収監者との文通

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収監者との文通

Eさんからの手紙

大石クリニックHPトップページ参照

大石クリニック相談員 鈴木達也様
 お手紙、ありがとうございました。自分のわがままに答えていただき真にありがとうございました。未だ走り出してはいませんが、短距離ではなく長距離走のように、自分のペースで合格できるまで頑張って行きたいと思います。
 発表したセルフマネジメントプランですが、まず『良かった所』として「自分を良くする筝がたくさん書いてある」、「対処法が多い。いくつも作ってあるのは大切」、「目標に対する説明文がある」、「リフレッシュ・リラックス方法がたくさんある」と。被る意見もありましたが、自分なりに考えた割に、少しホッとしました。
 しかし、『こうすればもっと良くなる所』として、「目標を考え直した方が良い」と否定する意見がありました。他にも「寄付するだけではダメなのか」、「施設で働きたいのか」、「裏ロDVDはどうするのか」などと言われました。それに対しては、寄付するのも良いが、開設するのが目標と考えているので、何か違うなと感じています。働く事は資格を取得するのに必要な事と思うので、しばらくの間は、仕事の嫌な所も、欲望も我慢して、他の所で発散したいと思います。裏ロリDVDは今もかわる物はありませんし、入手する事も困難になっていると思います。(持ってるだけで捕まりますし・・・) 意見した人は「厳しい環境に置いて自分を追い込むなら、ガンガン見たら良い、ただしリスクなら止めた方が良い」と言っていました。
 今回の発表で何となく揺らいでしまう自分(本当にこれで良かったのか、実現可能なのか、もう一つの方が良かったのではと思う自分)がいる事も確かです。外部から来ていた臨床心理士の先生から「子供を守りたい、癒したいというのは大人の考え、それは立派な事だけど、自身が子供から元気をもらう、癒されたいというのは子供の考え、それが混乱・矛盾した時、加害に走る危険がある。だから、恋愛結婚して子供を育てる事によって大人の考えが強くなるものだから、守る人、家庭を築く事も考えに入れておいて下さい」と仰っていました。恋愛は自分の中でも比重があると考えていますが、自分は理想が高く、女性と話す機会が少なく、結婚願望もなかったので少し難しいと考えています。
 矛盾と言えば、お手紙の中に『誰でも心の中に二つの要素を抱えて居る」とありましたが、自分の中にも「寂しがり屋の、一人ぼっち好き」という矛盾する要素があります。人と関われない(周りの人は楽しく話しているのに、一人だけ蚊帳の外と感じる)というのがあるのに、一人で本を読んでいるのは苦ではない。でも、あまり関わってくれないと寂しさを感じる。又、親しくなった人が絡みに来ると素っ気ない態度をとったり、つれない感じを出してしまうという、少し変わったものを持っているなと思います。
 
 今月に入り一気に寒くなって来て、もうすぐ冬だなと感じる日が多くなると思います。くれぐれも風邪などひかぬようお身体に気をつけてお過ごし下さい。お手紙お待ちしております。  
              11月9日  E

Date: 2013/11/19/14:45:25 No.1068

Re:収監者との文通

Eさんへの返書

E様
前略
 11月9日付のお手紙14日に届きました。いつも有り難うございます。
 お手紙の冒頭で、保育士の合格に向けて、短距離でなく長距離走のように自分のペースで頑張って行きたいと書かれていますが、私もそれで良いと思います。
 セルフマネージメントプランの発表に対して、励ましになる意見と否定的な意見の両方があったそうですが、後者の否定的な意見も克服すべき問題点を提起してくれていると考えれば、その問題への前進的な答えによって勉強への決意が更に強くなるという意味で有り難い意見だと言えるでしょう。
 でも、保育士を目指す決意の一方で、「本当に保育士を目指して良いのだろうか?実現可能なのか?」と揺れる自分がいるのも確かだとお手紙に書かれています。そういう自分の中の矛盾をどうすれば良いのか?多少なりとも参考になればと思い、私なりに考えてみたいと思います。
 
 実は、私は学生時代に「雄弁部」というサークルに所属していました。雄弁部とは平たく言えば弁論部ですが、入部直後に先輩から演説原稿の書き方、つまり、聴衆への説得力のある論旨の組み立て方を教わりました。それは、演説原稿のみならず、解決したい問題にどう取り組めば道が開けるのかを考える為の方法論としても役立つものと思います。先輩が先ず口にしたのは「起・承・転・結」という漢詩に由来する言葉でした。

<保育士への起承転結>
1)「起」とは;問題提起です。Eさんの 場合、『保育士への勉強をして、資格を  取りたい』ですね。
2)「承」とは;提起した問題についての現状,課題です。Eさんの場合には、『保育士の勉強を支持する意見と同時に否定的な意見もあり、その中で動揺する自分もいる』ですね。
3)「転」とは;2)の課題の解決への思考の転回、解決法です。Eさんの場合、『支持する意見から勇気と励ましを受けつつ、否定的意見への前進的な答えによって、挫折のない合格への道を考える」事でしょう。
4)「結」は;結論です。3)で保育士への道に確信を持てれば、動揺を克服して合格に向けての強い決意を持てるでしょう。 

以上が、私の考える保育士への「起承転結」なのですが、特にポイントとなるのは、3)の否定的意見への前進的な答えだと思います。その中でも最も重視すべきは、保育士への歩みの足をひっぱる重大な危険性を秘めている依存症という病気とどう関わるか?の問題でしょう。前の手紙にも書きましたが、保育士への道と依存症治療は表裏一体の関係にあると言えるでしょう。又は、車の両輪と言っても良いでしょう。つまり、どちらか一方が欠けても他方の存在意義がなくなるわけです。ですから、保育士の勉強も依存症治療の一環と位置づけて頂ければと思います。依存症の回復なくして保育士はあり得ないわけですので、保育士になる為の依存症治療と考えれば、保育士への勉強が依存症治療への、動機・モチベーションを強く、大きくすることでしょう。治療はまた、臨床心理士の先生が仰っていた『子供との関係から生じ得る混乱・矛盾による加害の危険性』を防止する為にも不可欠だと思います。
 又その一方で、仮に否定的意見に決定的に克服不能なものがあれば、保育士を断念して、別の意義ある人生を選ぶのも勇気ある決断と言えるでしょう。

 今回は、保育士を目指す思考のプログラムみたいな事を私なりに書きましたが、幾分なりとも参考になるでしょうか? なるほどと思われましたら、1)~4)を具体化してノートに整理すれば、頭の整理や、動揺の克服も容易になると思います。

 だんだん寒くなり、吹く風にも冬の冷たさを感じるようになって来ました。どうぞ悪い風邪などひかないように、お体にはくれぐれもご注意ください。次のお便りを楽しみに、今日はこれにて失礼します。
                           草々
              平成25年11月20日
               大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2013/11/19/14:59:41 No.1069