下さい。この日は国民健康保険がありませんので、診察料なしでとお伝え下さい。院長先生に相談したいこともありますので。 又、鈴木さんには、○○警察留置場の時と、この1年10ヶ月、私の為に色々とご配慮頂き本当に有り難うございました。天文年鑑の本まで差し入れて頂きまして感謝しております。

 そででは、先月の問答の残りの問いに答えたいと思います。
(3)継続的な治療
問い:継続的な治療には、どのような形態のものが考えられるでしょうか?
答え:私は、依存症の病気には「これで良い」という完治の保障が無い事を既に学んで来ました。いつ再発するか、院長先生でも自分自身でも分かりませんから。
 そこで定期的な日々の通院と自分で決めた、「ウオークマン」に録音した犯罪を防止する言葉を聴く事が効果的であると自分では思います。継続的な面での治療は、永久的なものだと自分自身に自覚さあせることでしょうか。そこで、趣味や自分の好きな娯楽事の発表会みたいな事を大石クリニックで行うことによる通院の楽しさ、面白さなどが必要だと思います。それで継続的な治療に繋がれば・・・、そして、犯罪防止につながれば・・・と期待しています。
 以上で、問答への全ての答えを終わらせて頂きたいと思います。私から仏教学、天文学、依存症治療を取ったら、人間として正しく「生きる」という事を失う事だと、今、「丹田の底」から考えさせられています。これは自分で深く意識することですが、以前仏教話で手紙に書いたかどうか忘れましたが。
 
 仏教では、意識には「五蘊/ごうん」の色・受・想・行・識があります。色は形のある全ての物(人の身体も含む)、受は外界から受ける感・感覚器官(目/げん、耳/に、鼻/び、舌/ぜつ、身/しん、意/い)、想は思いめぐらすこと(連想など)、行は身体で働き出る行動(行為)、識は一般に言う意識(心にそうだと認識することなど)であります。そして、目・耳・鼻・舌・身・意は六根と言いまして、これらで最終的に心に認識されたものが「意識」です。それが。法華経というお経では、上の六根が六識と言うのにたいして、法華経では九識という事が説かれています。この九識は六識より深い意識であり、いわゆる無意識に近いものです。依存症者にもこの九識から発する再犯という恐いものが待ち潜んでいるのですね。

 今回の天文講話に入りたいと思います。今回で最終回であり、「尾を引く彗星・流れ星」と題して書きます。
彗星の住み家は、太陽系の惑星であった現在の準惑星である冥王星の外の軌道である「オールトの雲」と呼ばれる所らしいことが分かりました。「ハレー彗星」などと同じように、太陽に接近すると尾を長く引くようになります。尾は最大の長さで3億キロにも達するそうです。よく「流れ星が出た !! 」と言うのは実際に星が流れたのではないことをご存知ですあかこれは、彗星が太陽に近づいた時に、太陽風邪に晒されて彗星の中心核が溶けた時に、塵などが散って地球の大気の中に入って摩擦で光って消えるのが流れ星なのです。
 この流れ星には、「しし座流星群」、「ペルセウス流星群」、その他もありますが、私も何度も見たことがあります。天文年鑑2013年版・220~223頁を参照すると、流星群のことが分かります。
 そして何よりも、この流れ星を見た時に、「今度こそは、性犯罪を犯しませんように」と願い、そして鈴木さんの分も「今後、酒を飲みませんように」と流れ星にお願い事をして、「叶えられますように !! 」と願いをかけようと思います。又、もっと幅広く、「大石の患者さん全員が依存症から脱することが出来ますように !! 」と願いたいです。

 さて、今日までの23通の文通での仏教の話や、天文講話等で私の得意話に聞き苦しい所があったかも知れませんが、これで拙い講話の最終講話とさせて頂きます。出所しましたら、鈴木さんに星座の「星図表の本」を見せますので期待していて下さい。
 今日まで、私の為に尽くして下さった鈴木さんの優しいお心遣いに感謝しまして、これで私からの最後の手紙とさせて頂きペンをおきます。  
 それではこの辺で失礼します。大石院長には帰りに依らせて頂きますので、宜しくお伝え下さい。
                     草々
           平成25年3月12日  C
 返書 執筆中

Date: 2013/03/21/12:57:31 No.880

Re:収監者との文通

Cさんへの返書

C様
前略
 出所日の4月3日を間近かにしての最終定期便(23通目)が3月16日に届きました。ありがとうございます。
思えば、2年前の春・4月、Cさんが○○警察留置場で、出所後の再犯防止の為に大石との毎月の文通を続けようと決意して以来、刑期最終月の今回のお手紙まで初心を貫いて来ました。この間の23回に及ぶ手紙書きは、「再犯を犯さない為に必要な事を継続する」ことが出来るという心の自信に繋がり、それは今後の人生に向けての心の宝物となることでしょう。前刑までの何度かの出所時までは、「もう2度と再犯をしない」と心でそう思っただけだったと思うのですが、今回は「文通を続ける」との自分との約束を貫けた自信と、再犯を犯さない為の具体的な方法を手にして、それを頭に刻み込んでの出所となります。この以前の出所時との違いに確信を持って、社会復帰への第一歩を踏み出して下さい。
 出所の日には、自宅に戻る前に大石に立ち寄られ、院長に挨拶
や相談をしたいとの件ですが、保険の事情も含めて院長に伝えて、院長から了解を得ましたので、どうぞ○○から大石まで直行して下さい。大石第一ビル2階の外来受付の職員にも院長了解の旨を伝え、Cさんの名前を告げるだけで良いように手配しましたので、あとは名前を呼ばれるまで待合室でお持ち下さい。

さて、今回のお手紙を拝読して思った事を書きます。
「ノンアルコールビール是か非か?」の問題もよくご理解頂けたようで嬉しく思います。再犯や再飲酒に走らない為に「引き金」に手を触れない注意が必要なのは性依存も酒依存も共通していると思います。そして「引き金」に近づかない為に「錨の綱」の実行が有効だということでも、性も酒も共通しています。
 継続的な治療の一環として、ウオークマンの録音を聞くとされていますが、そのウオークマンの付属品を大石クリニックからプレゼントさせて頂きたいと思っています。それが何か?は4月3日の来院時へのお楽しみとしておいて下さい。

 仏教話で、依存症の再発や再犯は、殆ど無意識に近い「九識」から発すると書かれていますが、だからこそ、危険に近づかない「錨の綱」と最後の砦としてのウオークマンによる意識の呼び覚ましが必要で、大事なのでしょうね。
 
 流れ星の話ですが、流星群というのは随分沢山あるんですね。そして流れ星というか、太陽風に吹き飛ばされて来た彗星中心核の塵の出現回数も想像以上に多いですね。天文年鑑・2013年版の223頁の表で、1年間の全国での出現回数を数えてみたら142回でした。全世界的規模で数えたら、どのくらいの回数になるのでしょう?恐らく4桁の回数になるのでしょうね。その流れ星に再犯を犯さない事と、もう一つ私の断酒継続まで祈って頂けるとの事で、感激です。有り難うございます。お蔭さまで、断酒継続は今年で18年を迎えますが、それは今日までの治療と自助グループ、依存症相談員という仕事に助けられたのと、特に深刻なストレスに襲われなかったという幸運に恵まれての事で、今後の人生の何処に仕掛けられているか分からない落とし穴を考えると、まだまだ決して油断はならないと考えておりますので、流れ星に私の断酒を祈ってくれる依存症仲間としてのCさんの存在は大きな力となりますので今後とも宜しくお願いします。

 それから、話は前後しますが、お手紙で1年10ヶ月の懲役が早く感じたと書かれ、それは、毎月の文通が有ったからと書かれています。それと全く同じ事を、やはり大石との文通を続けて去年の暮に2年の刑期を終えて出所された方が手紙に書かれていました。退屈な時間は長く感じるものですが、何かを実行して過ごした充実した時間は短く感じるのでしょうね。これは、今後受刑者の方に文通を勧める際の話題にしたいと思います。「文通をすると刑期が短くなりますよ !! 」(笑)とネ。

 出所したら、Cさんと一緒に大岡川の川岸に咲き誇る桜を目に、出所祝いの乾杯(もちろん、私はウーロン茶で)をしようと思っていたのですが、今年の桜前線は新幹線か飛行機で北上したのか(笑)、3月24日頃に満開になるとか報じられています。だとすると、4月3日頃にはもう葉桜でしょうか?だとするとチョッピリ残念な感じもするのですが、花より団子じゃありませんが、花よりCさんに会える方が、ずーーーっと、楽しみです。その日がもう目前です。どうぞ悪い風邪などひかないように、その日までお身体に気をつけてお過ごし下さい。「もういくつ寝ると♪」と指を折りながら今日はこの辺で失礼します。

                     草々
         平成25年3月21日               大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2013/03/21/14:49:52 No.881