収監者との文通:Aさんとの往復書簡 H27/8/20
- 2016.03.05
- はばたき文通
<A⇒鈴木>
前略
鈴木さん、お手紙いつも有り難うございます。本当はもう少し早く手紙を出したかったのですが、こちらがお盆休みの関係で18日の提出になってしまいました。申し訳ありません。
さて、条件反射制御法なのですが、本能を直接治療する様なものなのですね。確かに、今までの私は捕まって刑務所に入る度に「もう悪い事は止めよう」、「バカラも止めよう」と思っていました。刑務所に居る間は「もう2度と刑務所には来ない」と思っていても、それは本能でなく、根の浅い理性だったわけですね。これからは、浅い理性ではなく、深い理性、つまり本能で「もう刑務所には来ない」、「バカラはしない」、「窃盗はしない」と思えるようになれば良いわけですね。その為の条件反射制御法なんですね。何だか胸がワクワクして来ます。本当にこれを最後の刑務所にしたいです。私も43歳です。もし次に同じような窃盗をして刑務所に入ると、出所する頃は50の少し前になってしまいます。
27歳で初めて刑務所に入ってから既に16年近く経っています。その16年の間に6回も刑務所に入ってしまい、外に居た期間は約1年8ヶ月程です。「一体私は何をしているのやら・・・」過去を振り返ると、こういう風に思う自分と、「捕まってばかりだけど、短い期間外に居てバカラも楽しく色々と遊び楽しかったな」と思う自分もいます。でも先の事を考える時はいつも、刑務所にはもう来たくないと思うのです。なのに同じような事を何度もしてしまいました。それも浅い理性で考え反省していた為で、本能には届いていなかったのですね。これからは、本能に届く治療で刑務所とは無縁の生活をして行きます。これも「根拠のない自信」で乗り越えて行きます。条件反射制御法の本も10月中旬頃に届くと思うので、それも少しでも勉強しておきます。
宗教の方も心が落ち着く様になったし、禅語も自分を変えるきっかけにもなって来てるし、一歩一歩前に進んでいる気がします。後はお店などに入った時にどうしても防犯カメラの位置や、お金の有りそうな場所を探してしまう事や、出入り口が簡単に開くかなどを観察してしまう事などを止められるようになれば完璧です。でも、それを逆手にとって、個人的に防犯コンサルタントを副業にしても良いかななんて思ったりもしています。まぁ、これはほんの思いつきですが、こういう癖も治せれば良いなと思っています。
まだ、暑さが続きます。熱中症には気をつけて、お身体を御自愛下さい。手紙はまた書きます。では失礼します。
草々
平成27年8月13日 A
追伸
そう言えば、簿記試験の方はその後合格したのでしょうか?合格していると私も嬉しいです。もし合格していなくても諦めず続けて欲しいです。
PCの件ですが、現物を見ていないので何が原因か分かりませんが、いくつか、あれかなと思うのはあります。お使いのOSはウインドウズXPですか、それとも7,8ですかそれによっても変わります。何かOSに関わる事でアップデート(更新)などしてないですか。もししていたとしたら、OSの部分だけでインターネットエクスプローラーに関する部分は更新せず、JAVAなどが上手く作動せず動画が見れなくなってしまった。
次に思い当たるのは、Windous10が出て各サイトがそれに対応した為に古いインターネットエクスプローラーで見ることができなくなってしまった。あとはウイルスに感染してしまったなどの可能性もあります。
もしまだ治っていないのならPCメーカーのサポートセンターに連絡するか、ネット回線会社のサポートセンターに連絡することをお勧めします。あまり力になれず申し訳ありません。早く治ると良いですね。
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<鈴木⇒A>
A様
前略
Aさん、こんにちは。猛暑・酷暑も多少は和らいで来たかな?との感のする港町横浜ですが、そんな折りの8/20にお手紙届きました。お盆休みの関係で発信が遅れたと冒頭で書かれていますが、受け取った私の方では「おっ、今回は早いな!」と思ったくらいなので、全く気にしなくて良いんですよ。
それより、「条件反射制御」法について、再犯防止に向けてのワクワクするような明るい希望を持って頂けたようで大変嬉しく思います。別に私が研究開発したわけではないのですが(笑)、それでも、こういう新しい治療法が世に出て、病気で苦しんでいる人達に希望の灯火となるのは嬉しい限りです。
第1ステージの「キーワードアクション」(おまじない)、続けていますか?これは第2から第4ステージまで並行して続ける訓練で、この療法の基本というか、土台となる非常に大事なステージですので、10月に入手できるという本も読みながら、しっかり基礎固めをして頂ければと思います。
この第1ステージで、「おまじない」(=パブロフの犬のベルの音)をスイッチとして作られる病的欲求に抵抗する条件反射回路が、第2(擬似)ステージ、第3(作文)ステージで訓練され、鍛えられて、本能からの病的欲求に打ち勝つ力の源泉となるわけですので、第1ステージでの条件反射回路が作られないか、中途半端に終わっていたらこの治療は全くもって前に進まないわけですので、まずは最初の関門としての第1ステージでしっかり基礎固めをして欲しいと思います。特に、今の生活環境では実際にギャンブル場に身をおいて訓練するという第2(擬似)ステージは不可能で、その意味でも焦る必要は全くありませんので、出所までは、先ずは第1ステージで土台作りをといったイメージで良いかと思います。
あと、お手紙で、「お店などに入った時にどうしても防犯カメラの位置や、お金の有りそうな場所を探してしまう事や、出入り口が簡単に開くかなどを観察してしまう事などを止められるようになれば完璧です」と書かれていますが、こういう犯罪の引き金となる心の動きを「認知行動療法」では「認知の歪み」とか、「認知の癖」などと言われており、これを治療するには「条件反射制御」法と並行しての「認知行動療法」も必要かと思います。それに自助グループでのミーテイングや仏教の実践などを併用して行く事で完璧というか、最大限の治療が可能になるのだろうと思います。
あと、PCの不具合についての色々なヒントを有り難うございます。何せもう10年近く使っているパソコンなので、もう時代について行けなくなっているのかも知れません。頂いたヒントなども参考にしながら色々と調べてみたいと思います。早速のご返事有り難うございました。
簿記3級に合格したのを機に1類に昇類し次の2級合格を目指している文通者(Mさん)ですが、本人の話によれば、前回の2級試験本番では緊張してしまい、頭が真っ白になってしまったのが不合格の原因だったそうです。部屋に戻って冷静に落ち着いて問題を解いてみたら合格レベルには達しているので、Aさんに頂いた助言なども活かしながら次回こそ合格を目指したいとの事です。
夏将軍の猛威もそろそろ峠を越しそうで、今日の横浜は9月上旬の気温だそうですが、それでも残暑はもう暫く続き、急に暑さがぶり返す日もあると思いますので、お互いにまだまだ油断なく、熱中症その他に気をつけて行きたいですね。では次回のお手紙を楽しみに今日はこれにて失礼します。
草々
平成27年8月21日記
大石クリニック相談員鈴木達也
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