Cさんからの手紙~②

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Cさんからの手紙~②

 次に、天文学のことですが、誰でも初めて学ぼうとすると難しい感じがするものです。私も最初はそうでした。望遠鏡を購入して宇宙のの事を知りたくて、それなりに、あれこれと本を読み、私なりに苦労し、自宅には天文・仏教の本が山積となっています。それでも分からない事は沢山あります。学者も宇宙を100%知っているわけではありませんから、未だ知らない事だらけなのです。
 なので、難しく取らずに次のような事が言われています。天文学は字の読み方を変えて「てんもんがく」から「てんぶんがく」と読みます。天文の事が色々と書かれた神話の文章(ギリシャ神話)を学ぶというものです。それから、天文学の字を変えて「天文学」から「天文樂」として、天文の文章、文字を楽しもうというものです。堅苦しく学ばず、楽しく・おもしろく・ユニークに学ぼうと言われています。
 ですから、沢山本を読むと良いのですが、初めて学ぶ時に自分に分からない事が何の本を購入して読めば知る事ができるか?が分からない時は、科学館に行って聞くと良いと思います。鈴木さんは大學出の頭の良さそうな方なので、早く博識・博士になれますよ。
先月の話の14,3等星は、口径200mmの望遠鏡の時で、等級は数字が大きくなるに従い星は暗くなります。そして、肉眼で見える等級は6等星までと言われていますが、数字が小さくなるほど星は明るいのです。1等星と6等星でどのくらい明るさが違うかと言うと、6等星~1等星までの5間隔で2.5倍ずつ明るくなるので、約100倍明るくなると言われています。1等星の方が約100倍明るいのです。
 ちなみに、恒星の中で肉眼で見える一番明るい星は、おお犬座の1等星(シリウス)で、この星が一番明るい星と言われています。シリウスはギリシャ語で、「やきこがすもの」という意味だそうです。
次に、惑星の話で終わりにしたいと思います。惑星の「惑」の字には、「まよわす」との意味があります。従って惑星は、まよわす星なのです。どのようにまよわすのか、実は「巡行」と「留」(りゅう)と「逆行」という動き方をしています。これは天文年鑑の18頁を参照して貰えれば分かるかと思います。17頁の真中の太字の所から読んで、18頁の図・3を見ると分かります。このように、動きが逆になったり、「留」という動きが止まる日がある。実際には止まっていないのですが、そのように見えるので、動きをまよわすから惑星と言うのです。そして、この惑星は今年は「みずがめ座」で見えても、来年は「みずがめ座」には存在せず、同じ惑星が次の星座の中で見え、毎年変わっていくのです。
さらに、順行・逆行は、165頁の準惑星の 図・1を見てみると分かり易いかも知れません。3→4の動きと、5→6の動きの方向が違うのが分かりますよね。この数字は月数です。3月から4月、5月から6月と10月まで書かれています。その右に冥王星の現象があり、その月日が書かれていまして、その図が18頁の 図・2であります。17頁にも文章があります。
 鈴木さんは、14,3等星となると肉眼の限界を遥かに越えた、肉眼では絶対に見えない顕微鏡的な?星なのだろう?と思ったと書かれていましたが、よくうずまき銀河を見る為に大き目の望遠鏡を購入した初心者が見えないと言って星が嫌いになることがるのですが、銀河は見方があって、倍率を上げて見るのはあまり向かないのです。低倍率で目をそらし気味で見るのです。そして、光が弱いので写真にして初めてフイルムに写るので、眼視ではぼんやりと雲のようにしか見えません。その点、惑星の方が迫力があると思います。
 好きな事の話が長くてごめんなさい。来月の手紙も楽しみにしますので、今回はこれで終わります。                            草々
              平成24年4月3日 C
↓返書 

Date: 2012/04/23/19:36:05 No.742

Re:収監者との文通

Cさんへの返書

C 様
前略
 4月3日付のお手紙を頂いてからもう2週間も過ぎてしまいました。いつもながら返事が遅れてしまい申し訳ありません。断酒会の機関誌もやっと発行にこぎ着け少し余裕ができて、気になっていた返事を書き始めました。
 
 Cさんも、「自分史」書きで忙しそうですね。「自分史」の中には、Cさんの信仰も含まれているわけですが、信仰を持っている方というのは依存症になっても治療に繋がり易いのかなと、最近そんな思いがしています。なぜかと言えば、Cさんも含めての、大石と文通している収監者の方の殆どが何らかの信仰を持っているからです。信仰と依存症・犯罪の間の矛盾に気づき易いのかも知れないと、何かそんな感じがしています。
 私は無宗教なのですが、それでも17年前に「アルコール依存症」と診断され、それを認めざるを得ない現実に直面した時、自分がアル中である事と私が元来持っていた生き方の信念との矛盾を深く痛感せざるを得なくなり、それも依存症治療への動機の一つになったように思います。
 Cさんも以前のお手紙で、仏教徒たる自分と、何度も同じ罪を犯してしまう自分の矛盾について書かれていましたが、その矛盾が依存症治療への動機に繋がっているのでしょう。その治療動機が、性犯教育を受身ではなく、自分の為に受けようとの姿勢につながっているのだと思います。この姿勢を忘れずに教育を最後まで継続し、修了して欲しいと思います。
 お手紙で、「生と死」という本に「人間の記憶は大脳の前頭葉と側頭葉に記録されている」と書かれています。そして、前頭葉と側頭葉に記録された自分の犯罪記録は消せるのか?と書かれていますが、依存症者の依存行動によって脳に刻み込まれた快楽記録(記憶)は生涯消えることがありません。そして、その記憶が依存行動を継続させます。依存症者が、懲りても、懲りても、何回懲りても同じ過ちを繰り返してしまう秘密がここにあると言っても良いでしょう。だからこそ、今日の様な治療法が確立される以前までは、「○○中毒は一生精神病院に閉じ込めておくしか方法がない!!」と言われていました。一旦は反省しても又直ぐ同じ過ちを繰り返す依存症者はそれこそ六道輪廻の典型・見本と見られていたのでしょうね。でも、それは依存症治療現場で言う限りは、もう30年ぐらい昔の話です。今日では、ミーテイングの効果が確認され、又、新しいカウンセリング法も開発されて、依存症者の予後も大きく開かれており、多くの患者さんが回復して新しい人生を歩んでいます。

 惑星の話ですが、今まで知らなかった話を興味深く読ませてもらいました。惑星と言えば、「太陽の回りを周回する水・金・地・火・木・土・天・海・冥」という小学校で習った程度の知識しかなかった私にとって、惑星が「巡行」・「留」・「逆行」と時によって動きの方向を変えるというのは初めて知りました。その動きの変化によって人を惑わすから「惑星」というのだとの話も初耳で、Cさんとの文通で私も色々と学ばせて貰えそうだなと思いました。とは言え、アル中底つき後の還暦を過ぎた脳ミソなので、学びの速度は牛か亀の歩みになると思いますが、「ゆっくりで良い、前に進めば」の思いなので、今後とも宜しくお願いします。
 アッ、そうそう5月21日の金環日食の件、忘れていませんのでご安心下さい。時間は、午前7時半とのことなので見逃さないようにしたいと思います。その時間は大石への通勤時間帯で、いつもだと電車に乗っている時間なのですが、当日は7時20分頃にはタイムカードを打って(早出出勤にはならないけれど・笑)落ち着いてダイヤモンドリングを鑑賞したいと思っています。ご注意頂いたメガネも忘れずに用意したいと思います。あとは新聞のスクラップと、ネット画面の保存もしておくつもりですので楽しみにしていて下さい。

 桜前線はもうずうっと北上し、大通り公園の桜は葉桜となっています。季節の進行の中での自然の変転は本当に律儀なもので、例年と同じように巡り進んでいます。冬の次には必ず春が来る自然の摂理を見る時、ある環境の下での人の運命も必ず変化するとの思いを深めています。問題は、運命の変化の前提となる生活環境にあると思います。Cさんは今、受刑生活の中で再犯防止教育を受けるという環境下で生活しています。これは明るい希望に満ちた将来に道を拓く環境だと思います。その事に確信を持って一日一日を一歩一歩、歩み続けられるよう期待して、今日はこの辺で失礼します。
                                                草々
         平成24年4月24日
          大石クリニック相談員 鈴木達也

Date: 2012/04/23/20:17:13 No.744