収監者との文通  Dさんからの手紙

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収監者との文通

Dさんからの手紙

大石クリニックHPトップページ
及び 当掲示板No.555 以降Dさんとの文通参照

前略
 大石先生、鈴木先生、スタッフの皆様こんにちは。
出所が間近に迫っている中で、情けない話なのですが、昨年の8月頃39度以上の熱が出て病舎にて安静休養してしまったのですが、3月2日から又病舎にて安静休養することになってしまいました。今回は風邪ではなく、生まれて初めてなのですが凍傷(しもやけ)が酷くなって安静休養することになりました。今、自分の手や足の指は腫れて紫色に変色してしまっています。凍傷が酷くなると指が腐り、最悪、指を切断する場合もあると先生から聞きました。工場に出ていたかったのですが、最悪の事も考え、今は一日の全てをベッドの上で生活しています。この刑務所にきて2回目の安静休養となり、本当に情けないのですが、今はその悔しい思いを堪えて治す事に専念し、工場に戻れる日が来たら今まで以上に頑張っていきたいと思います。
 私は今、鈴木先生だけでなく、父親とも文通しておりますが、亡くなった母親が大切に世話をしていた花を今は父親が世話をしているとの内容の手紙を受け取りました。母親が大切にしていた花を守ってくれていると知って凄く嬉しく思いました。父親は手紙でよく、二人で趣味を持って頑張って行こうと書いてくれています。出所したら私も父親と一緒に花の世話をして行きたいと思っています。父親と同じ趣味を持って母親の為に出来る事が父親のお蔭でまた一つ増えました。
 鈴木先生と文通させて頂いた中で、Aさんという方から私宛に励ましの言葉を頂いた事がありました。ギャンブル(バカラ)依存を原因とする犯罪を繰り返し、今回で5度目の刑務所生活を送った方で、受刑生活中に簿記2級試験に合格した方です。このAさんからお手紙を頂く前は人間関係で辛かった時でした。でもAさんによって堪える事が出来、希望と勇気を持つ事が出来、自分もAさんに負けないように頑張らなくてはと思い、Aさんによってあの辛かった時を乗り越えられました。同じ依存症で悩んでいる方からの言葉は大きな力となり、本当に希望と勇気をもらいました。出所し、大石クリニックで同病の仲間の方と治療をさせて頂ける日が来た時は、Aさんに助けられたあの時の思いを忘れずに、私も仲間の方の悩みを真剣に考えてあげて、少しでもお力になれるように生きて行きたいと思います。
 今、絶対に社会復帰してみせる、そして同病の仲間の方に勇気と希望を与えられる人間になるんだ、世の為・人の為に今度こそ生きて行くんだと、出所を間近にして自分に毎日言い聞かせています。私は二度と人の為に何か出来る人間にはなれないと思っていました。社会復帰は出来ないと思っていました。しかし、この様な強い気持ちを持ってここを出所できる日を迎える事が出来るのは、本当に沢山の人の支えがあったからだと思います。この事を絶対に忘れず、この先も頑張って行きたいと思います。
 鈴木先生、間もなく出所となり、この手紙が鈴木先生に出せる最後の手紙になると思います。今まで、お忙しい中私の為に有難うございました。出所し、これから大石クリニックで本格的な治療を行って行きますが、その時はまたよろしくお願い致します。今まで本当に有難うございました。
 お身体をご自愛下さい。では失礼致します。
                     草々
              平成24年2月8日
                       D
↓返書

Date: 2012/02/17/16:01:06 No.722

Re:収監者との文通

Dさんへの返書

D様

前略
 こんにちは、2月8日付のお手紙受け取りました。有難うございます。
 前回さし上げた手紙で、「これが刑務所宛の最後の手紙になるかも知れませんね」と書きましたが、まだ出所に間に合いそうなので今回も返書を書くことにしました。
 
 まずは 手足の指の凍傷ですが、その後いかがですか? 間違っても最悪のケースにならないよう祈っています。決して無理はせず、ゆっくり静養して下さいね。
アルコールの自助グループ・AAのミーテイングテーマに、「ゆっくりやろう、でもやろう」、「第一の事を第一に」というのがあります。各種依存症の方が治療に繋がり、断○を継続して回復過程を歩む中で様々な落とし穴があります。その最大の落とし穴の一つが、頑張り過ぎなんですね。早く回復して迷惑をかけた周囲の人々に早く償いをしたいとの思いが生じて、それが焦りやストレスに、そしてスリップに繋がり易いという例が多いんですね。上記のミーテイングテーマを少しくだいて言えば、「回復の道はゆっくり、ゆっくり歩もう、一日一日、一歩一歩と前に進めば良い」、「第二、第三に大事な事は、2番目、3番目にやれば良い、まずは第一の事に集中してそれをやり遂げれば良い」といった意味になります。
 私もこの業界に身を置いて以来、患者・相談員の時代を通しての17年の間に、頑張り「過ぎ」による失敗の実例を本当に数多くこの目にしてきています。Dさんの場合、そんな失敗は無いとは思いますが、念のため書かせて頂きました。

 次に、社会復帰・社会参加の一つのパターンについて、よくご理解頂けたようで本当に嬉しく思います。仰るように、依存症者だからこそ他の依存症者の力になれるし、又、依存症者だからこそ他の依存症者の体験談を心底から理解でき、そこからパワーを貰えるという相互関係があるように思います。この相互関係の中に身を置く事で、自分が社会の一員として世の中の役に立っているという実感が持てるし、それにより社会復帰への道が広く、大きく開けると言って良いでしょう。この相互関係の大切さをDさんはAさんとの心の交流を通して実体験されたようですね。この実体験は、依存症者同士の心の交流、触れ合いの大切さを心の奥深く刻み込む上で実に貴重な体験になったと思います。

 私も、大石の性のミーテイングにはオブザーバーの立場で参加させてもらっておりますので、そこでDさんと同席できると思います。その日まで、今から心待ちにしております。
 本当にもうすぐですね。その日まで、凍傷の治療を含めて、お身体ご自愛下さい。今日はこの辺で失礼します。
                       草々

        平成24年2月18日
         大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/02/17/16:18:46 No.723

Re:収監者との文通

A E-Mail

Dさん、もうすぐ出所ということで、おめでとうございます。私のほうは、一足先に出所して、今は、パソコン教室でホームページ作成の勉強をしています。
 土曜、日曜は、家電量販店で、ブロードバンドの販売をしており、まだ、半年くらいですが外の世界で生活ができています。
 Dさんも知っての通り、私は刑務所に5回入っています。捕まる期間も、20日、5か月、3か月、2か月、と短く、半年も外にいるのは初めてです(笑)
 これも、刑務所にいる間に、大石クリニックと手紙のやり取りなどをしたおかげだと思っています。また、都内に帰らず、宇都宮にいるのも、犯罪を犯さない一つの要因になっているかも知れません。
 私の心残りは、横浜に、まだ顔を出せていないことです。もう少し、自分の生活が落ち着いたら、大石クリニックに行こうと思っていますが、今は、平日は学校が忙しく、休日は仕事なので、なかなか時間がなく、鈴木先生や大石先生には悪いことをしているとおもっています。
 Dさんも、もうすぐ外だと思います。外は外での厳しい所も多々ありますが、刑務所で培った精神力で乗り切りましょう!!
 私は、すぐ環境に流されてしまうので、宇都宮は知り合いもおらず、自分のペースで生活ができるのも良かったのかも知れません。
 お互い、この先は、戻ることなく外で生活を頑張りましょう!! 
 さすがに、私は5回も懲役に行き、刑務所はもういいや と思っています。
 Dさん、体に気を付け残りの受刑生活を乗り越えて下さい。熱が出たとありましたが、注意して生活してください。いつでも、困ったことがあったら、聞いてください。
 では、失礼します。
2012年2月20日 月曜日 Aより

Date: 2012/02/20/23:55:58 No.726