Aさんとの往復書簡
Aさんとの往復書簡
大石クリニック
Aさん(ギャンブル依存症関連の犯罪で服役中)
との往復書簡
≪Aさんからの手紙≫
前略
お手紙有り難うございます。
ギャンブラーズアノニマス(GA)の情報も読ませて頂きました。
まだこういうグループに参加した事はないのですが、送られて来た資料を読むと「ああ、」と思える内容で、「正にその通り」と言えるものでした。
確かに、自分の事となると、自分は今こういう状況にいるというのを認める事が出来なかったと思います。
他人に何かを言われても、「そんなこと、分かっているよ」と言い、でも自分の行いを正すことは出来ませんでした。
ギャンブルをしていると、自分を忘れる事が何度もありました。その度に色々と助言してくれる友人もいましたが、結局耳を傾けることがなかったと思います。
そして店を出て家に帰ると、「ああ、何であの時はそうしなかったのか、次こそそうしようと思うのですが、やはり同じ事の繰り返しです。」
皆もそうなのかも知れませんが、私の場合勝っている時は結構冷静で、人の意見にも耳を貸すことも出来ます。しかし負けが膨らんで来るとどうしようもなくなります。負けている金額を一度で取り戻そうとし、その金額を賭けますが、当然ツキはこちらにないので負けてしまいます。それを繰り返し、持っているお金を使い果たし、犯罪に走ってしまいました。
どうして、お金が無くなるまで使ってしまうのだろう・・・と負けた時は思うのですが、それを次回に活かす事は出来ませんでした。
それはきっと、「前にはここから勝ったことがあるから、今回もきっと・・・」
という何の根拠も無い思い込みもあったのだと思います。確かに何度もそういう事はありましたが、常に起こる筈がありません。
バカラをやっている時はそんな馬鹿げた思いを持っていますが、やっていない時は冷静に何事も考えられます。でも実践できません。
そういう自分を思いながらGAの資料を読むと、他の人も似たような思いを持っているのだと思い、自分だけではないのだと安堵できてもいます。
だんだんと、出所後にまず何をすれば良いのかというビジョンが見えて来た様な感じがしています。
本当に色々な意見を頂き感謝しています。また手紙を書きますので、これからも御指導の程よろしくお願いします。
失礼します。
草々
平成22年3月29日 A
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≪Aさんへの返書≫
前略
3月29日付のお手紙拝読しました。ご返事が遅れて申し訳ありません。
GAの資料を読まれて共感を覚えておられるようで、心の中では既にGAメンバーの一人としてスタートを切られているように思い、大変うれしく思っております。そのGAへの共感が、お手紙の中の「・・・出所後まず何をすれば良いのかと言うビジョンが見えて来たような感じがします。・・・」との思いに繋がっているように思えます。
その点で、過去の刑務所内でのバカラを止める決意とは決定的に違うと思います。過去の決意は、「兎に角、今度こそバカラを止めるのだ !! 」という、止めるという意志だけに頼った「決意」だったと思うのです。しかしそれだけではギャンブル依存症という病気には太刀打ち出来ません。病気から治りたいという患者の意志というか願望だけで病気が治る筈がありませんよね。どれ程強くギャンブルを止めようと決意してもそれだけでは止められないのはAさんだけではなく、依存症者全体に共通した法則と言って良いでしょう。
しかし今度のAさんは違います。今度は止める為の方法を発見しています。ギャンブル・バカラを止め切る為の道具を手にしようとしています。そしてその事からバカラを止め切る希望が視界に入っていると思うのです。
以前の手紙で紹介した大石の仲間が「Aさん、出所したら何も考えず、わき目もふらず、兎に角、真っすぐに大石に来て下さい」と言っていましたが、私も同じ言葉を差し上げたいと思います。バカラを止められる方法と道具を手に出来る思いを胸に、その他の事は何も考えずに、わき目もふらず、兎に角、真っすぐに大石に来て下さい。その日を楽しみにお待ちしています。
最後になりますが、追加のGA資料をお送りします。GAにを関する「Q&A」ですが、GAとはどんな所で、どんな事をしているのか? どんな人達が集まっているのか? 等々概略的にでも把握しながら、そこに参加する自分をイメージしておけば、断バカラ・断ギャンブル生活に向けスムーズにスタート出来るかと思います。
春4月というのに、冬の陽気のような日もあり寒暖の差が激しい日々が続いています。どうか体調を崩さないよう注意して健康で元気な毎日をお送り下さい。
草々
平成22年4月21日
大石クリニック相談員 鈴木
Date: 2010/04/21/10:06:01 No.530
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