Kさんからの手紙
Kさんからの手紙
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及び 当掲示板No.555 以降Kさんとの文通参照
前略
スマホの事、ありがとうございます。
ですよね ! パカパカがなくなる訳ないですよね・・・(鈴木・注 パカパカ=従来の二つ折り携帯電話)デジタル人間が増殖しているのは分かりますが、まだまだアナログはいっぱい居ますよね・・・居ると言うよりも日本人の2/3はアナログだと俺は思います。
さて、先生 ! 丸々1ヶ月も取り調べに居ましたよ ! 本当に参りましたよ。TVも無く、話す相手もなく・・・1ヶ月ですよ。何で俺はこんな所に居るのかと考えましたよ。まあ、アクシデントだから仕方なかったけど・・・
でも先生 ! 悪い事ばかりでもなかったですよ ! まず運動です。3坪ほどの広さの所でするんだけど・・・それが外なんですよ。長靴にジャンバーを着て・・
ここに来て、外に出るなんて普通はまず無い事なので得したような気分です。気分じゃなく得しました。あとラジオですね。リアルタイムのニュースは聴けるし、他に情報的なものまで聴けて良かったです。何より良かったのは、一人で静かに居られた事ですかね~ まあ、気分転換には最高に良かったです・・・
でもって、罰にもならず、新しい工場に移りました。
工場が変わって良かったですよ、先生 ! 前の工場が悪いわけではないですが、今の工場の方が色々と良いですね。どこに行っても知っている人は居るんですけど・・・今の仕事は立ち仕事で後遺症の腰痛で参ってますけど、俺的には良い仕事です。先生、コイル巻きって知ってますか? コイル巻きをやっているんですけど・・・今のコイルは車に通じるものがあると俺的には思っています。なので出るまでここで頑張ります。
食べる事しか頭に無い俺としては、ご飯の食べ方にもMy BooMなるものものが有りましてね ! 好き嫌いの多い俺としては中々Goodな頂き方だと思っている・・その食べ方ですけど、おかずやその他全てをご飯の茶碗の中に全部入れてMiXするんです。まぜまぜ、先生の頭には残飯が浮かんで来たと思いますが・・・中途半端に混ぜると見るからに残飯ですけど、グリグリに混ぜると混ぜご飯のようになります。何事も半端はダメですね ! グリグリにMixする事で嫌いな物まで食べられます。何より良いのは工場が変わってA食になった事です。簡単に:::ABCと有り、Aが一番多くて、次にBCとなります。前はB食だったので今の方が良いですね・・・大好きなパンも大きいし、替わって良かったな~って感じです。これで主食だけじゃなく、おかずやあんこも多ければ何も言う事はないんですけどね ! 多いのはご飯とパンだけですけど、一応満足です。
あっ、そうだ本題の薬の話ですけど、忘れていました。今、新しい房に入ったんですけど・・・薬のの人もいるけど薬の話なんてしません。なので忘れてました、
先生、もしかしたら、このまま薬の話なんてしないで居ると忘れちゃって、ただの手紙になるかも!? それが良いのか悪いのか?は分かりませんが、今はこんな感じです。前の工場とは違い、休み時間などに薬の話なんて誰もしないですね。今の工場は! 良い工場ですよね。薬の事なんてこのまま忘れてしまうかも・・・本当! 忘れてしまいたいな!!
先生! 酒をやめる薬と言うか? 酒が美味しくなくなる薬ってありますよね。!?? 知り合いが持ってましたよ。ユンケルくらいの物。それを飲んで酒を飲むと、まずくて酒なんか飲めないとか!? 俺も1本もらったんだけど、試していないから何とも言えないけど・・・
でも普通に考えたらおかしな話ですよね。別々に飲んだら飲んでる時だけじゃないの?味を感じるのは? って事は薬だって飲んでる時は味を感じるけど、ノドを過ぎたら味なんて・・・ 先生が言っている酒をやめる薬ってユンケルみたいな飲み薬とは違うんですよね・・
もし、その薬が効くなら、同じようにシャブをやめられる薬も作って欲しいですねと言いたいところですけど・・・俺にとっては今さらってところですかね・・・もう、そんなの必要ないと言うか、必要ないと思います・・多分・・絶対・・そうなりたいです。気にするようじゃーまだまだですよね。
・・・略・・・
占いで、○○代後半から私の運気が変わる。この頃から何もかも実になり上手く行くって言われたのを思い出しました。(良い事は信じるバカな俺) これって、もしかして先生と出会い、薬をやめて、ビジネスや他の事も上手く行くって事なんですかね。でも、どっちにしても薬をやめたら生活が変わるのは間違いないですよね。 薬が無いのが絶対条件ですよね!!!! まあ、俺は都合の良い考え方の人間なので良いように解釈します。 都合のいい奴なんです。
てっ事は、あとは長生きするように、健康に気をつけるだけってことか~
でも最近、年齢をか感じるんですよね! 色々な場面で・・中だからと言えばそれで終わってしまうんですけど、体力的に落ちているようにも思います。
・・・フウー・・・
先生、ここで本を買う時、題名と出版社が分からないと買えないんですけど・・・先生!ここでどう調べても分からないので教えて欲しい本があるんですけど良いですか? それはですね、「バレーボール」の本なんですけど・・「月刊バレーボールってのはあるんですけど、他の本が出て来ないんですよ。男子バレーボールには興味ないんですけど・・・素人の俺が見ても男子は弱すぎる。まだまだ世界レベルじゃないですね! その点、女子は面白いです・・・
TVで見てると面白いですよね。隣の2国は日本が相手だと目の色を変えて来るのがわかりますよね。彼らは何でも自分の国が上だと言いたいように見えるけど、そういうスタイルを出す時点で No Good ですよね ! 2~3〇年前の日本と同じですね。中には優れている分野もありますけどね !
話がそれてしまいましたけど、今バレーボールに興味があって本を探しています。先生 ! 第名と出版社をいくつか教えて欲しいんですけど、良いですか・・
お願いします。
この手紙は毎日少しずつ書きました・・・毎度毎度の事なんですけど、ところどころ変な話になっていると思いますが、あまり気にしないで読んで下さい。
・・・・残すところ270日です。
晴天で遠くの山が見える土曜日 記
草々
↓返書
Date: 2012/06/10/15:34:55 No.762
Re:収監者との文通
Kさんへの返書
K様
前略
「晴天で遠くの山が見える土曜日」のお手紙、6月7日に頂きました。
しばらくお便りが無かったので、どうしたのかな?と思っていたのですが、そうでしたか ! 一ヶ月の取調べお疲れさまでした。
それにしても、TVも無く、話し相手も居ない生活のストレス下に置かれてもポジテイブな思いで乗り切ってしまうKさんに何か才能のようなものを感じました。出所後も薬への誘惑につながるストレスを前向きな想いで乗り切り薬を断ち続けてもらえれば良いなと想いました。
工場と房が変わり、薬の話から解放され、薬を忘れていられるようになったとの由。そして、「それが良いのか?悪いのか?」と自問されていますが、本当に生涯にわたって薬を忘れ切れるなら、「良い」と思います。仮に前の房・工場に戻っても、そして出所後も薬を忘れ切れるならです。要は、生活環境が変わりシャブの誘惑が存在する場所に身を置いた時に、シャブの購入ルートが「ローソン」に見えてこないか?を今からイメージして、その時に備えた方が安全で無難だと思います。それはKさんの意志やガマンの頑張りとは別次元の依存症という病気によるものなので、決してKさんがだらしない人間だという意味ではありませんので、くれぐれも誤解の無いようにお願いします。
よくある例ですが、3ヶ月間入院治療をして酒を断ったアルコール依存症者が「もう大丈夫! 俺は意志が強くなった! 酒を止められる、止め切って見せる!!」と言って退院したのは良いのですが、退院しての帰路の自動販売機でキューッ!っと一杯やってしまい、そのままハシゴ酒に走り、家に辿り着いた時にはグデングデンの泥酔状態になっていたという話は自助グループなどでよく耳にします。入院中の、飲むに飲めない環境下では、さしものアル中飲酒欲求も眠り込まざるを得ないんですね。それが、退院して病院のタガが外れた瞬間に目を覚まし、上記のような話が現実となるわけです。入院中に病気は死んだわけではなく、眠っていただけなんですね。睡眠はちょっと大きな音がしただけで直ぐに覚めますよね。退院がその「ちょっと大きな音」の役割を果たして、飲酒欲求の眠りを醒ましてしまう訳です。
Kさんの「薬をこのまま忘れ切ってしまいたい!!」との思いに水を差すような話をしてしまって、ごめんなさい。でも、薬物も含めた依存症という病気にはそういう冷たい現実があるという事はよく頭に入れておく必要があると思って、あえてお話しました。
それなら、「酒が美味しくなくなる薬」のシャブ版を作って欲しいとの思いも当然だと思います。まずは「酒が美味しくなくなる薬」の話ですが、多分、抗酒剤のことだと思います。この薬は大石でも毎日患者さんに投与されていますが、シアナマイド(水薬)とノックビン(粉薬)の2種類があります。実は、この薬「酒が美味しくなくなる」どころの薬ではなく、服用後に酒を飲むと七転八倒の苦しみに襲われる劇薬なんです。この薬を飲んで酒を飲むと、体内で酒の毒素が分解(無毒化)されず、その結果、心臓はドッキン、ドッキン、ドキ・ドキ・ドキ・・・ 頭はガン、ガン、ガ・ガ・ガ~・・・ 手足は硬直して、救急車騒ぎとなり、稀には命を落とす事さえあるんです。患者はその恐怖感から酒を飲めなくなる訳です。昨日まで一升、二升酒を飲んでいたアル中さんの酒がこの薬でピタリと止まってしまいます。特に、抗酒剤を飲んだあと酒を飲み死ぬような苦しみを味わった後の断酒効果は絶大です(もちろん、それをやってみろとは言いませんけどね)
もう一つ、抗酒剤とは薬理が全く異なる薬で、アカンプロセートという薬があります。欧米諸国では以前から認可され治療に使われていますが、日本では、この3月末に製薬会社「日本新薬」が厚生省に製造・販売の認可を申請し、早ければ来年の夏にも薬剤市場に出るかと言われている薬です。こちらは、抗酒剤とは全く異なる薬で、脳内で飲酒欲求を呼び起こす物質を抑制する事で、酒への欲求そのものを緩和する薬です。こちらは服用後に酒を飲んでも無害です。精神治療との併用が肝要と言われています。
・・・それなら、シャブを止める薬も作って欲しいとの事ですが、こちらも世界的に色々と研究はされているようですが、まだ研究途上といった段階のようです。また情報が入ったらお知らせします。ということで、当面は、やはり専門家によるカウンセリングや教育、断薬の為に集う同病者とのミーテイング等の精神治療の主流を占めると思います。
話は変わって、40代後半の占いが当たれば良いですね。この占い、信じましょう。何事も信じるところから始まります。薬を止める治療を続ければ必ず止められると信じるのと、どうせ逆立ちしたって止められっこないと思うのとでは、どちらが断薬につながるか?、答えは明白だと思います。依存症治療は回復を信じるところから始まります。自助グループが効果的なのは、そこで回復している仲間を実際に目にすることで、自分も薬を止めて回復できると信じる事が出来るからなんですね。
次に、「バレーボール」の本について; 色々と調べてみたのですが、雑誌類ではやはり「月刊・バレーボール」しか発行されていないようです。他に単行本を探したら、社会評論社発行の「バレーボールワールド」と言うのが見つかったので資料を同封します。
混ぜご飯の話、面白かったです。大石の職場にも食べ物の好き嫌いの激しい人がいるので教えてあげようと思います。
色々と書き連ねましたが、今日はこの辺で終わりにします。またのお手紙を楽しみにしています。 横浜は昨日から梅雨に入りました。
草々
平成24年6月11日
大石クリニック相談員 鈴木達也
Date: 2012/06/10/15:58:08 No.763
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