Kさんとの文通

NO IMAGE

Kさんとの文通

大石クリニック

  =この記事の目的:投稿No.555をご参照下さい=
性犯罪により現在拘留中のKさんより、当院との文通公開のご了解を頂きましたので、以下に掲載します。
9/6付 Kさん ⇒ 大石CL
9/10付 大石CL⇒ Kさん
9/20付 Kさん ⇒ 大石CL

大石クリニック
 大石雅之院長宛:Kさんからの手紙
 
 はじめまして。私は今回下着泥棒目的の住居侵入の罪で逮捕され、懲役1年6ヶ月の判決を受け、現在控訴中の者です。
 何故先生の事を知り手紙を書いたのかと言えば、今回お世話になった弁護士の先生が、たまたま週刊誌に載っていた記事を見つけて参考になればとコピーした記事を差し入れてもらったのがきっかけです。
 何故手紙を書いたのかと言えば、先生の記事に興味を引かれたからです、今まで2回ほど精神科にかかりましたが、その2箇所とも自分が望んでいるようなカウンセリングにはほど遠いような気がして行くのを止めてしまいました。恥ずかしい事に、今回逮捕されたのは6回目で刑務所に行くのは5回目です。私ももう30代半ばを過ぎ、現在バツイチで幼い二人の子供がいます。今、逮捕されたのが6回目と言いましたが、この内5回は全部性犯罪で逮捕されています。
 さっきも話したように、私もこの年齢になってこのような事をしている自分が情けないですし、事件が事件だけに子供達にも拘って来る事ですし、何の罪も無い子供達の為にも今回で最後にしないと・・・。それに今回で最後にしなければもっとチャンスも訪れないでしょうし。
 話がそれてしまいますが、男であれば誰しも「性」には興味を持つことですし普通な事ですが自分の場合、理性が効かず行動に移してしまう事が問題であって、だからと言って許される行動でない事は十分わかっています。中には病気でなく自分に甘えているだけと言う人もいますが、果たして本当にそうなのでしょうか? 今まで自分もそう思っていましたが、もしそうであれば何かしらのヒントも出て来るだろうし、こんなに同じ事を繰り返す事もなかったんじゃないかと思います。
 今回逮捕されてから色んな事を考え悩んでいます。いま控訴しているのも決して刑期が不満な訳じゃなく、何の考えもまとまる事なく刑を確定させ刑務所に行き、周りの人達に流され無駄な時間を過ごす事が恐いのです。もしそうなれば出所後また同じ事を繰り返すのは目に見えています。ですから、この先どのように過ごしたら良いのか、よく考え、自分の進む道が決まり次第控訴を取り下げ、刑期を確定させようと考えています。
 最後になりますが、今回先生に手紙を書いたのは、先生から良きアドバイスがあればと思いペンを執らせて頂きました。まだまだ暑い日が続きますが、体の方大切にして下さい。それでは乱筆、乱文、無学にて失礼します。
         平成22年9月6日  K

   

Date: 2010/09/27/19:27:18 No.560

Re:Kさんとの文通

大石クリニック

Kさんへの返書

K様
前略
 はじめまして。私、大石クリニックにて相談員(文通担当)をしております鈴木達也と申します。以後よろしくお願い致します。
 さて、この度は院長宛のお手紙を頂きまして有り難うございます。お手紙じっくり読ませて頂きましたが、過去の経過と今日の境遇の下での今の思いに深く心打たれる思いがしています。過去に何度も同じ事を繰り返して来たのは「自分に甘えているだけ?」ではなく、どうやら病気のようだとお気づきになっているようです。依存症というのは自分では中々気づき難く、気づきかけても本人は中々認めたがらない病気なのですが、Kさんの場合、「今回逮捕されてから色々な事を考え悩む」中で依存症に気づき、刑務所に入る前にきちんとした治療の方向を模索されています。これは依存症の治療・回復に向けての最初の大きな第1歩を踏み出している事を意味しています。次の2歩目に踏み出されるよう心から期待しています。以下にその2歩目に向けての提案をさせて頂きたいと思います。
 当院ではKさんのような方々、即ち、司法施設に収監されており依存症専門病院での治療が不可能な方々の治療の為に文通方式を採っております。その具体的内容について当院ホームページ内のBBS掲示板「あおいくまの部屋」よりコピーしてご紹介します。
   ――――――――――――――――――
大石クリニックより
 当院では、各種依存症を原因とする犯罪にて各種司法施設に収監されている方々の依存症治療・回復を心から願い、収監者の皆さんとの文通、及び、当掲示板にての文通の公開を行うことと致しました。
 収監中の方々は、文通により過去の自己を見つめ直す事で人生の再スタートを切る切っ掛けと出来るでしょう。又、HP掲示板での公開により自分をより客観的に見つめ直す事ができるでしょう。公開はまたこの病気の真実=回復可能な病気である事を一般社会に向けて浮き彫りにする事ができるでしょう。その事が収監者の皆さんの心に社会的貢献感を生み出し、それも依存症回復への大きな糧となるものと確信します。
 以下に現在、留置場、拘置所、刑務所、少年院等々に収監されている方々との文通内容を本人の同意の下に匿名にて公開致します。
   ―――――――――――――――――――
 いかがでしょう? 1年余の刑期を、出所後の確実な専門治療・回復の為の準備期間とする為にも当院との文通をしてみませんか?
 お書き頂く内容は主として依存症にまつわる体験談、今の悩み、相談事などです。もし御了解を頂けるなら、先日の9月6日付で頂いたお手紙と、この返書を掲示板に公開しつつ文通のスタートにできればと思いますのでご返事をお待ちしております。
尚、文通の公開に際しては、お名前は匿名とします、また、文通は全て無料とさせて頂きます。カウンセリング料のようなものは頂きません。Kさん側の便箋、封筒、切手代だけで結構です。
最後になりますが、残暑がもうしばらく続くようですので、お体には十分お気をつけてお過ごし下さい。今日はこれにて失礼します。

       平成22年9月10日
         大石クリニック
          相談員(文通担当) 鈴木達也

Date: 2010/09/27/19:30:49 No.561

Re:Kさんとの文通

大石クリニック

Kさんからの返書

鈴木達也様
前略
 早速の返信有難うございます。前回の手紙はダメ元で出しているので、本当に返事が来るとは思っていませんでしたし、届いてびっくりするとともに嬉しく思っています。また司法施設にいながら鈴木さん宛てに手紙を書いている方がけっこういる事にもびっくりしています。みんな更正しようと必死なんですね。中には少年院からも手紙が届いているようで・・・。10代のうちからカウンセリング等を受けて更正しようと言う意欲には見習うものがあるのではないかと思います。
さて、話は本題に入りますけど、自分は本当に依存症という病気なのでしょうか? 鈴木さんの手紙にも「依存症というのは自分では中々気づき難く、気づきかけても中々認めたがらない病気」と書いてありますし・・・。先日の手紙にも書きましたが、色々と考え、悩んだりしていると「やっぱり自分は病気ではなく、自分から逃げているだけなんじゃないか」とも思えて来ます。話がそれてしまうかも知れませんが、先日拘置所の職員に自分の思っている事を話したらー「社会に復帰してからの事を思うと恐くなったり不安になったりする」と話したところ、そう思う時点で大丈夫なのでは?と言われました。意味が良くわからないですか? 今、色々と悩んだりしているけど、この悩んだりしている事が本当に一日一日と過ぎて行く中で無駄になっていないだろうかとか、今悩んでいる事の答えが出ない限り刑期を確定させて受刑生活を過ごしてもまた同じ事の繰り返しなのではないか?でもいつまでも控訴している訳には行かないし、刑を確定させない限り社会復帰も遅くなる訳だし,だから今回の受刑生活で目に見える様な、自分に自信が持てるような変わり方をしない限り、自分が今かかえている恐怖と不安は消えないし。反面その変わり方を探している間に今の気持ちを忘れてしまい、せっかくの更生のチャンスを逃して何の意味もない受刑生活になってしまうし、前刑の受刑生活がそうでした。そんなモヤモヤを抱えているのなら職員に相談しようと思い、さっきのような答えが返ってきました。職員の言う通り、周りの人達が色んなアドバイスをしても結局は自分の事というのはよく分かりますが、「もうやらない」と言う強い意志を持つ事って簡単に言うけど、それが出来ればこんなに悩む事もないし、苦労する事もありません。これは自分の甘えにしか過ぎませんけど。それと何と言ったらら良いのか分かりませんが、自分の中で気持ちの波があり、心の底から「更生する為にはどうしたらよいのだろう?」と思ったと思ったらその何日か後には「なるようにしかならない」と開き直ったり、「何とかなるだろう」と簡単に考えてみたり・・・。本当に思い悩む時は手紙が書けないほどです。鈴木さんにしてみれば、なかなか自分が依存症と理解してくれる人がいないのに、それを理解して自分の更生への力を返していただけるのですし、甘えた事を言うようですが、社会復帰後カウンセリングに通うことになっても、自分が望んでいるようなカウンセリングが受けられず、そう思っている間に仕事が忙しくなったりして行きそびれてそのままになってうたのが実状です。自分が望むカウンセリングというのは、じっくり時間をかけて話を聴いてもらったり助言してもらい、その上で必要な薬を処方するというのが理想なのですが、そういう病院がなかなか見つからなかったし、その間にまた犯罪に走る事になってしまったのですが・・・。
だから今回鈴木さんから手紙が届き、「文通しませんか?」と書かれた手紙が届いた時は本当に嬉しかったですが、実際に文通をするに当たって、どういう事を書いたら良いのかとか、みんな文通している人達はどの位のペースで書いているのか疑問に思いました。この間お袋が面会に来たのですが、この話をしたらとても喜んで、匿名が分かり次第ホームページを見るとの事でした。何度も言うように親子ともども喜んでいます。
それとこの年齢で果たして、「更生しよう」と思うのは良いかも知れませんが、今からやったところで遅くないかな?と思うこともあります。自分が初めて見知らぬ女の人の下着を家に持ち帰ったのは小学校6年の頃でしたし、それからずっと同じ事を繰り返して来て、本当に断ち切ることが出来るのかな? 今さら気付いたところで遅いのではと思うことも多々あります。それに、今までさんざんアダルトビデオやエロ本見て来ていて、この中でもエロ本を見ていて本当にそれで良いのかとも思いますし、本当に依存症が治るのかともおもいます。でも男である以上誰でも性欲はあるし、欲求がたまれば自慰だってするし当たり前の事ですが、私は人一倍性欲が強く、今回の目標である「禁欲」が出来ず悩んでいます。
最後になりますが、鈴木さんの所に手紙を書いて来る人達や、依存症から回復して行った人達はどういうふうにして回復して行ったのですか? また回復するにはどういう事に気をつけ、どのような生活をして行けば良いのか、良きアドバイスを頂けたら幸いです。
それでは、また手紙を書きます。
            
            平成22年9月20日   K
追伸
   掲示板に公開する匿名を教えて下さい。

Date: 2010/09/27/19:34:46 No.562