収監者との文通:Mさんとの往復書簡 H26/11/9

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<M⇒鈴木>
前略
11月、いよいよ冬に向って段々と寒さが増してきている感じです。様々な災害や、異常気象に注意して元気で過ごして行きましょう。
さて、ひと昔前に比べ、ようやく自分自身でも治療を続け、クリニックへの通院も出来、心のハードルを高く上げられ、自信に打ち勝つ力を身につけることができると思えるようになりました。
今日まで色々と考えてきた中で少しずつ自信が湧いてきました。不安はもちろんあるが、少しずつ昔の自分がもっていた心の壁を築きつつあるのを感じられるようになっています。もちろん、まだまだであるし、社会に出てからが本当の勝負だと思い、一つ一つ自己改善ノートに書いてある事をクリアーして行ったり、話をしている内に心の余裕が広がったというか、視野が広がったというか、見えてきた感じです。もっと深く確実にしたいので、焦らず確実に一つ一つ進みたいと思います。社会復帰後も通院し、再犯防止に役立てたいと強く思います。自分の為、家族の為、皆の為にも。

最後に、私事ですが、とても良い報告があります。何と、「一類」になれました。前回受けた簿記の合格が教育点UPにつながりました。周りの方々のお蔭もあり、昇類することが出来ました。一類とは類の一番上で、皆の模範にならなければならない模範囚。私の場合まだ無事故期間が短いので(本来なら3年半~5年をかけてやっと1類になれる。その間無事故でしっかり過ごせるのが条件)その分教育点が高く評価されました。その為、一定期間・6ヶ月、一類になれます。この間にテストに合格すれば一類を継続する事ができるのでまたチャレンジして一類をキープできるようにしたいです。
私は何よりも一類に自分がなれた事がとても嬉しいです。凄く上の目標だったのが実現できたのは自信にもなるし、逆にプレッシャーにもなります。例えば横綱の気持ち?横綱ではないので、あくまでも横綱のようなという感じですが、皆の見本になり、自分に負けることなく、そして下に落ちられないという思いで日々の努力が必要です。
私一人でなれたものではありません。私は資格の勉強をし合格しただけです。その他は皆に支えられて引っ張り上げられ、助けて頂いて何とか認められたもので、周りの方々のお蔭です。一類の前提として社会復帰に意欲があり、信用が無いといけません。そういう所が認められたのが一番嬉しいです。これからも気を引き締めて行こうと思います。一類になり、今までより一歩下がって考えてみたりして、ちょっとだけ心に余裕ができてきました。このまま焦らずに頑張ります。 両親も大変喜んでくれています。この気持ちを忘れず、現状で満足せず、更に前進できるようにしたいです。

このところ、普通に生活していても異常気象や災害などの恐ろしい出来事があったりしていますが、これからは真冬に向かい、とても寒くなってきます。どうかお体を大切にお過ごしください。ではまた。
草々

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<鈴木⇒M>
M 様
前略
嬉しいお便り、8日に届きました。
先ずは、一類昇類おめでとうございます。入所以来の色々な努力の積み重ねが実って花と咲いたのが今回の一類昇類であり、心からのお祝いを申し上げたいと思います。自己改善ノートで日々自己変革に努め周囲と協調し、また炊場の責任者としての重い責務を果たし、そして簿記の試験に挑戦し見事に合格され・・・そういう今日までの日々の歩みによって到達した成果であり、今後の歩みに向けても大きな自信を得られた事でしょう。お手紙で、今日の日を迎えられた歓びと共に、この成果に対する謙虚な思いが綴られていますが、周囲の人々へのお蔭様という謙虚な心とご自身の努力による自信の両面を忘れることなく、心新たに、今日、明日からの道を一日一日の道を歩み続けて欲しいと思います。

御両親もさぞかしお喜びの事でしょう。大きな親孝行をしましたね。この先も出所後の依存症治療、再犯防止、社会人としての生活・・・という人生行路に親孝行の種は沢山あると思いますので、その一つ一つの種を大事に育てて欲しいと思います。

10年以上前の過去に3度の受刑体験をもつ大石の患者さんにMさんの公開用の手紙を見せたところ、「スゲー!! 一類なんて100人に一人だぞー!!」と感服していました。そして返事の手紙で伝言して欲しいとのことで、 「おめでとうございます。周囲と仲良くして、出所まで事故なく過ごして下さい」との事でした。

前回お約束した、Mさんの「いかりの綱」としての将棋の話を、大石でのミーテイングのテーマにして患者さん達の声を聴く件ですが、まだ出来ておらず申し訳ございません。11月15日(土)に私が担当するミーテイングで行いたいと思っておりますので、次の手紙に書きたいと思います。

それでは簡単ながら、これにて失礼します。この先にやって来る冬将軍に負けないよう、お体くれぐれもご自愛ください。

草々

平成26年11月9日
大石クリニック相談員 鈴木達也