収監者との文通:Mさんとの往復書簡 H27/4/7
- 2016.03.05
- はばたき文通
<M⇒鈴木>
前略
ようやく寒さが和らぎ春だなぁと思う今日この頃、寒さに耐え足の霜焼けに打ち勝ち完治し、ようやく春に出会えました。だんだん暖かくなって来て一安心しています。
さて、簿記の結果はやはり不合格でしたが、思っていたよりはそんなに大負けはしておらず、部屋で落ち着いて再チャレンジしてみたら、プラス20点は取れていた。もしかしたらもう少し緊張していなかったら良かったのかも知れません。それが一番難しい事でもあるが、本番には魔物がいたのかも知れません。ただ、次は受かるかも知れません。今回受けた直後は、何て嫌な出題をして来るのだと腹が立っていたが、部屋で一から復習し直してみると、「あっ、そうか」とか、この方が解り易いと思えるところも多々あり、初めよりもスムーズに解けるのでとってもやり易く楽しんでやれています。1類キープが掛かっていたので余計プレッシャーが掛かっていた。できれば合格したかったが、次は大いに期待できそうな気がします。諦めたらその時点で終わりなのでこれに負けず努力して行きたい。まだまだ他の勉強もしたいし、時間もたっぷりあるので焦らずじっくりと、上辺だけではなくしっかり覚えて役に立たせたいと思う。今回すんなり合格するよりも、もう一回向き合える今のほうが良かったのかも知れない。一応簿記2級合格は一つの目標でしたので引き続きやり続けます。
もう一つの目標である一類昇類は達成でき、とても嬉しく家族も喜んでくれ、また工場の皆も喜んでくれて、「次は私」と続くように勉強したり、真剣に作業したりとなった事は私も嬉しいし責任は重大だ。少し大げさだが・・・それもこれも私の周りで支えてくれている方々にとても感謝しています。だから、また一類になれるように最大限努力したいと思う。前向きに考え生きている方がうまく行く気がするし、嫌々なら顔に出て周りにも迷惑を掛け何の得も無い。
できる事をコツコツと積み上げ、少しずつでも自分のプラスになって行けばこんなに良い事は無いと思う。自分独りだけで生きているのではないので、様々な意見や考えもあると思うが、人は人、自分は自分で甘える事なく冷静に生活したい。もう少し心に余裕を持って生活できると良いなと思う。これからも人を気にするのではなく、人を気づかう人間になれるようにしたいです。
いつの間にか私は歳をとり、本来ならばバリバリ働いて家族を養い、大変だがその分どこかその辛さが嬉しかったり、家族との触れ合いが温かくて心が和らいだりする。ちょっとした事が幸せで、それで穏やかに過ごせるのだと思う。少なからずそういう日もあるーそれを夢見て今は生活している。人生は思う様に行かないかも知れないが、今までのような事を繰り返しているよりはよほど良い。父母は幸いにしてまだまだ元気でいてくれているので、できれば、できるだけ親孝行したいと思っている。これから這い上がるのは、人を押しのけてではなく、自分を変えなければいけない。
もう二度とここに舞い戻らぬように自分に負けない事だ。夢破れても、自分が諦めなければ近づけると思う。今私がこれだけ充実した日を過ごせているのは周りの支えがあるからだ。その周りの支えがあるのは、日々の自分の行動、言動、接し方によるのだ。だから自己中心ではなく、思いやりを持って心に余裕を持って、時に人を助け、敬える人間でありたいです。この気持ちを忘れず、いつか来る社会復帰までに自分を少しでも夢に近づける人間になれればと思う。
桜が咲き始め、季節の変わり目です。どうか御身大切になさって下さい。 春ですね。
草々
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<鈴木⇒M>
M様
前略
Mさん、こんにちは。 横浜も桜が満開となり春を迎える中、お手紙4/7に届き大変嬉しく拝読しました。
先ずは真冬の有り難くないプレゼントだった霜焼けが完治したそうで良かったですね。ただ、簿記2級は残念な結果だったそうですが、それでも次回の挑戦への大きなステップになったようで、ぜひ今の思いで努力を続けて頂ければ良いなと思います。
私が何よりも心を動かされたのは「今回すんなり合格するよりも、もう一回向き合える今の方が良かったのかも知れない」との前向きなプラス思考でした。同じ勉強でも2度やる事でより多くの知識や技能を身につけられますよね。ですから同じ簿記2級資格者でも一発で合格した人より2度目、3度目で合格した人の方が資格者としてより高い資質を持っているかも知れませんね。
簿記2級への社会的評価としてある有名な簿記の先生が「簿記2級の資格を持っていて、2年くらいの実務経験があれば、ほぼどこの会社の経理でも任せられる」とネットに書いていました。そんな価値ある資格をMさんは今や射程距離に置いていますので合格目指してもうひと踏ん張り頑張って下さい。
次に、簿記2級に合格した人に勉強の体験談を聴いてみたら概要でこんな話でした。多少なりとも参考になればと思い以下に記したいと思います。
◎:先ずは、参考書を一通り勉強しそれに基づいて問題集を解くと、自分の苦手な部分が解るのでそういう問題の答えを暗記する勢いで解く
◎:次に過去問の同じ問題を何度も繰り返し解く。解らない問題については解説と答えを見て、計算式も含めて覚える。これは何度も繰り返す事で自然に覚えられる。
◎:仕訳は完璧にマスターする。どういった時に借り方になり、また貸方になるのかをマスターする。どの勘定科目が貸借対照表で損益計算書に記入するのかを覚えるのも重要。これらも過去問を繰り返し解く事で自然と身につく。
◎:試験問題と配点について
第1問は仕訳、第2問は伝票、仕訳日計表、第3問は精算表、第4、5問は工業簿記です。概ねこんな感じで毎回出題されます。第1~3問は全問正解を目指すべきです。そうすると、これだけで約60点稼げます。合格の目安が70~75点なので、工業簿記の第4,5問で半分正解すれば合格できます。第4,5問も毎回問題の内容は同じなので、答えを導く計算式を覚えてしまえば解く事ができます。
以上の事から、過去問を何度もやり、答えと計算式を覚えてしまうのが有効です。計算式を覚えれば、数字を置き換えるだけで答えが出せますので。それに過去問を繰り返すことによって試験の時間に慣れることも出来ます。少し長くなりましたが合格に必要な勉強方法だと思います。
以上が簿記2級合格者の勉強の参考例です。あくまでも参考ですので、取り入れられる所は取り入れながら自分のペースを守って勉強して頂ければと思います。
お手紙では将来の社会人、家庭人としての夢にも触れられていますが、先ずは一類復帰を目指す日々の生活が将来の夢へと繋がる道を切り拓くことでしょう。
「周囲に支えられての充実した生活は、周囲への自分の行動・言動・接し方があっての事」とされていますが、確かに人は人に支えられ、そして人を支える事で生きて行く事ができるし、そういう日々の生活が将来の夢を実現させる原動力になりますので、今の想いを忘れずに日々の生活を送って行って下さい。
それでは、今日はこれにて失礼します。又次のお便りを楽しみにお待ちしています。
草々
平成27年4月8日
大石クリニック相談員鈴木達也
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