高齢アルコール依存症者が治療に繋がるまで

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大石クリニック介護保険相談室
ケアマネージャー
半崎芳江

i以下は、去る11月19日、横浜市不老町地域ケアプラザ主催にて開催された「ケアマネージャーのための『アルコール依存症』を学ぶ会」にて発表した報告の要旨です。

I さん(70代・女性)の事例に基づいて報告します。
Iさんの既往歴は頚椎症性脊椎症および胃潰瘍で、生活保護を受給しています。夫と死別以来、寂しさから常習飲酒となり、飲んでは寝る~を繰り返し食事をしなくなり、体重も減少したため主治医より久里浜病院を紹介され、同院に3ヶ月間入院し、退院後の平成17年3月、CW同行にて当院=大石クリニックを受診しました。
以後、週1回の通院となりましたが数回で途切れ、ヘルパーを導入しましたが、この頃から飲酒が常態化しており、いわゆる「高齢者のアルコール依存」の状態になっていたようです。自らのアルコール臭については「ノンアルコールビールを飲んだ」と弁明するばかりでした。その後もヘルパーからの「部屋の中にビール缶が何本も転がっていた」とか「部屋が水溶便で汚れている」などの報告や、転倒による骨折などの飲酒をうかがわせる事実が相次ぎましたが、本人は「親戚が来て朝まで飲んで帰った」、「ノンアルコールビールを飲んだ」、「姪がトイレを汚した」などと、自分の飲酒を否認し続けました。その後、訪問介護事務所から「もうヘルパー派遣は出来ない、勘弁して欲しい」と再三に渡って通告されましたが、無理を前提にヘルパー派遣を継続して貰っていました。
平成19年9月に至り、介護事務所よりIさんの飲酒情報が何度も続き、又、『12時間センサーが作動しガードマンが2日続けて午前2時に出動した」との情報も入った為、介護事務所の責任者と相談員3名でIさん宅を訪問し、膝を突き合わせて徹底的に話し合いました。ここに至り初めて本人も涙ながらに飲酒の事実を認め、断酒と回復への希望を述べ、当クリニックの受診を決意しました。
受診後今日に至る1年間、週1回のデイサービス、ヘルパーによる服薬介助を続けていますが、この間ヘルパーからの飲酒報告はありません。
以上の経過から、次の事が言えると思います。
◎アルコール依存症の方々が酒を止め続けて行くという事は、私達がおもっているよりずっと大変な事のようです。
◎酒を禁止したり、監視を続ける事には限界があり
⇒衣食住の基本的な生活環境を整え、規則正しい生活を継続できるよう支援する   必要がある。
◎クライアントの人格を尊重した接し方が大切。
◎素面の時に冷静に話し合う。
◎相手の訴えにこちらの周波数を合わせて聴く。
◎「底つき」(上記下線部 )を待つのも一つの方法。
◎関連各部門との連携。
◎仲間づくり。