収監者との文通 Dさんからの手紙

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収監者との文通

Dさんからの手紙

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および、当掲示板No,555 654 655 参照
↓の No.654→655→656→657の順に
            お読み下さい。

前略
 手紙受け取りました。有難うございます。早速拝読させて頂きました。手紙を拝読させて頂いて一番強く感じた事は、依存症で悩んで苦しんでいる人が自分だけではない事を強く感じ、社会復帰に向けて勇気と希望を抱く事が出来ました。手紙にも書かれていましたが、私と同じ様に依存症の病気で悩み、治療に通っている人達とのミーテイングで必ず私がその人達の力になってあげている事が出来ているんだと思え、逆に自分がその人達から支えられ、助けてもらっているんだと思える日が来ると思います。その共感の心を大切にし、治療に専念して行きたいと思います。
 5月18日に初公判の裁判があり、裁判所に行って参りました。父親が情状証人として法廷に立ってくれたのですが、何度も何度も裏切り続けてしまったこんな私に対し必死になってくれている父親の姿を目の前で見て、自然と涙が出て来てしまいました。私は今回で4回目の裁判となります。今までは必ず世の為、人の為に生きて行きますとか、人の思いを忘れずに今回で最後にし、2度と犯罪を犯さないと言って来ました。しかし今回の裁判では本当の気持ちを伝えました。私は、今度刑務所を出た後本当に社会復帰出来るのか、この依存症の病気を本当に克服できるのか、また言葉だけで終わってしまい、また同じ過ちをしてしまうのではないかと不安と怖さがあります。今は正直本当に不安です。その事を裁判官に伝えました。しかし今回の逮捕により、自分が性嗜好障害という依存症の病気の可能性が高い事に気づきました。もしこの事に気づかなかったら、私は刑務所を出た後まちがいなく同じ過ちを繰り返してしまうと思います。今は不安がありますが、この大石クリニックの治療に賭けて行く事を誓いました。
 そして、もし大石クリニックで治療を受けても、それでも又同じ過ちを犯してしまったら、私にはこの先社会復帰は絶対にないとの思いを伝えました。治療には2~3年かかると聞きましたが、何年かかっても今度こそ、父親の為にも、亡くなった母親の為にも、裏切ってしまった全ての人達の為に、被害者の方の為に、そして力を貸して下さった弁護士さんの為に、必ずこの性嗜好障害という依存症の病気に勝ちたいと思います。
 私は初めて刑務所に行った時、仮釈放により出所させて頂きました。その仮釈放期間中に性犯罪治療のプログラムを受講しました。性犯罪の事件を犯した人達が5~6人集まってグループセッションを行い再犯防止率を高めて行く教育でした。しかし私はあの時、プログラムを受講する事に対しこのプログラムを受講しないと仮釈放が取り消されてしまうから、面倒だけど仕方がないと本当にいい加減な気持ちで性犯罪のプログラムを受講してしまいました。いい加減な気持ちでプログラムを受講してしまったあの時の気持ちや考えを絶対に持たず、一生懸命に取り組んで参りますので、これからもよろしくお願い致します。最後になりますが、検察官の求刑は1年でした。判決の言い渡しは6月8日です。
 また手紙を書かせて頂きますので、その時はよろしくお願い致します。お身体をご自愛下さい。では失礼致します。
                      草々
             平成23年5月21日 D
                 

Date: 2011/06/01/22:42:01 No.656

Re:収監者との文通

Dさんへの返書

D 様
前略
 こんにちは、大石クリニック相談員の鈴木です。
 昨日お父様から電話を頂き、文通の公開の御了承を頂けたとの由、有難うございます。早速、初回からの往復文通を大石クリニックHP内の掲示板:『あおいくまの部屋』に、『Dさん』との匿名にて掲載して公開させて頂きました。公開画面をコピーして同封致しますので御覧になってみて下さい。御自分で書かれた文面でも、公開されているとの前提で読んでみると、自分をより客観的に見つめる事が出来、それによって治療・社会復帰への動機がより強く深まるのではないでしょうか。
 さて、5月21日付のお手紙ありがとうございます。ご返事が遅れて申し訳ございませんでした。お手紙を拝読し、性嗜好障害(性依存症)の治療と社会復帰への決意を述べられた文面に感動し、嬉しく思いました。
 お手紙の中で、『今度刑務所を出た後、本当に社会復帰出来るのか、この依存症の病気を本当に克服できるのか、また言葉だけで終わってしまい、また同じ過ちをしてしまうのではないかと不安と怖さがあります。今は正直本当に不安です。その事を裁判官に伝えました』と書かれておりますが、これはDさんが本当に自分の病気を自覚され、治療、克服への決意をされたからこその思いだと思います。病気を克服しなければ今後の人生は無いとの思いが不安や恐れの思いに繋がっているのだと思います。そして、そうであればあるほど、治療への動機も強く深いものとなるのだと思います。時を同じくして、Dさんと同じ病気による同じ犯罪で拘留中の方からの手紙が届きました。その方も、『大石を知らず、病気に気がつかなかったら出所後やはり同じ犯罪を繰り返すだろう』と述べ、治療への決意を語り、Dさんとそっくり同じ思いを文面で述べられています。こういう同じ病気に苦しみ、治療によってそこから抜け出そうと決意している仲間がいます。又、既に回復の道を日々歩んでいる仲間、回復して社旗復帰を遂げている仲間、そんな仲間が大石には沢山おります。そんな仲間達との心の触れ合い、絆の中でDさんが今心に抱いている不安や怖さは自然に解消して行く事でしょう。ただ、判決次第では当面は大石でのミーテイングに参加できませんので、この文通の比重が高くなると思いますので、可能な限りで同病の仲間の声も手紙でお伝えして行きたいと思います。
 又、お手紙の中で、『今度こそ、父親の為にも、亡くなった母親の為にも、裏切ってしまった全ての人達の為に、被害者の方の為に、そして力を貸して下さった弁護士さんの為に、必ずこの性嗜好障害という依存症の病気に勝ちたいと思います』と書かれております。犯罪によって多種多様な迷惑をかけた全ての人々の思いを我が思いとし、償いの道を歩もうとの思いは治療・社会復帰への強い動機となり、エネルギーとなる事でしょう。同時に前回の手紙にも書いたD-Aさん、D-CさんもD-Bさんによる被害者です。つまり、病気によって自分も多大な迷惑を受け、苦しんでいます。だから治療によって自分の苦しみから脱出する事は誰よりも先ず自分自身の喜びに繋がり、だからこそ治療への最も強い動機になることでしょう。自分を大事にし、自分を病気や犯罪から解放されるよう心から願って止みません。
 色々と書き連ね、分かり難い面がありましたら御免なさい。分かり難い所は次のお手紙でどうぞご遠慮なく御指摘下さい。他のスタッフの力も借りながらご返事を差し上げたいと思います。
 最後になりましたが、6月8日にどんな判決が出ようとも、冷静に受け止め希望を持って一日一日を歩まれるよう、そしてお身体に気をつけて過ごされるようお願いして、今日はこの辺で失礼します。
                草々
      平成23年6月3日
       大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2011/06/02/12:32:45 No.657