収監者 Aさんからの手紙
収監者
Aさんからの手紙
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及び 当掲示板No.555~Kさんとの文通 参照
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前略
お手紙届きました。色々と有り難うございます。
パンフレットの内容について考えてみましたので、ちょっと書いてみます。
生活を整理
<いつ?どんな時>;お金を増やしたい、楽しみたい。
<何をした?>;バカラに行った。
<どうなった?>;勝つ時もあったが、全額お金が無くなった。
<良かったこと>;お金が増えた。楽しめる。
<ギャンブルに近づく考え方>;今日は勝てるだろう。負けても全部使わずに帰ろう。
<ギャンブルを止める考え方>負けてる金額の方が圧倒的に多い。
<ギャンブルをしそうな時>;お金を増やしたい。お金が足りるかどうか不安。
<何をする>;足りると自分に言い聞かせて家でゲームをする。
<どうなった?>:ゲームをしていたので、お金は無くならなかった。
こんな感じで思い返しながら考えてみました。他の人達はどんな感じなのでしょうか? 私的にはこんな一言しか思い浮かばず恥ずかしいのですが、めげずに続けていきます。
当刑務所ですが、前刑の○○刑務所と比べると、どうやら勉強できる科目はかなり限られてしまいます。簿記の勉強も官本では2級までしかなく、試験も受けられません。刑務所がお金を出してくれる通信教育にも簿記、宅健などもないし、官本にも私が勉強したい科目は全然ありません。参りました。○○刑務所での分類面接であれほど、簿記のある刑務所に送って下さいと頼んだのに・・・。まぁしょせん刑務所ですから、仕方ないですね。でも、簿記の試験の有る刑務所は結構あるんですよ。
工場にも配役され、部屋も独りで、勉強できる時間はたくさん有るのに、ちょっと残念です。自分のお金が無いと、本当にキツイです。でも、ここは作業報奨金が累計の1/2まで使用できるので、1年後には勉学本も買い揃える事もできると思います。簿記1級は、出版社によって4~7冊くらいあるので、一冊ずつ買って勉強して行きます。ファイナンシャル プランナーも併せて勉強します。
鈴木さんからの手紙で、他の文通者が「何か自信にになるものを身につけたい」と書いていたそうですが、私は簿記の資格を取りましたが、他には、筋トレ、柔軟などがあります。筋トレ、柔軟は継続で精神的にも鍛えられますし、自分でも変化がすぐ分かり自信もついて来ます。例えば、腕立ても最初は10回しか出来なくても3ヶ月後には倍の20回できるようになり、体にも筋肉がついてきて、自信がつきます。柔軟も毎日続けていると柔らかくなるのが分かって来るので楽しくなります。両方とも続けなければ意味がないので、精神的に強くなって行くと思います。筋トレは最初は無理せず、腕立ては5回とか10回から始めて徐々に回数を増やして行くのがコツで、2セットか3セットするのが理想です。柔軟も1つのポーズを30秒は続け、息を吐くのがコツです。私も体が硬かったのですが、昨年5月から始めて、今では、立った状態で両手を地面に近づけると、手のひらがつくようになりました。それまでは、地面から20cmぐらい離れていました。これも一つの自信になるのでは?と思います。
ここの刑務所でも教育が実施されていますが、かなり限定されています。覚醒剤、性犯罪はミーテイングなどありますが、このミーテイングには他の犯罪の人は参加できません。なので私も参加してみたいのですが、参加できないのが現状です。そういう意味ではまだまだ遅れているのが刑務所の実情です。
色々と書きましたが、ギャンブル依存症のパンフレットの問答は、今はあんな風にしか思い浮かびません。何か他の人の想いなどありましたら、可能な範囲で送って欲しいです。他の人はどう考えているのか知りたいです。
自信になるものという事で私も実践している筋トレ、柔軟を書きました。12ステップや依存症のパンフレットをこれからも考え続けようと思います。
14日の成人式の日にはそちらもかなり雪が降ったそうですね。まだ寒い日が続きます。風邪などひかぬよう、お身体をご自愛下さい。又手紙を書きます。失礼します。 草々
平成25年1月26日 A
↓返信
Date: 2013/02/06/23:01:46 No.860
Re:収監者
Aさんへの返書
A様
前略
お手紙、1月31日に届きました。いつも有り難うございます。
お手紙に、ハンドブックの設問へのお答えが書かれていました。Aさんの答えの内容を、ハンドブック⑦ページ下段に沿ってまとめると、
<ギャンブルをしそうな時>
=「お金を増やしたい。お金が足りるかどうか不安だ」
↓
<何をする>
=「足りると自分に言い聞かせ、家でゲームをする」
↓
<どうなった>
=「ゲームをしていたので、お金はなくならなかった」
となります。この思考パターンを習慣化して実行し続け、実行することで思考内容の習慣化を進めるという良い循環が大事なわけです。
認知の歪みとしての「お金が増え、楽しめる」、「今日は勝てるだろう。負けても全部使わずに帰ろう」という認知を、「負けてる金額の方が圧倒的に多い」という認知に修正し、それを行動につなげる精神療法を「認知行動療法」と言います。今日その効能が広く認められ、世界的規模での広がりを見せています。
お手紙によれば、勉強する時間はあるのに必要な官本が少ないとのことですので、お送りしたハンドブックより詳細な資料を送ります。大石のギャンブル集団教育プログラム(週1回・90分×3~4ヶ月)で使用しているテキストですが、これも認知行動療法理論に基づいて編集されたものです。読み進みながら自分の過去を思い起こすことで、依存症克服への行動課題が明確になることでしょう。今度の刑務所には覚醒剤や性犯罪者の教育プログラムはあるけれどギャンブルは無いとのことなので、このテキストを使って独学でチャレンジするのも一つの方法かと思います。講師による集団学習用のテキストに独習でチャレンジする困難さはあるかも知れませんが、勉強好きのAさんなら不可能ではないでしょう。疑問点や困難な問題に突き当たったら、何なりと遠慮なく手紙で質問なり相談なりして下さい。
筋トレ、柔軟で自分に自信をつけているんですね。「立った状態で両手を地面につけられるようになった」そうで、本当に努力の賜だと思います。私は?と言えば、以前のAさんと同じで、手のひらは地面から20cmぐらい離れています。私も訓練次第でAさんのように地面に手をつけられるようになるんでしょうか?
立春を過ぎて暦の上ではもう春なのですが、横浜は今日も朝から雪まじりの雨が降っています。まだもうしばらく寒い日が続くと思います。風邪、インフルエンザ、花粉症・・・と油断のならない季節ですので、お体くれぐれもご自愛ください。今日はこの辺で失礼します。
草々
平成25年2月6日
大石クリニック相談員 鈴木達也
Date: 2013/02/06/23:23:40 No.861
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