Cさんからの手紙

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Cさんからの手紙

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及び 当掲示板No.555~Cさんとの文通 参照

大石クリニック相談員 鈴木達也様
前略
 平成24年8月13日付のお手紙、嬉しく拝読しました。
 さて、お手紙の内容は分かりましたが、私も少々言葉の足りないところがあったと思います。それと言いますのは、「錨の綱」のところで私の 「エロ本」 「アダルトDVD」 などの廃棄処分を挙げましたが、その後の具体的で継続的な再犯防止行動が欠けていたと思います。
 そこで、私の場合は 「輪ゴムを弾いてくれる背後霊はウオークマン」と書きました。その後の具体的で継続して再犯を防ぐ「錨の綱」とは、出所後大石の教育ミーテイングに参加するのはもちろんですが、このミーテイングに参加している他の方々の「錨の綱」である「ウオーキング」、「CDで音楽を聴く」、「読書」、「妻への償いのつもりで家事を分担している」、「○○資格試験に挑戦する」・・・etcに学んで、私自身も仏教学・天文学の「読書」・「仏教・天文学の資格試験に挑戦する」ことで性再犯をする暇をなくす事が「錨の綱」になるのではないかと思います。母校の小学生への天文話もそうですが、その後の事を書き足りなかったと思います。その他には、富士山のボランテイア清掃なども考えたことがあります。その他に良い事が思い浮かんだら、その時に追加しますので、その際には宜しくお願いします。
 仏教話に次のような話があります。つまり、原始仏典には、釈尊(釈迦)の教えを聞いて弟子達が目覚めるという場面が必ず出て来る次のような定型句があります。   
 「素晴らしい、君、ゴータマ(釈尊)さんよ、素晴らしい。君、ゴータマさんよ。あたかも、君、ゴータマさんよ、倒れた者を起こすように、あるいは覆われたものを開いてやるように、あるいは、道に迷った者に道を示すように、あるいは、暗闇に油の燈し火をかかげて眼ある人が色や形をみるように、そのように君、ゴータマさんは色々な手立てによって法(真理)を明らかにされました」(サンユッタ・ニカーヤ第一巻・161頁『原始仏典』及び中公新書/植木雅俊著・「仏教 本当の教えインド・中国・日本の理解と誤解」・60頁より)
 この本を購入して読んだ時、私は次のように思わされました。
釈尊の教えを聞いて、⇒大石院長・相談員鈴木さんの教えを聞いて、
弟子達が目覚める⇒大石患者達が目覚める。
倒れた者を起こすように、⇒人生の内で何度も刑務所に行って倒れた相馬を起こすように、
あるいは覆われたものを開いてやるように、⇒あるいは犯罪に覆われたものを再犯しないように開いてやるように、
あるいは道に迷った者に道を示すように、⇒あるいは人生の中で犯罪という法律を破った道に迷う者を正しい道に誘導するように、
或いは暗闇に油の燈し火をかかげて眼ある人が色や形を見るように、
   ⇒あるいは私の暗い性格に燈し火をかかげて眼ある私に良い行動、悪い行動を見分けられるように、
教え諭す大石院長・鈴木さんが菩薩・仏のようであると思わされました。

 次に「天文講話」です。今回は、地球の半径はどのくらいで、太陽系の他の惑星との比較と題してお話をしたいと思います。
 我々の住む地球の半径は、地球が完全な真ん丸でないため、南北の回転地軸半径と、東西の赤道半径の距離が違うのです。それは「天文年鑑」190~192頁の191頁・7「地球に関するデータ」の所を見て頂くとお分かりかと思います。
南北半径=6356キロ755メートルと
赤道半径=6378キロ140メートル  
赤道全周=40075キロ40メートル
とありますように、南北を軸として回転しているため、赤道付近は遠心力によって、少々膨らむのです。その差は、世界一高い山エベレスト山の2倍以上あるのです。エベレストは8848メートルです。差は約20キロです。又、赤道全周は2πrで計算できますので、2×3,14×赤道半径・6378=40075キロになります。
 太陽系の惑星の赤道半径は、192頁の 10「惑星に関するデータ」に半径数字が載っています。それを見ますと、惑星で一番大きいのは木星ということになりますね。木星は地球の11倍の大きさです。太陽は地球の109倍あり、(太陽までの距離は)地球を1万5千個並べて、やっと届くと言われています。光の速さで8分20秒もかかるのです。我々のキロ数にすると1億5千万キロ(約)です。この1億5千万キロが、191頁の6「惑星軌道要素・周期の表の軌道長半径・AUの地球の欄を見ると1.00000となっています。即ち、1AU=1億5千万キロであり、彗星と金星は1AUなく、水星の軌道長半径は、1億5千万÷0.37810になります。今回は惑星の半径比較なので、192ページ赤道半径を比較して下さい。9「月に関するデータ」(191頁)によると、月の半径は1738.092キロメートルとされています。
 これらの色々なデータを比較すると、その惑星の事柄を知ることができます。このページに書かれている事は非常に難しいので一歩一歩学ぶ必要が」あります。惑星の大きさと距離を知るだけで楽しいと思います。次回の天文講話は、「地球から一番近い天体、月について」と題してお話します。

 少々話が長くなりまして、ごめんなさい。今月はこれで失礼します。 残暑はもう少しでしょうけれど、体に気をつけて下さい。

        草々
             平成24年9月6日 C

注)軌道長半径・AU=太陽や惑星を周回する天体がとる楕円軌道の長半径(長軸の半分):太陽と地球の間の最長距離/鈴木

↓ 返書 

Date: 2012/09/17/19:13:02 No.819

Re:収監者との文通

Cさんへの返書

C様
前略
 9月6日付の定期便、15日に届きました。
今回は、たまたまの偶然ですが、6人の方からほぼ同時に手紙が届き、着いた順に一人ずつ返事を書いています。 皆さん、それぞれ全くの他人なのですが、塀の中での文通による依存症治療を真剣に実行しているという面では共通しており、返事を書く側の私としても、手紙を読み、書きながら、自然と襟を正さざるを得ない思いになり、それが私の力にもなっています。

 再犯防止の為の方法も色々と具体化されてきましたね。電車内でのウオークマンによる警報発信を背後霊としての輪ゴム弾き作戦!! これでで理性を呼び戻して、 「(悪い)思考ストップ法」が可能になります。それに加えて、「錨の綱」としての、大石教育ミーテイングへの参加、母校での天文話、仏教・天文学に関する読書と資格試験挑戦・・・等々、過去の出所後とは異なる再犯防止法が練られています。以前の出所時の再犯防止法は「もう、やらない」との決意だけだったのではないかと思います。それに比べると格段の違いがあると思います。でも、これで完璧、100%%大丈夫というわけではありません。自分では「錨の綱」をしっかり降ろしていたつもりでも、時として起こり得るストレスやうつ状態からの逃避を求めて、気づかぬ内に危険区域に漂流し、気がついたら性的問題行動や性犯罪に走っていたという事も有り得る事です。それをリラプスと言います。それを防ぐ為に治療・回復へのモチべ-ション(動機)の堅持が必要になります。
≪今月の問答≫
そこで今月はモチベーション堅持に向けての質問をします。
①:再犯を繰り返した場合、イ)どんな良い事がありますか? ロ)どんな悪い事がありますか?
②:再犯を防止し続けた場合、イ)どんな良い事がありますか? ロ)どんな悪い事がありますか?
③:再犯を繰り返した場合、10年後、20年後の自分はどんな自分になっていると思いますか?
④:再犯を防止し続けたた場合、10年後、20年後の自分はどんな自分になっていると思いますか?
(質問量が多いので、③、④は来月・10月の問答にして、お答えは来月でも良いです)

 仏教話を拝読して、驚き、恐縮しました。何と !、なんと !!、大石院長と私を並べて、お釈迦様や菩薩に例えて頂けるとは !!! 院長は兎に角としても、私の場合光栄過ぎると言うか、筈かし過ぎるというか、何とも複雑な思いがしています。ただ一つだけ言える事は、治療によって依存症から回復できるか、否かの最終的な鍵は、患者さんその人が握っているということです。その鍵は私はもちろん院長も持っておらず、患者さんの手中に握られています。病院や医師、スタッフはあくまでも治療援助者であり、お釈迦様のような神通力(この場合,仏通力ろ言うべきでしょうか?)は持っていません。なぜかと言えば、治療を継続するか否かの最終的な選択は患者さんにしかできないからです。

  天文講話、よく分かりました。「軌道長半径・AU」という専門用語の意味が最初はよく分かりませんでしたが、ネット辞書で調べて理解できました。又、地球が南北の軸で西から東へと自転しており、その遠心力によって赤道半径が膨張しているとの話もナルホドと納得できましたが、それによって生じる差:赤道半径-南北半径が約22キロでエベレストの2倍以上の差があるとは !! ちょっと驚きでした。地球ってボールのように真ん丸の球体だとばかり思っていたのですが、それは素人感覚で、地球ってちょっと歪(いびつ)な球体なんですね。地軸から見るとちょっとデブで、赤道に対して水平になって見るとちょっとノッポ(笑)なんですね。
 今回の天文講話でも感じたのですが、何事につけ素人にとっては知っているようで知らない話が多いものですね。だから何事によれ謙虚になる事の大切さを感じました。そう思いつつ、私も大石で週に3回、デイケア、外来の患者さんとのミーテイングを担当しているのですが、次回のミーテイングでは、今回の天文講話も紹介しながら、依存症についての「知っていたようで知らなかった話」を患者さん達に語ってもらって、勉強する事の大切さを訴えてみようかと思います。

 それでは、今回はこれにて失礼します。今年の夏も ちょっと歪・いびつで、9月下旬まで30数度の真夏が喰いこむようです。そんな自然の歪に負けないよう、心身両面をご自愛ください。いずれにせよ涼しい秋はもう目前ですから、もう一息、最後の夏を乗り越えましょう。

                       草々
         平成24年9月18日
          大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/09/17/19:47:47 No.820