収監者との文通 Eさんからの手紙

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収監者との文通

Eさんからの手紙

大石クリニックHPトップページ
及び、当掲示板 No.555 参照

前略
私の名前はEと申します。現在○○拘置所に拘留されており、時期どこかの刑務所に送られる事と思います。
今回手紙を出したのは、依存症というか、頭の病気が治るものなのか?聞いてみたい事と、担当の弁護士さんにすすめられた事から手紙を書いてみました。依存の話をする前に私の頭・・・考え方、データベースは治るのかを聞きたいです。
私は○○歳です。40歳前までヤクザの生活をしており、覚せい剤は周りにいくらでもあり、有るのが当たり前で、分かり易く言うと、私の中ではコンビニにコーラを買いに行くのと同じ感覚なんです。感覚マヒって言うんですか。
依存の話をする前に、この辺をまず治さないとダメではないかと思い簡単に書いてみました。弁護士さんにも言われましたが、基本的な事から治して行かないといつまで経っても自分で気付く事は出来ないよって。私もそうだと思っています。
外を治してキレイでも、中からサビが出てちょっとしたショックで大きな穴が出来ますからね。今、車屋さんなので車でしか例え話が出来ないので・・・
そういう事も考えており、何よりもう刑務所には行きたくないのです。
慢性のこの病気、治るかどうか分かりませんが、藁にもすがる思いで相談してみました。どうか返事の方宜しくお願いします。文章が分かりづらいとは思いますが、頭がよろしくないので、この程度しか書けません。
末文ではありますが、皆様の活躍を心より思っております。
草々
7・21記  E

Date: 2011/08/05/14:24:51 No.677

Re:収監者との文通

Eさんへの返書

E 様
前略
はじめまして。私、大石クリニックにて相談員をしております鈴木達也と申します。仕事の一環として、各種依存症を原因とする犯罪にて各種司法施設に収監されている方々との文通を担当しております。担当の弁護士さんからは先日お電話を頂き、Eさんからのお手紙をお待ちしておりました。
さて、この度はお手紙を頂き有難うございます。依存症という頭の病気が治るものなのかとのお尋ねですが、一口に言えば、回復は可能ですが、生涯にわたって完治はしません。薬物依存症の場合、薬物を断ち続けることで回復し普通の人と変わらない生活を続ける事ができます。しかし、もう大丈夫だろうと思って一度薬に手をつける(スリップと言います)と、またまた速やかに逆戻りして、もとの木阿弥と化してしまいます。ですから薬物依存症の専門治療を継続して薬物を断ち続ける事で回復し、生涯にわたって回復を継続し、新しい生活スタイルを継続する事が肝要です。それが出来れば、結果的には完治したのと同じ人生になるでしょう。
お手紙の中で、自分にとっての覚醒剤はコンビニのコーラの様なものと仰っています。そして普通の人と比べて感覚がマヒしていると書かれています。実は、ここが治療に向けての第一歩だと思うのです。依存症という病気は否認の病気とも言われており、自分の病気、症状に中々気づき難いんですね。その点でEさんは既に治療への第一歩を踏み出されているように思います。感覚がマヒしている事に気づかれて、治せるものなら治したいと思われて当院にお手紙を書かれたことで、治療と回復に向けて歩み始められたと言えるでしょう。

治療の主要な柱は以下の通りです。
(1):専門医による診察(カウンセリング)、
(2):ミーテイング:
ⅰ)同病の治療仲間とのミーテイングでの体験談の    交流で自分の病気を自覚でき、また回復への確    信を持つことができます。
ⅱ) 認知行動療法ミーテイング
(3):依存症についての学習:依存症は世間一般に
誤解や偏見が根強い病気ですので、まず患者
自身が正しい知識を身につける必要がありま
す。

お手紙の中で「私の頭・・・考え方、データベースは治るのか」と書かれていますが、その治療は上記治療法の(2)~ⅱ)の「認知行動療法」の中で行われます。この治療によって、完治しないまま頭の奥底に眠り続ける病気が目を覚まさないようにし続ける事が可能となります。薬を自分一人で我慢し続けるだけでは、Eさん自身が仰っているように「外を治してキレイでも中からサビが出てちょっとしたショックで大きな穴が出来る」結果となってしまいます。そうならない為にはどうしても専門治療が必要です。ただ、Eさんの場合、仮に実刑になった場合一定期間通院が不可能となりますので、今回始めたこの文通を続けられるよう心からおすすめします。

以上ですが、お尋ねへのお答えになったでしょうか?まだ疑問な点などありましたら、どうぞ遠慮なくお気軽に手紙を下さい。お待ちしております。
連日、暑い日が続いております。熱中症その他に重々お気をつけ下さい。
草々
平成23年7月28日
大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2011/08/05/14:47:08 No.678