収監者との文通 Cさんからの手紙

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収監者との文通

Cさんからの手紙
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及び 当掲示板No.555~Cさんとの文通 参照

大石クリニック相談員 鈴木達也様
前略
 平成24年11月14日付のお手紙21日に届きまして、嬉しく拝読させて頂きました。
 さて、今月も・今月もと思いながら書き続けた毎月の定期便もこの12月で今年は最後になります。「初め良ければ、終わり良し」と今年の初め1月から12月まで、欠かすことなく文通できましたかね???・・・
 先月の私の手紙で書いた「大脳基底核」の無意識思考がそれほど依存症受刑者やミーテイングの場で役に立ったとは驚きです。それから、ある文通参加者の話で 「ただ、聞くだけ・話すだけのミーテイングで依存症が治るのか」とありましたが、実は正直言うと、私も初めて大石通院した時に全く同じように思っていました。性犯罪とパチンコ依存が混じったミーテイングでしたからね ! しかし今は決してそうは思いません。ただ聞くだけ、話すだけのミーテイングの後には、自分自身で決めた事の行動性があると思います。それは、私の場合ですと、悪い方向へ流されない 為の「錨の綱」の「輪ゴムでパッチン」とか、母校での 「天文講話」 、天文・仏教の資格試験を受けるとかであり、それは自分で決めた行動で、色々と対策があります。最後まで諦めず実行することと、それに通院の二面性が必要だと思います。
ですから依存症受刑者の方も諦めず実行して、自分で決意した行動と通院を続け、長い目で見て、再犯防止の心を常に持ち前進することだと思います。もちろん私自身もです。この「長い目で見て」というのが、AA標語の「今日一日」だと思いますね !

≪問答への答え≫
 さて、それでは鈴木さんからの問いに答えます。
[問い] : 「被害者、その家族、自分の家族は事件に対してどんな思いをしたでしょうか?そして、今どんな思いをしているでしょうか?」に答えたいと思います。いよいよこの問題が来ました。そろそろ来る頃であろうかと感じていました。これは被害者の方におかけした迷惑と、我が家の者にかけた迷惑のことですね !
[私の答え]:私がこの刑務所に来て、性犯罪防止対策の教育を少し受けて、トラブルが起こり、懲罰になって教育が中止になってしまったことは既に話したと思います。その後、別の工場で作業をして今日に至っていますが、実はこの工場での毎日は雑居房で生活します。この雑居房にヤクザが一人いました。この人は、私の何が嫌いだったのか分かりませんが、私一人だけが集中的にいじめられました。この「いじめの内容」はあまりにも酷いものでした。なぐられ、足でけられ、水を無理やりに飲まされ、大量の水のため意識が「もうろう」として倒れては医務室に連れられて行ったのでした。このヤクザももう出所して、その後私は独協房にかわりました。一人なので「いじめ」は当然ありません。今は幸福、ハッピー、平和であります。
 さて、本題の回答に入ります:被害者の人は、「私は、卑劣なあの人(C)に相当いじめられた」と思っているでしょう。又、被害者の家族の人達は、「3年の求刑が1年10ヶ月だなんて刑が軽すぎるなぁ」と思っているかも知れません。「求刑通りの判決でいいのだ ! あんな奴は !! 」と思われても仕方ありません。
 ここで、私がヤクザにいじめられた話を何故したかです。もしも仮に被害者の女性が、刑務所内でCがいじめられているのを知ったら、「ウフフフ・・いい気味だ !! 私もCにいじめられたから」と思うでしょう。私もヤクザにいじめられて怖い思いをしましたが、被害者の女性はもっともっと怖い思いをしただろうと考えさせられたのです。精神的苦痛を与えた私は重罪です。当然、被害者の家族は私にまだまだ訴えかけたい言葉や何かがあるだろうと思います。
 それから我が家の家族は本当にあきれはてていますが、犯罪を止められるのであれば早く止めてもらいたいと思っていると思います。父親が生きているうちには絶対止めたいと考えています。今回私がヤクザに「いじめ」られたのは、私がか弱い被害者の女性をいじめた事へのお鉢が回って来たのだと考えています。なのでこの「いじめ」に私は歯を食いしばって我慢し、刑務所の職員に「いじめ」の事を言わずに堪えて来ました。こんな思いをしたのも一つの経験かも知れません。以上で回答を終わります。
 少々話が長くなったので仏教話は省ききます。

≪天文講話≫
 今回は、「銀河系と銀河系外」 と題してお話します。私達が夜空を見上げて、星が集まって川のように見える 「天の川」 は、我々の銀河系内の星々で、約2千億個以上の星々だと言われています。前回、地球から一番近い星で地球から4,3光年と書きましたが、これも銀河系内の星です。それが2千億個以上となると、一体この銀河系の大きさは?と思われるでしょう。銀河系は、中心の膨らんだ部分が 「バルジ」 と呼ばれ5万光年あり、円盤部の端から端までが 「ハロー」 と呼ばれています。これが10万光年あると言われています。想像を絶する思いですね ! そして、この宇宙の中で、一番近いすぐ隣の銀河系外の銀河が「アンドロメダ銀河」と言われています。距離は3200光年あります。これが最も近いのですね !
そして、更に驚きは、銀河系同士の衝突がこの宇宙で起きているのです。天文年鑑の332ページの「メシエ天体一覧表」を見て下さい。左側のM番号の31番がアンドロメダ銀河です。この銀河の一つがもの凄く広大であるのに、宇宙には銀河が無数(確認されているものだけでも1万個以上、その他にも何万個とあるだろうといわれています)あるそうです。また、遠い将来には、このアンドロメダ銀河と我々の銀河が衝突すると言われています。 これで今月の天文話を終りにします。
鈴木さんのお手紙には、「天文年鑑の2013年版が出るころではないか?と思うのですが、私の分も含めて2冊購入しておきましょうか?」と書かれています。本当はお願いしたかったのですが、前回も差し入れてもらい、今回もとお願いしづらかったのです。厚かましいかなと思ったのです。ですが鈴木さんがそうして下さるなら、是非お願いしたいです。甘えてもよろしいでしょうか?ごめんなさい。
 来年の天文話は 「星座の由来」 と題してお話します。

 それから、次回の文通は新年の年明けのお手紙となりますが、お年賀のハガキは出しませんので悪しからずご了解願います。それでは、今年最後の手紙もこの辺で失礼させて頂きます。
 本格的な真冬の寒さとなりますが、どうぞ風邪をひかないに、お気をつけください。それでは、良いお年をお迎え下さい。
                       草々
            平成24年12月3日   C
↓返書 

Date: 2012/12/10/19:30:37 No.841

Re:収監者との文通

Cさんへの返書
C様
前略
12月3日付のお手紙、7日に届きました。1年の文通を皆勤で続けての納めの定期便を頂き、格別の思いで読ませて頂きました。
「出所まで毎月1回の文通を続ける」との自分との約束を守り続けるというのは本当に素晴らしい事だと思います。特に懲罰を受けた時に文通をどうしようか?との動揺も生じたようですが、それを乗り越え文通を継続された事で継続への力を得たように思います。その力は、再犯を犯さない為に必要な事の一つ一つを実行し、継続できる力に通じるもので、今後の人生を明るく照らすことでしょう。
 お手紙の中で、「ただ聞くだけ、話すだけのミーテイングの後には、自分自身で決めた事の行動性があると思います」と書かれていますが、その思いは、この間の文通の継続という行動性から生まれ確信だと思います。思えば、戸部警察留置場の中での自分とのミーテイングで、この月・1回の文通を決意したのがスタートでしたね。それが文通の継続という行動性に繋がったんですよね。この思いを忘れずに、出所後は仲間とのミーテイングを大切にして依存症治療を続けて頂けるよう期待しています。
 
 ≪問答の答えも読ませて頂きました≫
 [問い]は、「被害者、その家族、自分の家族は事件に対してどんな思いをしたでしょうか?そして、今どんな思いをしているでしょうか?」でした。この問いに対して、「待ってました !! 」との感さえするお答えを頂き、私もすごく心強い思いがしました。Cさん自身が既に自覚して、問われる前に答えを考えていたんですね。雑居房でヤクザに苛められ、その事で被害者の苦しみを思い、再犯防止に向けて自分を戒めていたわけですね。前回にも書きましたが、この問いへの答えは必然的に被害者や迷惑・心配をかけた周囲の人々の人格を尊重することにつながります。そして、相手を思う気持ちを習慣化する事が再犯防止の大きな力になりますので、今後もこの答えへの思考を大事にして頂ければと思います。
 さて、それでは12月の[問い]ですが、「つぐないとは?」 にします。被害者や迷惑・心配をかけた家族にどう償いをしたら良いのでしょうか?」 というのが今年最後の [問い] です。 私が所属している断酒会には「断酒の誓い」という断酒継続の為のスローガンがあります。全部で6項目あり、その5番目に 「私たちは、家族はもとより迷惑をかけた人たちに償いをします」と書かれています。「償い」という行動を継続することで自分の病気を忘れず、又、上記にも書いた他人の人格を尊重し続ける事が可能となります。家族への償いの例として言えば、アル中の場合、例えば、毎朝、家族の目の前で抗酒剤を服用するというのがあります。 家族はそれを見て、この人は今日一日飲まないでいられると思い安心できるわけで、それが過去において飲酒で散々心配をかけてきた家族への 「目に見える」 償いになるわけですね。
それでは、Cさんの場合、「あんな奴は求刑通りの3年の実刑で良かったのだ」と思っているかも知れない被害者への償い、犯罪はもういいかげんに止めて欲しいと思っている家族への償いとはどんな償いなのでしょうか? 頭に浮かぶ範囲で良いので考えてみましょう。
 お手紙の中で、「父親が生きているうちには犯罪は絶対止めたいと考えています」と書かれていますが、これも家族への大事な償いだと思います。ただ、いつまでに犯罪を止めると言っても曖昧な面があると思います。「犯罪を止める」というのは目に見えない事だからです。よく、課題や目標、償い方を考える場合には、「死人にはできない」事を考えようと言われます。「犯罪を犯さない」という課題は一番大事な課題に違いないのですが、課題としては目に見えにくく、死人にもできる事です。それに対して、犯罪を犯さないように何かを実行するという課題は死人にはできない課題です。死人には出来ない目に見える課題や償いを実行した結果として、犯罪を犯さないという目に見えない課題が達成できるのだと思います。この辺も頭に置きながら今回の答えを考えて頂ければと思います。

 ≪天文講話を読んで≫
 今回もまた、無限大と言っても良い、想像を絶するような宇宙の広大さに圧倒される思いがしました。「全宇宙>地球>日本>個人」という不等式を考えると、一人の人間の極限的な微小さを思わざるを得ません。しかし、人間の脳は極大な宇宙の果てまで思いを馳せる事ができます。そして、宇宙の謎に掛けられていたヴェールを1枚、1枚と剥がして行く事ができます。その何兆という細胞で構成されている人間の脳を思うとき、そこに小宇宙と言って過言ではない人間の脳が持つ偉大さを感じる事ができます。私もそんな人間の末端に位置しながらも、今、Cさんと文通しながら天文学・宇宙を学ばせてもらっている自分を思うと、飲み続けてアル中のまま死ななくて良かったなとつくづく実感しています。
 その人間の脳が作り出した一つの集大成としての「天文年鑑・2013」を購入しましたので送ります。もちろん、私の分も一冊購入しましたので今後とも御指南の程よろしくお願いします。巻頭には、今年5月21日の金冠日食や、6月6日の金星の日面通過の記事が鮮明な写真付きで掲載されているので、出所前に華麗な天体ショーの一端を見ることができますね。出所後にはインターネットで、太陽が見事な金冠日食に至るまでの経過や、金星の日面通過をリアルタイムの動画で見られますので次の楽しみにしておいて下さい。

 それでは、今年最後の私からの手紙もこの辺で終わらせて頂きます。真冬の寒さが続いておりますので、お身体をご自愛の上、どうぞ良いお年をお迎えください。
   草々
          平成24年12月11日
  大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/12/10/20:10:12 No.842