Aさんへの手紙

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Aさんへの手紙

管理人
Aさんはギャンブル関連の犯罪により現在服役中の方ですが、ギャンブル依存症の治療と回復を切実に願い、その治療の為に当院との文通を続けている方です。
 詳細は、当掲示板/P15・投稿No183をご覧下さい、
 P14へのページ検索は、ここから↓へスクロールして、最下段です。
 =Aさんの承諾を得て、
 往復書簡を当掲示板にて公開しています=
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前略
 お便り嬉しく拝読しました。この暑さの中お元気でお過ごしのご様子で、何よりと存じます。
 いつもの様に大石クリニックのBBS掲示板「あおいくまの部屋」にお手紙の全文を掲載させて頂きました
HPトップページでの紹介は今回は都合により簡略化しましたが、来月になったら又元のスペースに戻したいと思います。
 さて、お手紙の中で
「出所したらバカラに行きたいと思っている自分と、絶対に行ったら駄目だ! 行ったら最後、また刑務所に来るぞ! と思う自分がいます。こういう心理は、他の依存症の人もそう思うのでしょうか?それとも自分が特別なのでしょうか? それを思うと不安で仕方ありません」
と、書いておられます。
 実は、大石のミーテイングでお手紙のこの部分を患者さん達に見せ、今日までの経過も話しながら、同じ依存症の立場からの声を聞いてみました。

◎「バカラと絶縁したいと願う依存症者だからこそ、そういう心理になる。依存症者として決して特別なことではない。そして依存症者だから『バカラに行く⇔否、絶対に行っては駄目だ!』の心の葛藤を一人では克服できず結局は行ってしまう。バカラではなかったけれど私もそうだった。ここにこの病気の困難さがある」
◎Aさんは正直に書いている。その正直さを大切にして欲しい。普通の生活に戻りたいと願う自分を大事にして
、出所後は何処にも寄り道をせずに、わき目もせずに、兎に角、真っ直ぐに大石に来て欲しい。Aさんが来るのを待っています」
◎私も何度も刑務所に行っているのでAさんの気持ちはよく分かる。何が何でも依存症から回復したいとの動機と決意を忘れずに専門病院と自助グループにつながって努力すれば『冬は必ず春となるように』必ず回復できると、この10年刑務所と縁を切って平穏な生活をしている立場から信じています。Aさん、待ってますよ」

 いかがでしたでしょうか? 大石の仲間がAさんを待っています。そのまた向こうでGAのギャンブル治療の仲間が待っています。そんな仲間と会える日が来るまで、忘れてはならない過去の自分をしっかり見つめる日々を送って頂きたいと思います。その意味で、最後にある一文をご紹介したいと思います。この文章は、かつて東大入試の独文和訳の問題として出題されたものですが、東大受験生のみならず、依存症治療を志す人々にも重要な示唆を提供しているように思えてなりません。以下は問題文の和訳です。
 
 「未来に向けて、思い通りの道を一歩一歩確実に歩もうと願う者には、行く手の道から取り除かねばならない過去がある。過去は単に我々の過ぎ去った背後にのみ存在するものではない;それは、むしろ現在と我々の未来の間に障害物の様に横たわっている。過去を忘れ、それを意識の底に落とし込もうとする者は不安にさいなまれるようになる:そういう者は前進しようとすると過去に苦しめられ、容易につまずくだろう。過去を決然として直視してこそ、人は確信と不動の堅固さを取り戻せるだろう」

 私も全くもって↑この通りだと思います。依存症の悪魔は忘却の一瞬の隙を狙って襲いかかり、患者をスリップの谷間に落とし込むと言って過言ではないと思います。Aさん自身の過去への直視は今の生活環境の中でもできる事だと思います。その中でまた思うところがあったら又お手紙を下さい。お待ちしています。
                  草々
   平成21年8月21日
    大石クリニック・相談員 鈴木達也

↓↓次に、Aさんからの返書を掲載します

Date: 2009/11/17/16:49:57 No.391