収監者との文通 Bさんからの手紙
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Bさんからの手紙
Bさんとの文通 E-Mail
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当掲示板、投稿No.555 No.582~581
No.591~590 をご参照下さい。
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大石クリニック 鈴木達也様
お手紙ありがとうございます。
留置場から拘置所に移動して一歩前進した気がします。これから先、かなり長い生活になりますが、お手紙に書いて頂いているように、焦らず、ゆっくり確実に更生し、しっかりした人間になるように努力します。
先日、私の担当をして頂いている弁護士の先生に、被害者の方の調書を持って来て頂きました。私のしてしまった事で、本当に辛い思いをさせてしまっています。精神的にも大きなショックを与えてしまい、摂食障害になってしまっている方、リストカット、アームカットしてしまっている方もいます。「死にたいと何度も思った」と書かれていました。
逮捕されてから今まで、被害者の方の気持ちを考えて来ました。しかし私は事件を起して逮捕されるまで、被害者の方の気持ちを考えられず本当に最低な事をしてしまいました。調書には「殺してやりたい」、「死刑になって欲しい」と書かれていました。これは当然の事だと思います。私も逆の立場で、もし自分の身内が、彼女がこの様な被害に遭ったら、本当に辛く、悲しい思いをするし、犯人のことを許さない筈です。殺してやりたいと思う筈です。
私はこれから裁判で判決を受けますが、いつかは出所します。何年、何十年になるか分かりませんが、いつかは出所します。被害者が望んでいる判決にはなりません。私は本当に反省し、しっかり更生しようと心から思っています。しかし被害者の方はそれを望んでいません。私も逆の立場であれば、犯人が出所する事を望まないと思います。
私はこれから刑務所に入り、懲役を過ごします。もちろん、被害者の方への償いの気持ちを忘れずに生きます。しかし、直接謝罪もできず、謝罪文を書く事しかできません。後は償いの一部として示談金を渡す事しかできません。それでも被害者の方に許される訳ではありません。それに、そのお金は私のものではありません。
これからしっかり反省し、償いの気持ちを忘れずに、刑務所生活をまじめに務め、二度と同じ過ちを犯さない普通の人間となれば、社会で生きて行って良いのでしょうか? 私は本当に最低な事をした犯罪者です。逮捕されてから色々と考えて来ました。
これからやらなければいけない事、変えなければいけない事が見えて来ましたが、同時に、こんな俺が出所して生きて行って良いのか?と思うこともあります。被害者の立場になり考える自分と今の私の気持ちは矛盾します。何が正しくて、何が正しくないという考えが間違っているのでしょうか?
私は正しくない人間です。これから先、出所すれば前科者ですが、出所して、まじめに被害者への償いの気持ちを忘れずに生きて行けば良いのでしょうか?
変な文になっていて、意味が分からない手紙になっているかもしれませんが、お便りお待ちしています。
平成22年12月11日 B
↓↓Bさんへの返書↓↓
Date: 2010/12/27/16:38:12 No.604
Date: 2010/12/27/20:15:26 No.606
収監者との文通
Bさんへの返書
B様
前略
お手紙、拝読しました。有難うございました。
過去をしっかり反省し更生を誓う自分と、被害者側からの更正しても許せないとの思いの二つの思いを一つの胸に共有し、その矛盾にお悩みの様子が文面からひしひしと伝わっています。
私はBさんが最低の人間だとは決して思っていません。最低の人間に、被害者の立場で犯行とその結果を考え、過去を反省し、更生を誓い、将来の正しい人生行路を設計する事など出来ませんからね。Bさんは元来は少なくとも普通の人なのだと思います。その普通の人に性依存症(性嗜好障害)という病気が獲り付いて、それが犯罪の原因になったのだと思っています。
他の病気に置き換えて考えれば分かり易いと思います。例えば、結核患者は頭の先から足の爪先までの全てが結核に罹っているわけではありません。体の一部が結核菌に侵されている訳ですから、その犯された一部の治療で根治でき、全快して社会復帰が可能となります。依存症の場合にも基本的には同様の事が言えると思います。依存症は脳内の欲求ホルモンや神経に障害が生じ、欲求を自分本来の意志や人間性でコントロールできなくなる病気です。「患者の本来の人格・正常な欲求」が「病気」によって支配され、歪められているというのが依存症という病気の実態なのだと思います。従って、最低なのは、Bさんその人自身ではなく、Bさんの脳に獲り付いた病気だと考えるべきでしょう。
Bさんは今その病気に気がつき治療を開始しました。これは大きな第一歩です。是非とも二歩目、三歩目・・と着実な歩みを続けて病気を退治して欲しいと思います。病気を退治し続ける自分に病気ではない自分を見つけるでしょう。被害者の調書を正面から受け止め、自分が犯した過ち、罪の重さを反省の糧とするのは当然の事ですが、決してそれに押し潰されることなく、反省と治療、治療と更生の道を歩み続けて欲しいと思います。更生し普通の人間として生きつづける道の裏側に、被害者からの許しは生涯をかけて得るものとの思いがあると思います。今被害者から許して貰えないから、自分は人間としての価値がない最低の人間だと考えたら、それは病気という悪魔の思う壷に嵌まるだけでしょう。Bさんその人が悪いのではなく病気が悪いのだと考えて、病気を退治する道=依存症治療の道を歩み続けて欲しいと思います。被害者の「死刑にして欲しい」との気持ちを受け容れて「病気」を死刑にして欲しいと思います。その為に出所後は「まじめに、被害者への償いの気持ちを忘れずに生きて」下さい。
今年も愈々残り少なくなりました。過ぎ行く年はBさんにとって更生元年の年になろうとしています。迎える年を更生2年とするべく、どうぞ良い年をお迎え下さい。 草々
平成22年12月28日
大石クリニック相談員 鈴木達也
Date: 2010/12/27/20:12:00 No.605
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