収監者との文通 Aさんからの手紙
収監者との文通
Aさんからの手紙
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当掲示板No.555 以下Aさんとの文通参照
前略
鈴木さん、お手紙ありがとうございました。
毎回本当にありがとうございます。
さて、先日6月10日に簿記2級の試験がありました。結果はまだ出てないですが、自分では大丈夫だろうと思っています。
ですが、自分でそう思っているだけで、実は答えの解き方を間違っていて、それを自分が気付いていないだけなのでは?と思う自分もいます。(笑)
来週には結果が出ますので、結果がどうあれ、すぐ報告します。
頂いたミーテイング資料:「トリガー(引き金)を見つけ対処しよう」ですが、簿記の勉強もひとまず落ち着いたのでやっています。でも、なかなかうまく分析できず、結構難しく少々てこずっています。
特に、ギャンブルをしたくなる時の気持ちというのが、自分でうまく表現できません。確かに、バカラに行く時の気持ちは、お金を増やしたいという思いが一番強いと思うのですが、したくなる時の気持ちとなると、どう表現すれば良いのか皆目分かりません。
例えば、行きたくなる時の気持ちと言うなら、前記のようなお金を増やしたい、カードを絞って楽しみたい、などですが、あとは行くのが日課みたいな思いがあると思います。これもしたくなる時の気持ちと同じなのですかね?
ギャンブルの切っ掛けも、これといって思い当たらないのですが、あえて言うなら、やはりお金を増やすのが目的だと思います。でも毎回そう思っている訳ではなく、何の目的もなく、まあ暇だし、バカラも面白いしとの思いで行ってしまう日も多々あるように思います。
難しいですが、これから何度も過去を振り返り、分析を続けようと思います。
今、刑務所では就労支援というのがあり、私は入所した時にそれを希望したのですが、今月から始まりました。全部で何回あるのか不明ですが、やる内容は履歴書や職務経歴書の書き方や面接の受け方などです。ハローワークの職員が来て指導してくれるので、正直言ってありがたいです。宿題で、この前自分の履歴書と職務経歴書を書いて提出しましたので、今度はそれのダメ出しがあると思います。
今度こそ、ギャンブルで身を滅ぼすことなく、外の世界で他の大勢の人達と同様に、普通に生活して行きます。まずはアルバイトでも良いので収入を得なければと思います。そして自分の思っている様な生活に一歩ずつ前へ進んで行こうと思います。
だんだん出所が近づき、何だか落ち着かなくなって来ました。(笑) 当然、嬉しい思いもあるのですが、様々な不安も日々増してきています。毎回、出所間近になると思っていることなのですが、こればかりは慣れません。(笑)
出所までの残りの日々は、自分自身を高める為に時間を使って行こうと思っています。読書もその一つで、購入して読んでいない本が沢山あるので、それも読破しようと思います。小説もありますが、新書もかなりあるので、読み終えられるのか、少々不安です。
自分は本が好きなので、読み終えても終わってなくても、出所の時の荷物にはなりますが持って帰ろうと思っています。
本だけでかなりあり重いですが(笑)
話は変わるのですが、先日同じ部屋の人にコンビニに置いてある無料のパンフレットのスーモという賃貸情報が載っているパンフレットが送られて来ました。そこには自分の欲しい地域の物を無料で送付しますと書かれていたので、つい先日、送付申し込みの手紙を出しました。そしたら返事が来たのですが、手紙での受付はしていないので、誰か外の人に頼んで電話かネットで申し込んで下さいとの答えでした。他に頼める人も無く、また鈴木さんに頼みたいのですが、よろしいでしょうか? もちろん無理なら無理で構いません。
~ 以下、申し込み先等、一部略 ~
本当にいつも有難うございます。またギャンブルの分析資料など他にありましたら送って下さい。これは難しいですが、やっていて楽しいし、自分でも気付かなかった事に気付くような気がします。
今は少々寒い時もあり、刑務所でも風邪が流行っております。私も未だに咳が止まりません。まあ一時と比べれば大分落ち着きましたが・・・。
どうか、鈴木さんも風邪など引かぬ様、くれぐれも注意して下さい。電話はできるかどうか不明ですが、申請をしてみますので、その時はどうかよろしくお願いします。
また連絡しますので、今回はこの辺で失礼致します。いつも本当に済みません。
草々
平成23年6月19日 A
Date: 2011/06/22/23:09:25 No.664
Re:収監者との文通
Aさんへの返書
A 様
前略
お便り、有難うございます。簿記2級の試験はもう結果が出ているのでしょうか? 合格を祈りながら御返事を書き始めました。もしかすると、この手紙も合格のお知らせと郵便路線の何処かですれ違うかも知れませんね(笑)
さて、ギャンブル欲求のトリガー(引き金)を引く、その時の気持をどう表現すれば良いの分からないとの由ですが、それは、一人でやっているが故の必然の事のようにも思われます。その時の気持ちは記憶の倉庫の中で眠っていると考えられます。眠っているから記憶として蘇らないのだと思います。それはAさんのみならず誰もが経験する一般的な現象と言えるでしょう。よくある事だと思うのですが、知人の名前を度忘れして中々思い出せない場合、誰かにその名前を聞くと、「あー、そうだった、そうそうAさんだった」と思い出せることってありますよね。Aさんの名前を忘れていたわけではなく、記憶が眠っていただけで、誰かに記憶の眠りを醒ましてもらって思い出せるわけですね。
同様に、Aさんにギャンブルの引き金を引く時の気持ちを思い出させてくれる誰かがいます。それはミーテイングに参加している同病の仲間の中の誰かです。ギャンブルミーテイングの中で仲間の体験談を聴いて、「ああ、そう言えば、あの時俺も同じような気持ちだったな」と眠っていた記憶を思い出させて貰える訳です。実際にギャンブル地獄を体験していない医者やカウンセラー等には語れない仲間の体験談が自分の過去の思いを思い起こさせてくれます。もちろん逆も言える訳で、Aさんの体験談も仲間への力になります。その意味で言えば、専門病院のミーテイング会場での真の先生は、進行役の病院スタッフというよりも、参加している患者仲間だと言っても過言ではないと思います。
こうして、ギャンブルへのトリガー:黄色信号は何かを仲間の体験談から思い起し、赤色信号の前の段階でギャンブルから遠のく事が可能となります。孤独の殻の中で記憶の底に沈んでいた黄色信号をミーテイング会場で自覚する事が出来、一人では止められなかったギャンブルを止め続ける事が可能となります。
そんな治療を続ける中で、以前のAさんが何度固い決意をしてもギャンブル・バカラを止められなかったのは何故か?の謎も解けて来るかと思います。つまり「以前は、専門治療、同病の治療仲間の輪に繋がっていなかったからギャンブル、バカラの誘惑から解放されなかったのだ」との謎の答えを得られるでしょう。
以前にも書きましたが、治療開始後にやってはならない事が一つだけあります。それは専門病院・治療仲間から離れる事です。ギャンブル依存症は「病的賭博」との正式病名を持つ,れっきとした神経の病気であり、従って患者の個人的決意、意志、我慢だけでは治療が不可能な訳です。言ってみれば、がん患者が一生懸命痛みを我慢しても、がん細胞は勝手に増殖し、転位してしまうのと同じ事です。
従って、出所後の最初の全ての生活、希望の土台の所にギャンブル依存症の治療が位置付けられると思います。治療によりギャンブル・バカラと断絶する事で初めて、普通の人と同じ生活が可能となり、そして公認会計士・PC資格の取得、独立への道も洋々として拓けて来るでしょう。
次に、SUUMOマガジンおよび新築SUUMOの、各々の横浜、東京23区版の注文の件ですが、、リクルート社に電話で注文しましたので、7月の初め頃にそちらに郵送されると思います。4期分定期的に配送されるそうですので暫くお待ち下さい。
最後に、電話についてですが、早く通話が出来るようになれば良いですね。ただ以前にもお知らせした様に、院長は土曜・日曜が休日で、私は日曜・月曜が休日ですので、その旨御留意下さい。又、折角お電話を頂いても、院長は診察で、私は担当プログラムの関係で即対応出来ないかも知れませんので、その場合には通話可能な時間をお問い合わせの上、再度お掛け直し下さい。又、当方からの折り返しの電話が可能でしたら、電話番号、時間などを伝言して頂ければと思います。尚、私の場合にはPM3:00~5;00の間でしたら電話に出られる確率が高いと思います。
梅雨明けまでもう少しの様ですが、段々暑くなって来ました。お身体には十分お気をつけてお過ごし下さい。喉風邪も早く良くなれば良いですね。今日はこの辺で失礼します。
草々
平成23年6月24日
大石クリニック相談員 鈴木達也
Date: 2011/06/22/23:51:20 No.665
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