体験談 大石外来通院:匿名希望

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  50代前半の男性会社員です。成人後はほぼ毎日飲酒していました。
  かつては、一日の終わりに、ウイスキーの水割りを飲みながらその日を振り返るのが儀式のようなものでしたが酒量はゆるやかに増えていきました。「酒を飲み酔いが回って眠くなる」 筈が、いつの間にか 「眠るために飲む」 ことになり、「酒を飲まないと眠れない」 は 「酒をかなり飲まないと眠れない」 にエスカレートしました。勤怠に乱れはなかったものの、起床時に前夜の酒が残っていることが度々ありました。若い頃はシャワーを浴びる程度でアルコールが抜けてくれたのですが、加齢とともに抜けにくくなり、昼食をとってもまだ調子が悪い、あるいは夕方まで調子が悪くて飲んでいるうちに調子が出てくることもありました。
2007年夏、大石クリニックを受診したところ、即座に院長からアルコール依存症の診断を受けました。アルコールへの依存度が高いという自覚がある一方で、自身の最大の悩みは睡眠でしたから、釈然としない思いが残りました。寝つきが悪いからアルコールに頼るのであって、睡眠の問題が解決できればアルコールへの依存はなくなるというのが自分流の解釈だった訳です。(後から考えてみれば、アルコールが睡眠のリズムを壊していたと判ります)従って、「断酒せよ」との院長の指示は右の耳から左の耳へと通り抜けたのでした。
  約1年間、酒を飲む機会を減らし、酒を飲まない日は処方された睡眠剤を服用して眠る日々を続けました。07/10月の休肝日は15日、08/1月は22日と、この頃までは順調です。しかし、その後は一進一退を繰り返しながらやや後退の状況にありました。一方、以前からの高ストレス状態とも相まって、意欲や集中力、記憶力等が減退し、抑うつ状態に陥りました。
  「『休みたい』 から 『死にたい』 に変わるのは時間の問題」 との院長の言葉が決定打になって、2008年7月~9
月の間、会社を休み療養に努めました。
 以来、2年の間アルコールは一滴も口にしていません。レアなケースと思いますが、断酒会のような集まりには一切出席しておりません。また、独身で一人暮らしのため、ブレーキを踏んでくれる家族が傍にいるわけでもありません。
  「誰かに言われたから」 断酒ではなく、「他ならぬ自分が決めた」 以上、自己決定を尊重しているまでのことです。
元々趣味が多いため、酒という一つの楽しみがなくなってもさほど苦にならなかったのも幸いでした。登山、鉄道(所謂乗鉄)、旅行等に加え、最近はウオーキング、サイクリング等も楽しんでいます。かつては、汗を流した後はキンキンに冷えた生ビールしか考えられませんでしたが、冷たい水でも十分に美味しくいただいています。断酒してから、山を登ってあまり息が切れなくなったのには新鮮な驚きを感じました。
 30年来の趣味である競馬、麻雀も楽しんでいます。こちらの趣味は自分のルールの範囲内でやっているので、長年続けられていると思います。(その点、酒に関しては自分のルールを守れなかった。休肝日しかり、寝酒の量しかり・・・)
 また、酒を飲まなくなってから読書量が増えました。改めて考えてみると。酒を飲むことで随分無為な時間を過ごしてきたと思います。ダラダラ酒を飲んでいた時間とその後の酔っ払っていた時間。これまで膨大な時間を無為に消費してきたことになりますが、少なくても将来に亘って無為 (かつ有害) に過ごす時間を断ち切った訳で本当に良かったと思っています。
 休業したときは、脳が半分くらいクラッシュしたのではないかと思うほどでした。物事をテキパキ片付けることができず、メールで短い文章を書くのにも随分時間を要しました。三つのことをやろうとすると一つは必ず忘れてしまう自分にあきれもしました。私の場合、肝機能は不思議なほど大丈夫でしたが、アルコールと高ストレスが脳を破壊しつつあったのだと思っています。
 院長からは、「酒を飲む場に近寄らないのが最も安全」とアドバイスを頂きましたが、実は酒を飲む場にはちょくちょく近寄っています。やはり、そういう場でないと本音で話せないことも多いですから。ただし、相手は選んでいます。「オレの酒が飲めないのか」 と言うような輩は当然避けていますし、そういう輩が潜んでいそうな大人数のパーテイーも極力はずすようにしています。周りは酒を飲んでいて私だけウーロン茶という状況にも慣れました。もちろん、周囲の理解と協力があって断酒を続けられていることも事実で、この点については感謝しています。
 睡眠に関しては思うように回復していません。睡眠剤の服用により眠れてはいますが、早期覚醒や覚醒回数の多さに悩んでいます。30年に及ぶ飲酒で壊した睡眠のリズムを2~3年で治そうというのが無理な話なのかも知れません。そのうち何とかなるだろうと楽観的に考えるようにしています。
 2009年7月から睡眠日記をつけ始めました。就寝時刻、起床時刻、寝つき、寝起き、最初の覚醒時刻、覚醒回数等の睡眠の状況と当日の天候、勤怠、出来事等を記したものです。客観的に記録してみると、「それほど眠れていない訳でもない」 ことがわかりました。日記をつける以前は、睡眠についてのばくぜんとした不安が大きかったのですが、人間の主観はあてにならないものです。(下に本年4月以降の睡眠日記を掲載します)
 もっと早く断酒しておけば良かったと思うこともありますが、自分がその気にならなかったのだから、振り返っても仕方がないことです。逆に今でも飲み続けていたらと思うとぞっとします。おそらく、かなり深みにはまっていたことでしょう。断酒に踏み切った際は、失うものが大きいとの思いが強かったのですが、現在は、失ったものより得たものの方が明らかに大きいと確信しています。