二つのきっかけに感謝・大石クリニックOB 並木明

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この寄稿文は、横浜断酒新生会結成35周年記念誌(「かたらい」 No.37;04/7月)より、同会および筆者の了承を得て掲載するものです。画像
「二つのきっかけに感謝」 
横浜断酒新生会
戸塚支部 並木 明
 足かけ45年間飲んだお酒を止めるようになったきっかけは二つあります。その一つは、61歳で3回目のアルコール性肝炎になって、もう駄目だ、もう酒を止めるより仕方がないと思った時ですが、それには伏線がありました。50の半ばを過ぎて酒の飲み方が段々悪くなり、そんな父親の姿を見ていた次女がある時、「アルコール症の正体と治し方」という本を買って来て、お母さん、つまり私の妻に「この本を読んでご覧よ」と言って差し出しました。妻は、「お酒を止めなければならないのはお父さんで、私が何故こんな本を読まなければ成らないのよ」と言って置き放しにしていました。
 チラチラとその本を見ていた私は、ある時ついに中を見てみる気になりました。そこには、「アルコール症は病気であり、酒を止めれば回復する病気である」と書いてありました。その一文は私の心に深く食い込んでいたようです。
 3度目のアルコー性肝炎で入院する頃は、酒を飲む度に急性下痢にも悩んでおり、こんな苦しい思いをしながら飲み続ける俺はなんて馬鹿なんだ、とにかく酒を止めなくちゃという気持ちになっていました。
 退院して来て、妻の協力を得て酒を止め始めました。朝起きるとワンカップの自販機に駆けつける代わりに妻と一緒に早朝散歩をする事にしました。昼間はジグソーパズルで気を紛らわせ、夕方になると妻の買い物のお供をして何とか酒を買いに行かない努力を続けました。
しかし、これにも限界がありました。33日間で、この断酒は途切れました。「何とか頑張ってみる。駄目だったら、お前の言う事を聞くよ」と妻と約束していました。だから私の断酒が途切れた結果、妻が県の精神保健福祉センターに相談して選んだ大石クリニックに予約を入れました。平成8年6月7日に妻と一緒に大石クリニックに出かけました。これが二つ目のきっかけです。
 何回も、何回もしつこく断酒の意志を問いただす院長に対して腹が立ちました。せっかく酒を止めようと思って来ているのに何を言うんだと思いましたが、とにかく言われる事は黙って聴こうとじっと我慢していました。「毎日、会社に行くつもりで9時に此処に来て、抗酒剤を飲み、昼間もここで皆と一緒に過ごし、夕方からも皆と一緒に断酒会に行きなさい。これを3ヶ月間やりなさい」と言われて、私の今日に繋がる生活が始まりました。院長から押し付けられたこの方法は私に合っていたようです。押し付けられた断酒が、日が経つにつれて自分で進んでやる断酒に変わって行きました。断酒会の例会が段々楽しいものになりました。例会に行った日はグッスリ眠れ、行かない日は何か物足りない思いがしました。
 お蔭様で、断酒を始めて8年、私の断酒も少しはしっかりしたものになって来ております。正に「継続は力なり」です。 
 この8年間、私の断酒は沢山の人々のお蔭で此処まで来たと思っています。先ず、切っ掛けののチャンスと力を与えてくれた娘と妻に、そして大石クリニックの皆さん、断酒会の皆さん、有り難う。感謝しています。多くの方々の支援に報いる為、私は断酒を続けます。
 どうか、今後とも宜しくお願いします。