収監者との文通

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収監者との文通

Eさんからの手紙

大石クリニック相談員 鈴木達也様

新年明けましておめでとうございます。
新しい1年が始まり今年の目標として「仮釈で出所する」と「なりたい自分に向けて努力する」としました。「なりたい自分に向けて努力する」は自分の人生の目標に対して努力すれば目標達成と同時に再犯防止に役立つと思ったからです。今はスタートラインに立っていないと思うし、他の人よりも何倍も努力しなければ目標はもちろん資格すら取得するのは難しいとおもっています。ですが、これが自分の決めた道として走って行きたいと思います。
「仮釈で出所する」については、被害者の感情を考えると家に戻ってはいけないと思い、住まいについては保護会に新生しています。ですが、今日まで何も連絡が無いので焦っているところです。言った先々で申請していましたし、こちらでも提出しました。時間がかかるということを知っていますが、あまり時間が無い事もありますし、
自分が思い描いていた通りにいかないのはやはり嫌なものがあります。前の施設では約1年半放ったらかしにされていた?と思うと、何の為に新生したのかとやり方に疑問がの小手しまいます。気長に待つ事もだいじだと思いますが、やはり不満は生まれています。仕方がないと言われればそれまでなのですが・・・早く受け入れ先が決まってほしいと思っています。

さて、不器用を利用してみようとのお手紙でしたが、不器用とは欠点だと思っていましたが、それを逆手に取って利用する。この発想は自分の中には無い考え方だったので大変ビックリしております。物事は良い物は良い、悪い物は悪いと思っていて、不器用は悪い方に分類されると思っていたので、柔軟な発想で良い面にもなるとは思っていませんでした。もう少し考え方を柔らかくしないといけないと思いました。自分も一つの事しか考えられない人間です。仕事上においてもアレコレ考えると二つの事ごちゃまぜになり混乱したり、カン違をしてい悪い結果しか出ませんでした。しかも一つ一つこなしても一つ目が中途半端なまま二つ目に取りかかってしまったり、二つ目を忘れてしまったりします。でも、不器用なら一度に二つの事をやろうとせず、一つ目を終わってから次に取り組むという事をやれば仕事においても、思考においても整理されて効率が良くなるし、理解も深まるものと思います。社会復帰したらこの不器用さを発揮?して生活して行けたら良いなと思うようになりました。まだまだ不器用になり切れませんが、目指して行こうと思います。
新しい年が明け、仮釈にしろ満期にしろ社会復帰する年となりました。色々と不満も不安もありますし、再犯をしないという自信もあまりありません。その為にもクリニックへの通院・治療が大事な事と感じているので出所後はクリニックにお伺いしたいとお思っています。本年も楽しい文通を通して良きアドバイスをよろしくお願い致します。
またお願いしたい事があるのですが、宜しいでしょうか? 『HOW TO 生活保護』という本があるのですが、出版社、著者、価格を教えてもらってよろしいでしょうか? 保護会が決まらなかった場合生活保護受けたいと考えているのですが、種類や手続きの仕方など分からないため勉強したいと思ったので調べて頂きたいのでよろしくお願い致します。

まだまだ寒い日が続くと思います。くれぐれもお体に注意してお過ごし下さい。自分も風邪などひかないよう十分注意したいと思います。お手紙お待ちしています。
    
1月2日 E

Date: 2014/01/12/16:07:19 No.1153

Re:収監者との文通

Eさんへの返書

E様

 明けましておめでとうございます。

人生の再出発に向け心新たに新年をお迎えのことと思います。文通から通院に向け希望に満ちたこの1年の道を歩まれるよう願っています。

さて、1月2日付のお手紙11日に届き、出所に向けて新しい人生を目指す文面を嬉しく拝読しました。
新年の目標は「仮釈で出所する」と「なりたい自分に向けて努力する」との事ですが、仮釈の件で保護会の関係が先行き不透明でお困りのようですね。Eさんの場合、出所後の生活を考えると、・大石通院、・仕事、
・資格の勉強が生活の3本柱になると思うのですが、それを前提にしての居住地を考えると、やはり大石への通院可能圏内(横浜市内、又はその近郊)となるのではないでしょうか? しかし保護会を通しての出所となるとやはり自由な居住地選びができず、横浜からの遠隔地になる可能性の方がずっと高くなるように思います。そこで、一日も早く塀の外に出たいと切実に思うお気持ちは本当によ~~く分かるのですが、満期までの期間は長い一生から考えればごく短い月日と割り切って、最後は満期出所をして、出所したその足で大石に直行するのがベストではないかなと思います。とにかく大石に来院さえすれば、その日の晩の宿泊部屋から当面の居住地、治療方針、仕事、生活保護等々の全ての問題の相談に乗らせて頂きますので、その点は大船に乗ったつもりで安心して頂いて結構です。

「不器用」の件についてですが、自分の不器用を認めて一つ一つの問題や仕事を順番に進めて混乱や勘違いのないようにしたいとの文面に、Eさんの今後の人生街道に焦りのない着実な歩みを期待したいなと思いました。そして、もう一つ言える事は、犯罪行為以外の事を行っている時には同時に犯罪行為を行えないという不器用の力も再犯防止に活用できるわけです。例えば、「なりたい自分になる」努力(例えば資格の勉強)をしながら同時に犯罪は起こせませんよね。依存症治療の中に「輪ゴム&フラッシュカード併用作戦」というのがあります。これは、犯罪に走りそうになり、「ヤバイ !! 」と思ったその瞬間にあらかじめ手首に嵌めておいたワゴムをパッチンと弾いて我にかえり、次にポケットからフラッシュカードなる物を取り出してその表と裏を読むわけです。その表には「ヤバイと思った時は?」と書かれています。それを裏返すと、・家に帰ってー資格の勉強をする/読書をする/音楽を聴く ・仲間に電話をして辛い気持ちを話す ・自助グループに行く・・・等々と書かれており、それが一刻も早く危険な場所から離れて、犯罪を犯さないための別の事に走る力となります。これにより、二つの事を同時進行できないという不器用という能力?が発揮されて犯罪をシャッタアウトできるわけです。

ご要望の本「HOW TO 生活保護」については、ネット検索したものを下に添付します。

横浜でも本当に寒い毎日が続いています。冬将軍に負けないようお体を大事にして頑張って下さい。

            平成26年1月13日
            大石クリニック 鈴木達也

Date: 2014/01/12/16:14:34 No.1154