収監者との文通:Mさんとの往復書簡 H27/9/9

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<M⇒鈴木>
前略
 鈴木さん、お手紙ありがとうございます。こちらはお盆休みの連休があり、5日間程の休みに入りました。が、こちらは炊場なので交代で休みました。何せ今は炊場に人が少なく本当にギリギリの人数で回しているので大変です。しかも夏のこの暑さ、皆でヒイヒイ言いながら汗かき働いています。
 そんな中でも私は部屋などで運動時間には筋トレ、その他の時間にはソロバンなどの勉強をして頭も体も鍛えています。体は一回り大きいです。勉強も少しずつ前進しています。簿記は休止中ですが、まずソロバンが楽しく、指を動かしています。簿記が行き詰まって来て、合間のソロバンで良いリラックスとなり始めたのですが、意外にもソロバンが楽しくなり多少ムキになりながら自分と競って、1秒でも速く正確にできるようにやっています。簿記は2月に試験なので暑さが収まって来たらまた始めようと思っています。それでは駄目かも知れませんが・・・まぁ焦らず日々勉強です。
 今、仕事が本当に大変です。人員が少ないのが原因ですが、こればかりはどうにもならないので、何とか皆で力を合わせてやっている感じで大変です。しかも暑いです。ストレスも溜まるがそこは運動や筋トレで・・・ただ少々やり過ぎて作業の時疲れてしまっているのがたまに笑えるくらいです。
 生活面では寝ている時に夢を見ることがあって、40過ぎで就職ちゃんと出来るかな?とか、ちゃんと結婚して子供がつくれて、家族を持てるかな?再犯をせず普通に生活できるかな?最近そういう事ばかり思っています。その中で今日一日笑顔で過ごせただろうか?とか、ちょっと怒ってしまったかな?とか、言い過ぎてしまったことはなかったか?とか、身近かな事が出来ないと自分の夢が叶う筈が無いと思っている。昔は辛くても我慢したりしてとにかく逃げなかったが、一回投げ出してしまったら、その楽さに負けることを身につけてしまったのかメチャクチャ大変だったりした。どうにも上手く行かなくなったりしたら投げ出してしまうようになっている自分がとても怖い。そんな事を考えていると夢を見て眠れなくなっている。
 日々笑って穏やかに過ごせないと社会に復帰してもすぐには何もできないので、その辺りは時に考えながら生活しています。朝から鏡の前で笑ってみたり、一進一退ですが、心を変える練習をしています。まだまだ時間があるのでやれるだけやりつづけます。言葉使いも気をつけないと!
お盆も過ぎて暑さも一段落ですが、まだ油断しているともう一夏振り返しがありそうです。気をつけ

ましょう。どうか御大切になさって下さい。

                                        草々

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<鈴木⇒M>
M様
前略
 9月に入り横浜も少しずつ残暑も和らぎ、秋の気配がしてくる中、お手紙8日に届き嬉しく拝読しました。有り難うございます。
 
 炊場という元々が暑い作業場に7~8月の猛暑・酷暑が加わり、更に人手不足が加わり、二重・三重に大変なお仕事、本当にご苦労様でした。そんな重労働と言っても良い作業を安全に全員の協力で無事故で乗り越えられたそうで、Mさんを中心として一致団結して作業を進める様子が目に浮かぶ様な感がしています。これからも安全第一の油断のない作業で、「事故なし・怪我なし」の作業を続けて行って頂けるよう期待しています。
 
 作業以外のところでも、運動や筋トレなどで身体を鍛えつつ、簿記の勉強の合間に始めたソロバンの練習を楽しみながら進めているそうで、こちらの方も頑張ってぜひ腕を磨いて欲しいと思います。何よりも楽しみながらというのが良いですね。昔から「好きこそものの上手なれ」という諺がありますが、これは、「どんなことであっても、人は好きなものに対しては熱心に努力するので、上達が早い」という意味ですので、Mさんもソロバンを好きになり楽しんで努力することで速く上達できることでしょう。
 ですから簿記の勉強の方も前に進める事で好きになり楽しんで勉強できれば良いですね。以前簿記の勉強へのアドバイスをくれた文通者のAさんも言っていましたが、自力で回答するのが難しい問題については問題集の中の解答法を見て解き方を覚えてしまい、それを基にして類似の問題を解く練習を数多く重ねることだと思います。それが進めば合格の歓びを思い描きながらの勉強も楽しくなり、好きになり、合格に向けての勉強も進むのではないでしょうか。
  
  仕事の責任者としての重責を果たしながら、運動や筋トレで身体を鍛え、そしてソロバンや簿記の勉強を軌道にのせて行けば自然に心も充実し、顔に笑顔も浮かぶようになるでしょう。「自然に」とは別に意識しなくても気がついたらそうなっているという意味です。人間、何か嬉しい事があれば別に意識しなくても自然に歓びの形としての笑顔が顔に浮かびますよね。ですから、心の充実が自然な笑顔として顔に浮かぶようになれば良いのだと思います。

 それでは、夏から秋へと季節の変わり目ですので体調を崩さないよう油断なく注意してお過ごし下さい。今日はこれにて失礼します。

                                         草々 

平成27年9月9日 
大石クリニック相談員鈴木達也