収監者との文通 Aさんからの手紙

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収監者との文通

Aさんからの手紙

大石クリニックHPトップページ参照

前略
 鈴木さん、お手紙届きました。ありがとうございます。
「認知の癖」を修正するのは分かっているようでとても難しいのですね。それは昔の自分も手紙の内容と同じ様な事を思った事があるからです。「バカラに行けば勝てる」と思っても「いやいや負ける時もあるぞ」と思い、次に「負けても、お金を全部使わずに残しておこう」と考えバカラに行くのです。その際「負けてお金が無くなったらまた窃盗をしてしまうぞ」という思いと、それとは別に「窃盗をすればいいや」という思いもあったと思います。こんな考えが正常ではないのは分かっていますが、当時はそんな風に思っていたのです。まぁ、何も考えずにバカラに行ったのが殆どですが、たまには上記の様な事を思ったのですが、当時は正常ではないと思ってもバカラを止められなかったのです。ですが、「認知の癖」を修正しないことには先に進めず、いつまでも今と同じ生活になってしまいますので、毎日繰り返し読み、頭の中に植え付けようと思います。
 さて、今日はワークブックのP14のセッション2からP25までよんだので、それについて書きたいと思うのですが、やはり私はセルフモニタリングというものが苦手な様です。先ずは、P14の「スケジュール」を立てるですが、今の私は刑務所に居るので、これについては現在できる事は無さそうです。ですがスケジュールが大切なのは理解したので出所が近くなり次第、外での生活スケジュールを考えたいと思います。
 次にP16の引き金ですが、これもいま一つ思い浮かびません。一体何が引き金だったのか・・・?思い浮かんだののとしては「時間は夕方から夜」、「状況は、お金が欲しい」、「感情は退屈、楽しみたい」といった程度です。我ながら情けないと思うのですが、時間の夕方から夜というのは、私がよく通っていたバカラの店が15時からオープンと、18時からオープンだったのでこの時間帯になるといつもソワソワしていました。24時間やっている店も多かったので午前中に行ったりもしていましたが、毎日行くという意味でこの時間帯は「早く行きたい」と思っていました。
 退屈ですが、これも当時はバカラが最高に楽しいと思っていて、バカラ以外はつまらないと思っていたのでこう表現しました。
 P18のセルフモニタリングですが、これも刑務所に居るのでできそうもない所ですが、その日に思った事で引き金の強さも書いていければと思います。 
 今でもバカラのことは思い出しますし、テレビで渋谷、六本木、横浜(伊勢佐木町)が映るとバカラに行きたいななんて思ったりはしています。なので、これからそう思ったら書いていこうと思います。 
 P21の引き金の一覧表ですが、これが難問です((笑)引き金が出て来ないんですよ・・・。今で言えば、テレビに渋谷が映ったからバカラに行きたいと思うので引き金は渋谷と言えますが、当時は渋谷に棲んでいたので別に渋谷が引き金だはなかったと思うし、やはり店がオープンする時間、夕方から夜が引き金だと思うのです。それで「夕方から夜」の強度は「5」です。これしか思い浮かばないのでP23の昨日分析の票に記入していくと
 引き金:夕方~夜  思考・感情:楽しみたい  行動:バカラに行く 望ましい結果:楽しめ、お金も増えた
 望ましくない結果:お金が無くなり、窃盗し、刑務所となります。
 自分自身の引き金をもっと見つけ出したいのですが、本当に難しいです。今日はここまで進みました。また次の矯正指導日にやりたいと思います。
 ここはおもったより暑いです。全国的に熱中症の被害が相次いでいるようです。健康にzy通分留意しお身体をご自愛下さい。では失礼します。
                       平成25年7月12日(金) A

追伸
 先日、報奨金が一冊本を変えるくらいになったので読売新聞に載っていた「アンガーコントロール」を買いました。詳しい内容は分からず、星和出版は依存症の本など出版しているなと思い購入しまさいた。で、本が届いたのですが、私が思っていた「アンガーコントロール」ではなく、こちらは怒りで暴力的になってしまう為の本でした。ちょっと残念ですが1300円ほどしたので、読んで考えてみたいと思います。
 お腹を凹ます運動ですが、凹ますのをドローイングと呼ぶようで、凹まし続けるだけでも効果はあるみたいです。例えば電車で駅と駅の間は凹ますとか、駅から目的地まで歩きながら凹ますなどです。歩きながらの方が効果は大きいです。ぜひ実践してみて下さい。体の台車もアップして健康にも良いですよ。

Date: 2013/07/26/12:35:18 No.954

収監者との文通

Aさんへの返書

A様
前略
  
 暑中お見舞い申し上げます。

猛暑と蒸し暑さが交互に来て、どちらにせよ毎日暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか、私も「これ以上は暑くならない、やがて秋が来る!!」と自分に言い聞かせて、何とか、かんとか過ごしています。
 
 さて、7月12日付のお手紙、19日に届きました。有り難うございます。今回は4名様のツアーでの到着でした(笑) 
 お手紙で、自分にとってバカラの引き金が何だったのかあまり思い浮かばないとのことですが、今の時点ではお手紙に書かれているだけで良いと思います。出所後の外の世界での色々な誘惑との闘いの中で今は思いつかない引き金が見えて来ると思います。例えば、出所後のある日、無性にバカラに行きたくなったとします。その時に何故バカラに行きたいのか?と自問自答してみると、仕事でミスしてイライラしている自分がそこからの逃げ場としてバカラを求めているのだと気づくかも知れません。そのイライラ感とバカラに行こうと思えば行けるという状況が病気に火をつけてバカラへの依存欲求が燃え上がるのだと気づくでしょう。その時、イライラ感とバカラに行ける状況が引き金だと気づくでしょう。今は塀の中で誘惑が無いのでバカラ欲求もあまり感じず、引き金についても今いちピンと来ないのだと思います。それは仕方がない事なので、引き金についてあまり深入りせずワークブックを先に進めれば良いと思います。スケジュールやセルフモニタリングなどについても今の生活環境の中で理解できる範囲で理解して先に進めれば良いと思います。
 このワークブックは「認知行動療法」という治療理論に基づいて編集されているのですが、読んで字の通り、「認知」の修正によって「行動」が変わり、変わった行動によって認知の修正に確信をもてそれが又行動に繋がるという治療理論です。ですから日々の行動が既に定められている刑務所という生活環境下ではこの療法に限界があるのは止むを得ないと言うべきでしょう。従って今は、出所後の日常生活の中での治療によって必ず効果を手に出来るだろうとの確信を持てれば良いと思います。
 その確信に近ずく為に、今の段階で可能な範囲で考えてみましょう。例えば、先ずは「バカラは楽しい」という認知を「バカラをやるとたった一度の人生の大半をバカラと窃盗による刑務所暮らしで終わらせることになる」という認知に修正します。次に、バカラの引き金の一つは、「バカラの店が開く夕方~夜の時間帯」なので、従来はバカラに行っていたその時間帯をGAに参加する時間に変えます。実際にGAに行ってみればわかると思いますが、GA会場ではバカラ欲求は「俺の出る幕ではない」(笑)と言って小さくなってくれています。そこはバカラが出来る場所ではないからです。それは今のAさんの立場でもよく理解できる事だと思います。今のAさんは刑務所の中にいるのでバカラをやりたくても出来ない生活をしており、それ故にそれほど強いバカラ欲求は出ないと思いますが、GA会場もバカラを出来ない場所なのでやはりバカラ欲求も起きないわけです。何事につけ、それが不可能な場所では誘惑や欲求はおきないものです。
 以上は、認知行動療法の一例ですが、ワークブックを手に刑務所内でもできる色々なシュミレーションをしてみるとこの療法の効果をイメージできるのではないかと思います。

 以上ですが、まだしばらく真夏の暑さが続きますので熱中症や夏バテなどに気をつけてお過ごし下さい。次のお便りを楽しみにお待ちしております。

草々
平成25年7月26日
大石クリニック相談員 鈴木達也

追伸:①
 お腹を凹ます運動についての色々なアドバイスをありがとうございます。なるほどこれなら、いつでも気軽に出来ますね。そうですか、電車の駅間で凹まし続けるわけですね。私は東急東横線で通勤しているので、これからは、なるべく駅間の長い急行か特急に乗ろうかな・・・???(笑)なんて思ったりしています。
追伸:②
「ケイコとマナブ」の件も了解しました。8月23~25日頃にコンビニの雑誌コーナーをのぞけば良いわけですね。

Date: 2013/07/26/12:52:01 No.955