収監者との文通:Mさんとの往復書簡 H27/5/13
- 2016.03.05
- はばたき文通
<M⇒鈴木>
前略
春がきて、桜も満開~散り行くまで見届け、とても美しく正に華やかでした。
私は桜が好きで、よく城址公園のお堀に咲いている桜を見ては感動したのを覚えています。またゴールデンウイークになり、どこも一杯でしょう。交通面とか大変そうですね。気をつけて下さい。
さて、簿記2級の件、どうもありがとうございます。とても役に立ちます。私も一からやり直すつもりで、参考書を最初から徹底的にやり直し、その後過去問10回戦分を何度も繰り返し答えている。前回解りにくかった所の貸借対照表や損益計算書も手抜かりなくやりました。私の場合、変化球問題や過去問からややずれた問題等に弱かったのでそこを修正しました。本番に弱く、何故か本番だと解けない。前回の問題も部屋だと何と+20点。って事は70点オーバーなので、もしかしたら受かっていたかも? 今回も段々と慣れて来ているので、本番を乗り越えたらきっとうまく行くだろうと思いながら勉強を続けています。アドバイスが的確でとても有り難いです。本当に嬉しく思います。とても参考になりました。これからも引き続き努力します。
一類の件は残念でしたが、私としては前回なれただけでもとても嬉しかったです。正直、なれるとは思わなかったもので・・・今回も2級に合格できればという条件付きで一類継続という事だったので残念ではあるが止むを得ない事だった。しかし最後までどうなるか分からなかったので諦めず、少し期待はしていたがやはり甘くはなかった。ただ罰を犯したり不注意で落ちた分けではないのでまた半年無事に過ごせば一類になれるかも知れませんので、このままガッカリせず、また新たに目標を持って生活したいと思います。
やはり一類は何故か気持ちが違います。常に手本になるような動作をし、生活しなくてはと思い生活している。心がけが違うのかな。二類も変わらないのですが・・・。とにかく今までのように変わらず生活して行きます。
色々と勉強したり、考えたりしていると時間はアッと言う間に過ぎてしまう。でも段々と目標に近づき達成し、また次の目標を立てそれに向かって進んで行く。そしてそれがとても私の役に立つというか、自信にもなる。一歩一歩と大きく前進して来ている。
今はとても充実した生活を送れている。運動時間には筋肉トレーニングやランニングでストレス解消になっている。と言うより、筋力がついてムキムキになってきた。私は体はとても丈夫なので、そう生んでくれた両親にとても感謝している。
話が逸れてしまったが、一つ一つ確実に前進し、例え失敗しても負けず、落ち込まず、次頑張るぞー!!と努力し続けようと想う。何でも、一回で成功も良いが、遠周りも良いものだと思います。全てが自分にとってプラスになっているのだから。
年が明けて、寒い冬を越え、簿記の試験が終わって、春が来て、もうゴールデンウイーク、早い。暖かい日が続いています。どうか、お身体大切になさって下さい。それでは、この辺で失礼します。また書きます。
草々
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<鈴木⇒M>
M様
前略
ゴールデンウイークもアッと言う間に過ぎ去って、5月もそろそろ中旬に向かう中、お手紙11日(月)に届きました。お元気で毎日を過ごされているようで、何よりと嬉しく思いながら読ませて頂きました。
Mさんも桜が好きだそうですが、本当に毎年の春に咲き誇る桜の美しさには自然の芸術といっても良いものがありますね。私も断酒して9ヶ月後にシラフの眼で見た桜の美しさに酒を飲まずに酔いしれる思いがしたのを昨日の事のように覚えています。
簿記2級、結果そのものは残念でしたが、次こそはと頑張って勉強に励んでいる様子が文面から伝わってきて、応援する側の私の方が逆に励まされる思いがする程でした。
前回の2級の勉強へのアドバイスを送ってくれた方も刑務所内での独学で簿記2級に合格した方なのですが、その方は『やるべき勉強は全てやった、この俺が落ちる分けがない』と何が何でもそう信じこんで2級の試験を受けたそうです。そしたら冷静に落ち着いて普段の勉強の時と同じような気分で受験できたそうです。「落ちる筈がない」と信じると不安がなくなり、本番でも普段通りの実力を発揮できるのでしょうね。Mさんだって部屋では+20点で合格点が取れるのですから落ちる筈がないですよね。次回はそう信じて本番に臨んでください。
一類の件ですが、確かに残念と言えば残念ですが、また改めて一類への目標ができたとの思いで、気持ちは今までと同じように周囲の模範となり、そして信頼されるように生活し、また勉強にも励んで欲しいと思います。こちらも簿記と同じで自信を持って前に進むことだと思います。
「前に進む」という意味では、ある文通者の方が手紙でこんな話をしていました。その方は高校時代にラグビー部に入っていたそうです。その頃テレビで『91歳の青春・ノーサイド北島忠治物語』というドラマを見て、北島忠治監督率いる明治大学ラグビー部の「前へ」のラグビーに感動し、それはラグビーに留まらない人生そのものに通じると思い、高校卒業後もそういう積極的な生き方をしていたつもりだったそうです。それがいつの間にやら性依存症という病気にかかり性犯罪に走るようになってから「前へ」の生き方を忘れていたことに気づき、今後は依存症治療をして「前へ」の人生を取り戻したいとの話でした。「前へ」という簡単明瞭な一言ですが、それが人生を切り拓く一つのキーワードとして大事にして欲しいなと思います。
Mさんもお手紙の中で『一つ一つ確実に前進し、例え失敗しても負けず、落ち込まず、次頑張るぞー!!と努力し続けよう』と書かれていますが、これぞ正しく上記の「前へ」の心ですのでこの気持ちを忘れずに前進の人生を送り続けて下さい。
それでは簡単ながらこの辺で失礼します。季節は清々しい新緑の季節からうっとうしい梅雨の時期へと向かいますのでお体くれぐれも御自愛ください。
草々
平成27年5月12日
大石クリニック相談員鈴木達也
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