収監者との文通 Aさんへの10/27付手紙のパート2 H2610/30
- 2014.10.30
- Aさん ギャンブル
10/27付:パート~2
A様
前略
Aさん、改めまして今日は。27日付の手紙がもう届いていると思いますが、公認会計士試験についてもう少し書いてみたいと思い、先日のの続編のパート~2を送ります。
私はこの試験のスタートラインにすら立った事の無い全くの門外漢なのですが、先日の手紙を投函後に別紙⑥~⑧を改めて読み直してみての、私(門外漢)なりの感想のようなものを書いてみたいと思います。
◎:別紙⑥~⑧のインタビュアーI先生は「公認会計士試験・非常識合格法」という著書を書かれていますが、その「非常識」の一つが、簿記3~1級をしっかり勉強して公認会計士試験の基礎固めをする事のようです。一見当たり前で常識的な事のように思えるのですが、実はここが不十分な受験生が多いので、それが普通=常識と考えると簿記3~1級を重視する方が非常識となるという話のようですね。I先生の話では、公認会計士の勉強を2年やっていても、その基礎である簿記1級に合格していない人が少なくないそうです。なので簿記1級に合格すれば、それだけ公認会計士試験合格への道が大きく開けて来るし、その前に受験勉強も効率的に進められるのではないかと思います。その点、刑務所内での独学で簿記3⇒2級と合格し、更に1級を目指して努力されているAさんは着実に一歩一歩の道を歩んでいるように思います。Iさんは高卒で一発合格して全国の受験生を励ましていますが、Aさんが合格すれば「私は刑務所内での独学から始めました」と言って、「高卒の」Iさん以上に受験生を励ますのではと思いました。 ただ、その為にも刑務所とは完全に縁を切っておくことが大前提ですよね。
◎:次に、非常識合格法の一つに論述問題を解く練習法として、スピーチ法というのがあるそうですが、門外漢の私なりに成る程と思いました。何故そう思うのかと言えば:例えば、断酒会の例会で参加者がそれぞれの酒害体験を話すのですが、それはもちろん原稿を準備して話すわけではありません。原稿などなくても自分の体験を思い出して自然に体験談を語れるわけです。そんな会の中で私は機関誌を担当している関係で、よく会員やその家族の人に機関誌の原稿を依頼することがあるのですが、その際に、「例会で話している事をそのままペンで原稿用紙に書けば良いんだよ」と言うのですが、それが中々難しいようで原稿募集もけっこうエネルギーを要しています。ここで愚痴をこぼそうというわけではなく、何を言いたいのかと言えば、人間の脳というのは「書く」より「話す」方が得意なように出来ているらしいという事です。そこで論述試験の答案を書く前に先ずスピーチ、つまり、今まで勉強した内容を声に出して話す事で論旨をまとめ、(出所後は)それを録音しておき、後からそれを聴きながらペンで文章化する練習を重ね、慣れてきたら頭の中で話しながら書けるようにすれば試験会場でもスムーズに論述回答を書けるようになるのではないかと思います。私もこの文通の仕事をしながら、目の前に相手がいて手紙の内容を話し言葉で伝えられればどんなに楽かと日々感じているのですが、Aさんはどう思いますjか?
◎:それと、I氏の「根拠のない自信」という話も分かるように思います。それは過去に対する自信というより未来に対する自信なのだと思います。つまり、この方法で、このテンポで、○年勉強すれば必ず合格できるという確信なのだと思います。
私の過去の体験を話せば:私は高3の春から、NHKのラジオ「ドイツ語入門」という番組で一人で勝手にドイツ語の勉強を始め、翌春の大学入試で文学部独文学科をドイツ語で受験し、第2志望校ながら合格する事ができました。あの時、過去からの自信は全くありませんでした。とにかく、高3春のゼロからのスタートでドイツ語のA,B,C-つまり、アー・ベー・ツエーから始めたわけですから、それ以前の過去を振り返ったら自信など持ちたくても持ちようがなかったわけです。当時の私の頭の中にあったのは、とにかく大学に入れれば良いな、ゲーテ、シラー、アインシュタイン、マルクス・・・等々の何でも良いからドイツ語の原書を読めるようになれば良いなという憧れのような思いだけでした。あの時の受験勉強の1年は楽しかった青春の1ページとして今でも脳裏に残っています。
又、アルコール依存症の診断を受け、通院治療をはじめた頃、大石に二人の患者出身の職員が居ました。それを目にした私は自分も病気を克服して仲間の力になれる仕事が出来るようになれば良いなと思いました。でも昨日まで毎日一升酒を飲んでいた身を考えると二人の職員のようになれる自信は全くありませんでした。ですから今振り返れば、やはり前を見て一歩一歩歩み続けることの大事さを痛感しています。
◎:I氏のインタビュー最後の話も印象的でした。「合格を最優先に考えると、旅行したい、友達と遊びたい、もっと寝ていたいといった様々な思いを犠牲にし、我慢しなければならなかった」と述べていますが、これは合格の歓びを考えるとどんな楽しみも脇に置けるという思いだったのだと思います。Aさんの場合には、合格に向けてバカラや窃盗をシャッタアウトして前に進んで欲しいと思います。
それでは、これにて、パートー2を終わりにします。横浜もここに来て急に寒くなって来ました。将棋や卓球大会で存分に活躍できるよう体に気をつけてお過ごし下さい。
草々 平成26年10月30日 大石クリニック相談員 鈴木達也
-
前の記事
収監者との文通 Aさんとの往復書簡 H26/10/27 2014.10.27
-
次の記事
頑張ったで賞 2014.10.30